【ぼくらのアメ村エトセトラ vol.3】 いざ、あの不夜城へ。『LOCK STOCK』ヤスさんと巡る「三ツ寺会館」人物図鑑。


テーマとかコンセプトとかめっちゃ聞かれるんですけど、私その質問好きじゃないんですよ。例えばみなさんが画家で展覧会をして、説明したいですか、したくないですか?

ヤスさんの案内で向かった先は、2階にある『昭和ときめきサロン桃色宇宙』。妖しいピンクのドアを開くのはなかなか勇気がいりますが、中には店主・じゅんこさんがくり広げる、もっとすごい世界が広がってました!

じゅんこさんは、ここでお店されてどれぐらいなんですか?

じゅんこ:うちは今年13年目かな?

けっこう長くされてるんですね!

じゅんこ:いつの間にか人気ビルで。よかった早い時期に入ってて。

お店を始めたきっかけを伺ってもいいですか?

じゅんこ:きっかけは、大阪に来て、彼氏いないってなって、私もう一生ひとりで生きていかなあかんってなって、それで。

森下:めっちゃ大事なとこだいぶ端折りましたね(笑)

じゅんこ:まあいろいろあって。

ご出身は大阪ではなくて?

じゅんこ:大阪じゃないんです、某中部地方の、とある地方都市です。

大阪に来られたのはどんな理由で?

じゅんこ:田舎がめっちゃ嫌やったんです、地元が合わなくて。ずっと都会に出たくて、東京5年ぐらいいて、なんかちゃうなってなって、いったん地元に帰って、第二の都会に行こうと思って大阪に。ってオフィシャルではこう言ってるけど、ちょっとおもしろく言うときは、私ジャニーズの木村くんが好きなんですよ。だから木村くんに会えるかなと思って東京行ったけど会えんかったから、関ジャニの渋谷すばるくんに会えるかなと思って大阪来たって言ってます。これは半分冗談、半分本気です。

じゃあ別にお店を始めようとかそういうことでは全然なくて。

じゅんこ:大阪来て、誰も知り合いおらんってなって、その時に仲良くなった女の子とこのビルの前歩いとって「あ、私このビル絶対好き」って言ったんですよ。そしたらその子が、地下のバーに行ったことあるって言うから飲みに行って、ハマって、毎日遊びに来て、そこからです。それが15年前。

最初はお客さんだったんですね。

じゅんこ:今日私、神経抜くのに麻酔して顔半分麻痺してるんです。いいカメラで撮ってもらうのに悔しい!今日は50%です。

あ、歯医者さんに。麻酔がまだ効いてるんですか?

じゅんこ:効きまくってます。前に歯医者行った日に、お客さんからのどぐろのお刺身もらったんですよ。わー美味しそう!って食べてたら、のどぐろってこんなコリコリするんやって思って鏡見たら、唇かんでた。

森下:麻酔効いてるとき危ないですよね

じゅんこ:それが教訓やから、今日は私はものは食べない。……という人です。

なるほど(笑)。話は戻りますが、このビルの地下のお店に通われていて、「上、空いてるよ」みたいな感じで?

じゅんこ:いや、そうじゃなくて、大阪って三ツ寺と味園ビルってあるじゃないですか。どっちも好きでよく行ってて、お店したいなって思いながらお金ためつつ、どっちのビルでも空き物件を探してたんですよ。で、たまたまここが空くってなって。このビルでやるなら絶対2階の路面!って思ってたんですけど、まあ一応路面やしと思って、タイミングよくここへ。

ヤス:そうなんや、初めて聞いた

じゅんこ:そっか。でも話さないもんね、お互いの店の歴史とかね。

もし味園が空いてたら、そちらに出店されてた?

じゅんこ:かもしれないですね。でもヤスくんもそうやと思うけど、こういう仕事してるからか、持ってるというか、引きが強いんですよ。ちゃんと導かれてるような気はします。合う場所、合う人に、巡り合うみたいな。

タイミングみたいなものがあるんですね。お店の名前はどうやって決めたんですか?

じゅんこ:聞いたことのない名前にしたくて、自分で考えたんですけど、四字熟語みたいなのがいいなと思って。漢字4つでいろいろ考えて、桃色って女の子好きだし、あとちょっと妖しい意味もあるし、そういう二面性いいなと思って。あと宇宙は男の子好きだし。外人さん来たとき、うちピンクユニバースって説明するんです。ユニバースのほうが空間とかスペースが大きいイメージ。

森下:装飾とかすごく独創的ですが、女性の美とか、何かテーマはあるんですか?

