独立から3年かけてたどり着いた、深さと広さのあわい。メジャーレーベルと手を組み、再び“恋させる”べく動き出したyonigeの姿。
100人のうち1人が「なんで私の気持ちが分かるんだろう?」と思うような詞を書きたい。

作品を広く届けるフェーズに移った、という実感を伴いながら活動されているのが伝わってきました。その上で聞きたいのですが、曲を書くときは、リスナーの顔やキャラクターを想像しながら作っていますか?
牛丸:多少はあるかもしれないですけど……最近思ったのは、特に歌詞を書いてるときはジャーナリングをしてる感覚に近いんじゃないかな、って。心の中にあるものを書き出したくて歌詞にしている、みたいなところがあるかなと。それを、純粋にひとりのリスナーだった頃の自分に届けたい、みたいな想いがあるような気がしてて。
過去の自分にもう一度届け直す、といった感覚でしょうか。
牛丸:そのようなものが、最近あるんじゃないかって……仮説ですが。
ごっきん:面白い。そんな仮説できてたんや?
その「自分」というのは、何歳のときの自分、というイメージはありますか?
牛丸:中学生のときですね。家庭でもいろいろあって、音楽だけが救いだった頃。その時の自分に聞かせたい、みたいな感覚があります。

対象が見えてきたことで、制作時のテーマもより個人にフォーカスしていった、という感覚はありますか?
牛丸:個人に近づいていっていますね。100人いたとして、100人に届けようとは全然思ってなくて。「1人にしか刺さらないかも」という歌詞を書きたい。みんなに平均的に伝わることを狙ったものよりも、大衆には伝わらなくても、誰か1人に「なんで私の気持ちが分かるんだろう?」って思われる歌詞の方が私は好きだし、結果的に遠くまで、かつ深く届くと思っています。かといって、1曲の中の全てを難解にしなくてもよくて……歌詞の一部分に「それは共感できなくない?」って思うような違和感を差し込むのが好きなんです。例えば「アボカドを投げる」とか。7割はみんなが分かること、残り3割は誰も分からない、くらいがちょうどいいのかなって。そのギミックの部分は、初期から変わってないです。
アーティストのキャリアという観点では、大きな変化を迎えられたと思うのですが、言葉の端々からは自然体というか、リラックスして俯瞰しているようなメンタリティを感じます。
牛丸:人に対しても、未来に対しても、いい意味で“手放す”ことを覚えたのが大きいかもしれません。若い頃は、諦めることや期待しないことが、悪いことだと思ってたんです。でも歳を重ねるにつれて、それっていいことかも? と気づいて。自分がコントロールできないところに対して「変わってほしい」と期待するのって傲慢だし、かえって自分をがんじがらめにしちゃうんですよね。何か事件が起こっても、それに身を委ねてみるのが楽しくなってきました。

ごっきんさんは、牛丸さんが作った歌詞を最初に読む立場だと思います。その距離で見ていて「変わったかな」と感じるタイミングはありましたか?
ごっきん:そうですね。初期の作品は、完全に牛丸の日記だったんですよ。恋愛の話だと「あぁ、あの男のことだな」って分かりやすかった(笑)。そこからだんだん、余白が生まれてきたっていうか、都度変化はありますね。
逆に牛丸さんから見て、ごっきんさんの変化を感じるタイミングはありましたか?
牛丸:独立を経てから、かなり変わりました。ごっきんが自分の意思を持って動いてくれるようになったのは、yonigeにとってかなり大事な変化で。それまでは、私が全責任を背負ってる感じがしてたんですけど、独立してからは、ごっきんがやるべきことを、進んでやるようになった。頼もしくなりました。

