“独立”のニュースは大阪の酒場をザワつかせた。『めしやマエケン』の前田健太さんが新天地の中津で目指す、アートでストリートなカルチャー酒場とは。


僕にとっては商売の根本になる方で、大阪に引っ張ってくれた恩人。今も大好きやし。あの商魂たくましい感じは、ほんと見習わなあかんなって思う存在です。

先ほどチラっとお話にも出てきたんですが、マエケンさんっていろんなアーティストとの繋がりが強いなって思ってて。それはどうしてなんでしょうか?

飲食をする前にアパレルをずっとやってて、その時にできた繋がりが今もあるんですよ。

飲食一筋だと思ってました!アパレル出身だったんですね。

20歳超えたぐらいから南船場の『Mirriam』っていうお店で働いてて、最終的にバイヤーまでやってました。当時はヨーロッパの古着と並行でマルジェラを入れてたりして、めっちゃ尖ったセレクトで、超カッコ良いお店でした。そのときの僕の上司に、海外のファッション雑誌やらアート、音楽なんかをたくさん教えてもらって。クラブにもめっちゃ遊びに行ってて、そこでいろんな世界に触れました。

そこから飲食の世界に飛び込んだきっかけは?

ちょっと長くなるんですけどいいですか?トランジットっていうアパレルのパーティーのケータリングや施設プロデュースなど、いろんな場づくりをやっている東京の会社があるんですけど、たまに大阪でもケータイリングの仕事があるときにお手伝いしてたんです。当時からご飯を食べるのは好きやったし、夜もめっちゃ遊びに行ってたんで、「大阪行くんやったら、とりあえずマエケンに連絡しとけば大丈夫」みたいな感じで、すごい気に入ってもらえて。

大阪のナビゲーターみたいな。それはリアルに街で遊んでたからできることですよね。

そんなことをしてたら、トランジットが人手不足になったときに声をかけてもらったんです。もう、二つ返事で「すぐ東京行きます!」って。そこから3年くらいはケータリングの部署で働いてました。

そこから飲食の世界に飛び込んだワケですね。

当時はケータリングって、店舗で仕事が出来すぎて言うこと聞かん人が行く場所みたいな感じだったので、めっちゃゴリゴリでした(笑)。初めてでわからんこと質問したら「過去の資料見て調べろや!」みたいな。同期もいたけど、半年持たずに辞めてしまって。倉庫で一人泣いたりしたこともありましたが、やるしかないなって。

具体的にはどんな仕事をしていたんですか?

ファッションの展示会とか、リリースパーティーに出す料理の準備がメイン。一年で100回くらいケータリングしてたと思います。

100回も!そこで料理のイロハを身につけたんですね。

いや、キッチンは別の部署なので料理は全く。僕はケータリングの見せ方や世界観を演出する仕事でした。最初は何をしたらええかわからんかったんですけど、アパレル時代にショーウインドウを作ったりしてたので、何件か案件をこなしたら得意分野ってことに気がついたんです。

アパレルの経験が生きたんですね。料理をするようになったのはいつからですか?

ケータリングを3年やってから、飲食店の立ち上げの部署に異動して、大阪の『たまちゃん(※1)』が東京進出するのを担当することになって。そこで初めてお店に立つようになったんです。

※1 数多くの飲食店を手がける「たまちゃん」こと玉井哲雄さんが、2008年に堀江でスタートした『お好み たまちゃん』。現在は東京の店舗は渋谷スクランブルスクエアに展開。

ようやく料理の世界に!

楽しかったんですけど、飲食店で働くなら自分でお店やった方がいいなあって気持ちが出てきたり、ケータリングの方が土日も休みで、出張もあるから良かったなあ、なんて思ってて(笑)。それが勤務態度に出てたんでしょうね。「お前、態度悪いけどちゃんと仕事してんのか?」って注意されて。僕も若くてイキってたので、そのまま辞めちゃったんです。

辞めたその先は決まってたんですか?

特に何も決まってなかったんですけど、東京なんで仕事はなんぼでもあるって思ってて。そこからは聞こえをよくすればフリーで、いろんなケータリングのサポートと店舗の立ち上げを手伝ったりしてました。でも、自分のちゃんとした居場所があるわけでもなかったので、その時期は「最近はどこで何してるの?」とか聞かれるのがめっちゃ嫌でしたね。

刺激的な毎日ではあるけど、地に足が付いてないというか。

そんな感じで過ごしてたら玉井さんが、「大阪の店舗の周年があるから手伝いに来い」って連絡をくれたんです。ベロベロで疲れてらっしゃるのに、周年が終わったあとに「お前、東京でフラフラしてるだけだったら、大阪のウチの店舗でイチからちゃんとやれ」って声をかけてくれて。

もう一度飲食店で働くきっかけをもらったんですね。

僕からしたらトランジットで入っていた『たまちゃん』を辞めてたので、大丈夫か心配やったんですけど、玉井さんが「俺も中村社長(トランジットの社長)もお前のこと好きやから大丈夫」って声かけてくれたんです。それで、東京の仕事全部終わらせて、大阪に戻ってきました。

その時でおいくつくらいですか?

34歳くらいかな。そこからは堀江の『たまちゃん』でイチから料理を勉強しながら、しっかり3年間働きました。だから、今の鉄板料理に繋がってるんです。でも、コロナの時期にお店の方針やらで玉井さんと揉めちゃって辞めることになって……。コロナがなかったら、ちゃんとたまちゃんを卒業して独立してたと思うんですけどね。

“たまちゃん仕込み”な鉄板捌きで豪快に焼かれる和牛テール鉄板焼き1080円。

その後に、『ぬんぽこ』で働きはじめて今に至ると。

『ぬんぽこ』では雇われだけど、税理士さんとのやりとりまでしてたので、独立の直前までしっかり準備できて、自分としてはめっちゃベストなタイミングで独立できたのかなって思ってます。僕は飲食の世界へ入ったのもめっちゃ遅いし、有名店で修業していた訳でもないから、「『ぬんぽこ』はノリだけでやってる店」とか言われたりして、結構コンプレックスはあったんです。でも、実際来てくれてるお客さんとかはめっちゃ多かったし。

アパレル時代からいろんな店を食べ歩いてたって言ってましたし、もともと飲食の素養もあったんでしょうね。ちなみに、玉井さんと現在の関係性は?

僕を大阪に引っ張ってきてくれた恩人やし、『たまちゃん』のときのお客さんはお店に遊びに来てくれたりするんですけど、玉井さんとはケンカしたっきりそのままで……。でも、いろんな人から、(玉井さんが)気にしてくれてるっていう話は聞きますね。僕にとっては商売の根本になる方なので、今も大好きやし。あの商魂たくましい感じは、ほんと見習わなあかんなって思う存在だから、また関係を戻せたらなって……。

飲食店っていう枠から外れて、いろんな面白い人が集まるカルチャースポットになれたら嬉しいですね。
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Profile

前田 健太

愛称はマエケン。大衆酒場なメニューにハイブリッドなアレンジを加え、ワンオペとは思えないほど凝りに凝った料理を生み出す鉄板の魔術師。店長を勤めた天満の『ぬんぽこ』から独立し、今年3月中津に『めしやマエケン』をオープン。はやくも予約必至店として話題の店に。

SHOP DATA

めしやマエケン

住所: 大阪市北区中津1-9-18
営業: 16:00 or 17:00〜24:00
休み: 不定休(詳しくはインスタをCHECK)

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