 

じゅんこ:テーマとかコンセプトとかめっちゃ聞かれるんですけど、いやな感じに受け取らないでほしいんですけど、私その質問好きじゃないんですよ。例えばみなさんが画家で展覧会をします。その場にいて説明したいですか、したくないですか?

森下:僕は広告の人間なので、したいほうですかね。

じゅんこ:ですね。お仕事的にそうですもんね。

森下:でも、じゅんこさんのおっしゃることもわかります。

じゅんこ:わかってもらえます?私は説明したくないんです。勝手に思ってください、それがあなたの正解ですって。私は自分の好きなことをやっていて、わかってほしいわけじゃないんです。わかってもらえたらうれしいけど。私は常に動いてたいし変化してたいので、決めつけられるのが嫌なんです。もし一回うちのコンセプトこれですって言っちゃったら、もう終わっちゃうじゃないですか。そこにもっと物語がつながって続いていくはずなのに、つまんないですよ。

ヤス:すごいな、じゅんちゃんアーティストやな。

森下:ほんまにそうですね。問いを投げかけて、あなたのなかの解釈が答えであるっていう発想、それはもうアートだなと思いました。

私、「酒場ミラクル」って提唱してるんですけど。でも酒場で好きなものとかやりたいことを口にすると、誰かがつないでくれて、かなうんですよ。

この内装はすべてご自身で?

じゅんこ:そうです、ノーゲストの時とかにちまちまと。今はちょっと増やしてる感じですけど、でもあのCDとかもすぐ外すし、よく変えますね。急になんか思い立って、ぎゃぎゃってやっちゃいます。

もう完全にインスタレーションですよね。小さい頃からアートはお好きだったんですか?

じゅんこ:作ることが好きなので。私、自分の仕事を聞かれたら、バーテンとか言わないんです。店はやってるけど、私は人の縁をつなぐことが仕事だと思ってるので。私、一人で生きていかなってなったときに、やりたいこと好きなこと、ぜんぶ箇条書きしたんですよ。私は毎日好きなヘアメイクでいたいし好きなかっこしたいし好きな音楽聞きたいし作りたいし絵も描きたいしライブもやりたいってぜんぶ書いたら、このカタチになったんです。

たまたま、こうなったっていう。

じゅんこ:わかりやすくバーって言ってますけど、そうじゃなくて。人のご縁をつなぐ仕事をしてるなかで、イベントだったり内装こんなふうにしたりおめかししたりっていう。

森下:この場所はじゅんこさんにとって、例えるならどんな場所なんですか?

じゅんこ:自分の脳内ですかね。

ヤス:かっこいいな!俺そんなんぜんぜん出てこんかった。

じゅんこ:使って使って!

すごい、しっくりきましたねその答え。

じゅんこ:ある意味、お店してる人みんなそうだと思うけど、歩く広告塔みたいなもんやから。ヤスくんもヤスくんがロックストックやし、私も私が桃色宇宙と思ってるから。

昔は遊郭や赤線だった歴史のあるビルだけに、「必ず場所にお礼を言ってから帰る」というじゅんこさん。

お店全体、表現されているものすべてが、まるごとじゅんこさん。

じゅんこ:はい、だからまだまだなんです。うちはサグラダファミリアみたいなもんで、終わりはない。あと、お客さんがいらしたら、そのお客さまとみんなでこの空間をつくる。

ああ、舞台みたいな。その日の演者によって物語が変わる。

じゅんこ:そう、それが面白いから、毎日飽きずにできるっていう。こんなおもろい仕事はないと思う。ほんとにね、酒場に来ると、なんでもない人がなにかになれるんですよ。

なにかになれる?

じゅんこ:私、初めて来たお客さんでバーとか慣れてない子に、こういうとこに来たら絶対好きなこと、やりたいことは言いなさいって言うんです。そしたら絶対誰かがつなげてくれるし、導いてくれるから。言い続けてたら、いつの間にか何者かになってるから。それを楽しみに、いろんなお店に行きなさいって。

なるほど。

じゅんこ:だから私、酒場いこうぜ運動をひとりでしてて。「酒場ミラクル」っていうのを提唱してるんですよ

ヤス:酒場ミラクル、たしかにあるね。

じゅんこ:簡単な話で言うと、噂したら来るとか。こんな仕事したいって言ってる子が来てるときに、その業界のすごい人が東京からたまたま来るとか。そういうミラクルがいっぱいあるんです。

じゅんこさん的なミラクルもあったんですか?