ご自身では、その自覚はありますか?
ごっきん:めっちゃありますね。昔、偉い人に「ボーカル以外は決定権を持つ必要はない。牛丸が全部決めるべきだ」みたいなことを言われて。私も、それじゃあって、ちょっと放り投げてるところがあったんです。例えば、ツアーのタイトルとかも「結局牛丸が決めるでしょ」みたいな感じで。でもどこかのタイミングで牛丸から「もっと出して」と言われてハッとしました。自分の頭を使って、自分の意思をどんどん介入させていいと分かったし「でも、その取捨選択は任せてもいいんだな」とか、ちょっとずつ気づいていった感じです。
牛丸:その変化があって、やりやすくなりました。私、タスクが多いとすごく能力が落ちちゃうタイプで、何も考えられなくなるんですよ。任せられるところは素直に任せちゃう、っていうのができるようになって、すごく楽になりました。
ごっきん:牛丸はできないことが多いし、逆に私が苦手なことは、牛丸に才能があったりする。そこはお互いカバーできてるから、バランスがいいんじゃないかな。2人でよかったなと思うし、この関係だから、だんだんyonigeとして仕上がってきたのかなと感じています。
補う関係が出来上がってきて、より充実してきたんですね。それでは、お互いに尊敬しているところを教えてください。
ごっきん:13年もやってると、いろんなボーカルを見てきました。でも、牛丸ほど“This is ボーカル”な人はいないんじゃないかな、と思います。いい意味でも悪い意味でも、周りに気を使わないというか。できないことはできないと割り切って、自分がやりたいことのために必要な人を、どんどん巻き込んでいく力がある。それができる人って実はあんまりいないんです。「フロントマンをしてくれて、ありがとうございます」って感じです。
牛丸:逆にごっきんは、私にはできない立ち回りをめちゃくちゃやってくれる。私は興味がある人にはグッといけるんですけど……ごっきんは、周りのみんなを笑顔にする力があると思っています。
ごっきん:着ぐるみなんです(笑)。でもそれはマジで、本当に意識してやってきたから。

場を和ませる役割を、自覚しながら取り組んできたと。
ごっきん:2人でバンドをやる上で「私のアイデンティティは何だろう?」とずっと考えながら活動してきたんですけど、あるとき「牛丸ができなくて自分にできるのは、対人関係を“うまくやる”ことじゃないかな」って気づいて……突き詰めていったら、思ったより自分の性に合ってたんです。無理してやったわけじゃなくて、元々の素質の延長線上でやってるから、「あっ、全然着ぐるみ着れたわ」みたいな感覚です。
奇跡的なバランスだと思います。タイプが全く違うお2人が、10年以上一緒に活動されているのは、やはりその相性の良さが奏功しているのでしょうか?
牛丸:そうですね。お互いの得意分野と苦手なことが、ちゃんと噛み合ってる感じがします。全く違うからこそ、真逆だからこそ。
ごっきん:あと、うちが牛丸を好きすぎる(笑)。でも、同級生で同じクラスにいたら喋ってないんじゃないかな。絶対同じグループではない。オフで付き合う友達の感じも全然違うし。

yonige
大阪寝屋川出身。2013年結成。牛丸ありさ(Vo&Gt)、ごっきん(Ba&Cho)の2人からなるロックバンド。ソリッドなバンドサウンドとポップなメロディ、恋愛や人生観をリアリティのある言葉でつづった歌詞が10〜20代を中心に共感を呼び、2015年8月リリースの「アボカド」のMVが話題を集め、2017年にメジャーデビュー。2019年8月13日の日本武道館ワンマン公演はソールドアウトで成功を果たす。2024年1月に3rdアルバム『Empire』をリリースし、全国ツアーを開催。2025年3月15日には、バンド初となる日比谷野外音楽堂でのワンマン公演『yonige"I'm Back"』を開催。
同年5月29日からはバンド初の試みとなる47都道府県ツアー『yonige〜Homing tour〜』で全国を巡り、2026年春にはソニー・ミュージックレーベルズにて再メジャー契約。併せて4月クールのTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』OP主題歌が新曲「芽吹くとき」に決定した。
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