飲食店で働く、を変える。二甲、横目、喫酒オルタナを仕掛けてきた前田貴紀さんが伝えたい、残したい、変化していくことの強さ。

新町に新しい飲食カルチャーを生み、3年という月日を経て華麗に幕を閉じた『二甲料理店』。立ち飲みスタイルを一気に何段もアップデートさせた『お料理 横目』、そしてプロデュースというカタチで“あの場所”に再び命を宿させた『喫酒オルタナ』。この名前、グルメ好き、お酒好きなら知ってるはずだと思います。仕掛けてるのは、長身・ロン毛・ヒゲ・メガネ・鼻ピというワイルドスタイルが際立つ、前田貴紀さん。どのお店も人気なのは周知の事実なんですが、そこにはどんな想いやストーリーがあるのか、新たな展開もあるそうで、お酒を投入せずにじっくりと聞いてきました。近い将来、飲食業のイメージもスタイルもあり方も、ここから変わっていくかもしれない話、めちゃ必読です。もし共感できた人は、前田さんのお店で食べる料理、飲むお酒、吸う空気の味、さらにおいしくなるんじゃないでしょうか。いや、きっとそうなる気がします。

飲食業って、クリエイティブ。誰でも扉を開けて入れるし、いろんな人にも出会える。だから、この道を選んだ。

お店を始める前のこともいろいろ聞かせてもらいたいんですが、そもそも飲食業に興味をもったのはいつ頃だったんですか?

僕の家庭環境も関係してるんですが、親や親戚もみんな自営業をしてて、幼い頃からその姿を見てたので、スーツを着て毎日同じ時間の電車に乗ってというのが想像できなかったんです。そんな価値観のまま福岡から出て、京都の大学に進学しました。経済学を専攻して会社やお店の成り立ち、川上から川下までどんな人たちがいてどんな動きがあるかなどを学ぶうちに、飲食業ってクリエイティブの面も含めて一番わかりやすく体現してるし、全部網羅してると思ったんです。自分たちのやりたいことをカタチにして、目の前でお客さんに味わってもらえ、その反応がダイレクトにある。それがおもしろいなと。しかも、これから先もなくならないであろう業種。だから、飲食業に興味をもってこの道を選びました。

幼い頃からの環境とビジネスとしての側面がリンクしたと。ちなみに学生時代の実体験で、何か影響してることはあります?

とりあえず、めちゃくちゃ酒飲んでました。ハイリキは僕の血となり肉となってますし、僕と言えばハイリキという印象があるくらい。河原町のOPAの裏に『たつみ』っていう大衆酒場があるんですが、いつもそこでベロベロになるまで飲んでから遊びに出かけてましたね。

学生時代から愛飲してたハイリキもちゃんとスタンバイ。

お客さん目線でしっかり勉強してたわけですね。

引き出しの多さは自分の強みになると思ってるので、いろんなことを見て、感じて、学んでました。大衆酒場はもちろんですが、高価なお店にも行くようにしてましたし。そこで流行ってるお店とそうでないお店を分析したり、めちゃおいしいのにお客さんがいないのはなぜかって考えたり。

酔っ払うだけじゃない(笑)

まぁ、ベロベロになってるんですけどね。ただ、大学的にも大手企業に就職するのがセオリーで、周りの友だちからは「大丈夫?」ってよく心配されてましたが、失敗することなんて最初から考えてもない。飲食店という誰でも扉を開けて入れる空間だからこそ、いろんな人に出会えると思ってたんですよ。

確かに、人との出会いはあふれてる業種ですもんね。大学を卒業後は?

飲食に関わるマーケティングやマネジメントの仕事をしてました。京都はやっぱり観光商売が軸なので、動くお金も大阪とかに比べるとまだまだ小さい。組織的にも動くお金的にももっと大きな商圏で仕事したいと思い、25歳の時に大阪に出てきてオペファク(株式会社オペレーションファクトリー)で働き始めたんです。いろんな業態が学べるのはもちろんですが、人の部分が決め手でしたね。人・モノ・金で言えば、モノ・金はどうにかなりますが、人の部分で頭打ちになってるとこって多いじゃないですか。特に飲食業界は人が、人が、と言い続けてる業界だし、どういう風に人を育てるのか、例えば働いてくれてる大学生に対して、数年間のアルバイト生活をどうすればこの子が楽しかったと思えるのかなど、ここなら人に対するいろんなことが学べるなと思って。

料理やお酒など、飲食店に行く目的はいろいろありますけど、やっぱり働く人や店主の存在って、大きい。人が目的になってるお店は、強いですもんね。ちなみに配属はどちらのお店だったんですか?

一番人が多くて、一番忙しい店舗に配属させてほしいと伝えてたので、茶屋町の『ファクトリーカフェ』でしたね。毎日が週末状態で、マジでクソ忙しかったです。でも、そこで知り合った直属の上司である泊さんとの出会いが大きかった。僕は感性で動くタイプだったんですが、泊さんはすごくロジカルな人。数字やマネジメントの面、物事の考え方など、たくさん学ばせてもらいましたね。

それも縁だし、やっぱり人なんですよね。

お店にはいろんな人がいたし、変なヤツもいっぱいいましたが、そういう人たちをちゃんとマネジメントできるようになれば勝ちやなと(笑)。変わらせてあげるためにはどうすればいいか、僕はそこに徹してましたし、「変われる人間が一番強い」って、言ってたんです。当然、自分自身に対しても同じくで。だから、自分も変われたと自負できますね。

例えば、前田さん自身の変わった部分とは?

感性だけじゃなくて、ロジカルにも考えて動けるようになったこと。まぁ、急に変わったわけじゃないですが、日々を積み重ねていくうちに「こんなことも考えられるようになったんや!」と気づけました。もちろん感性に任せた方がいい時はそのままですし、ロジカルに考えた方がいい時など、使い分けることができるようになったのは、今にも活かされてますね。

そういった変化がある中で、独立はいつ頃から考えてたんですか?

飲食業を志した時から、30歳くらいで独立したいとは思ってました。相方の東田とはかれこれ10年くらいの仲なんですが、当時からそんな話をしてたんです。「友だちと一緒に仕事すんな」って話はよくあるじゃないですか。でも、彼とならできると思ったのは、完全な料理人だから。お互いの領域で交わる部分が多くなれば衝突もあるかもしれないけど、そうじゃない。東田は料理人で、僕は全体を見るようなお互いにリスペクトできる関係性を構築できるので、いけるなと考えてたんです。オペファクもほんまは3年で辞めるつもりでしたが、会社での立ち位置的に任せてもらうことも増え、いろんなチャレンジができる環境にもなってましたしね。延長して学べることをしっかり吸収して、30歳の時に独立するために退職しました。

『二甲料理店』は僕と東田の発表会の場だったから、そんなに長く続けるのもアレかなと思って。3年を1つの区切りとして考えてたんです。
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Profile

前田 貴紀

1988年福岡県生まれ。株式会社等白 代表。2020年4月に新町に『二甲料理店』、2021年10月に『お料理 横目』をオープン。2023年6月に『二甲料理店』の幕を閉じて、初のプロデュース店舗となる『喫酒オルタナ』を手がける。趣味は何も考えずに映画を観ることと、増え続けているガラクタ集めで、古物商の免許を取ることも目論み中。好きなお酒は、学生時代から愛飲し続けているハイリキ。

https://www.touhakuinc.com/
 
お料理 横目:Instagram@oryori_yokome
喫酒オルタナ:Instagram@kissa_alterna
二甲立食店:Instagram@nikoh_risshokuten

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