じゅんこ:もう本書けるぐらいあります。私たまにバンドもしてるんですけど、BOØWYがめっちゃ好きなんですよ。その話をしてたら、お客さんがいろんなところで言ってくれて、そしたらBOØWYのドラムの高橋まことさんのイベントに声かけてもらって。まこっちゃんドラムで私が氷室さんを歌ったことがあったんですよ!しかも、まこっちゃんうちの店にも来てくれて。

ええ、すごい!それはもう、発信し続けたからこそかなったミラクルですね。

じゅんこ:私一人じゃぜったいかなわないけど、皆さんが言ってくれたから。だから、みんなも酒場に行くといいことあるよ!っていうのを言ってるんです。

ヤス:キムタクには会われへんかったけどな。

じゅんこ:いや、まだわからんよ。言い続けてたら、いつか会えるかもしれへん。

 

森下:でもヤスくんとこでも話してたけど、やっぱり立場が違う人とカウンターに並んで飲むって大事ですよね

じゅんこ:そうそう、若い子にも言うんですよ、年齢も職業も関係なく同じ目線で喋れる場って、酒場ぐらいなんですよ。こんなおもろいところ、なんでみんな来ないのかなって。

ヤス:仕事なにしてるかとか、知らんもんな。それが居心地いいし。やっぱり酒場はいいよね。

じゅんこ:そう、酒場っていうのがよくて。

じゅんこさんのところは、どんなお客さんが多いんですか?

じゅんこ:若い方が多いです。会員制にしていて、基本は紹介で。

紹介制にされているのはなぜ?

じゅんこ:自分のバランスがあるんです、それを自分で決めたい。あと、このビルはいろんな方が来られるから、私小さいし戦えないし、最初から困る人は入れないんです。あと泥酔してる人。喋りたいから、会話が成り立たないと嫌なんです。

ヤス:まあでも女の子でやってたらそのほうがいいよね。

じゅんこ:あと東京の人とか、北海道の人とか、遠方の人がうちの店で再会するみたいなことも、よくありますね。

じゅんこさんのところも、大阪以外のお客さまがいらっしゃるんですね。

じゅんこ:もう世界から来ますよ。海外のサイトにも載せてもらってます。だから、2025年の万博も狙ってるんです。そのために、英語もがんばろうと思って。

じゅんこさんからご覧になって、大阪という街はどうですか?

じゅんこ:最高です!

東京より、地元より?

じゅんこ:断然です!世界レベルでダントツだと思います大阪。人がいい。特に、このビルに集う方。なんだろう、このビルが特別なのかもしれない。

森下:じゅんこさん的には、このお店なのかビルなのか街全体でもいいんですけど、この先こうなっていったらいいなっていうイメージはありますか?

じゅんこ:具体的にっていうのはないけど、酒場を知らない人たちに来てほしいかな。コロナもあって、大学生の子とかが本当に外にも出れなくて、自分の部屋で勉強だけしてるっていう状況も聞いてるから、若い人に外に出る楽しみを知ってもらうために、なにができるかっていうのは考えてる最中。

ヤスさんと共通している部分でもありますね。

じゅんこ:あとは、自分がもう一人ほしい。そしたらここでお店もできるし、旅に出て刺激も受けられるし。全部自分でやりたいので、いろんなテクノロジーが発達したら、私をもう1人作ってほしいです。


昭和ときめきサロン桃色宇宙

キラキラに埋め尽くされた店内は、まさに心ときめく空間(素敵すぎるトイレも必見!)。「年齢とともに暗くなっていく」というほの暗さも、不思議な安心感があります。カウンターに座ったら、その日そこで出会った人との一期一会を楽しんで!

住所:大阪市中央区西心斎橋2-9-5 日宝三ツ寺会館 2階
Twitter:@momoiroutyu

ISOKOって名前知ってるん、ヤスくんぐらいやで。まだみんなBLOWやと思って来てるもん。「BLOW最高!」言うて盛り上がってる。
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