ガマンできへんくらい銭湯が好き。365日皆勤の温浴施設愛好家、桶美さんに沸き続けてる銭湯愛と、温冷浴という奥深き世界。


日本の温冷浴は、『末広温泉』から始まるもの。ここが温冷道場と呼ばれてるのには、それだけの理由と歴史があるから絶対に残さないとあかん。

それではここからは、大阪が誇る温冷浴の名湯『末広温泉』の湯主・井上さんと看板娘のユイさん、常連のシンゴさんも交えて、温冷浴の魅力を存分に話していただきたいと思います!

『末広温泉』さんが推奨する西式温冷浴については桶美さんから少し伺いましたが、さらに詳しく聞かせていただければと。やはり、どういった部分がヤバいというか、他とは違うんでしょうか?

桶美:僕も全国各地でいろいろ探したけど、『末広温泉』くらいこだわってやってるところはないんとちゃうかな。そもそも地下水が必要やし。

ユイ:湯主が毎日入って確認してますし、改良も加えて今のスタイルになってるんですよ。そもそもの西式温冷浴は、もうちょっと湯がぬるめ。

井上:水風呂1回1分と熱い風呂1回1分を1セットにして、それを10回交互に繰り返すんですが、推奨してるのはまず4セットしてからカラダを洗い、そこから6セットして、最後は水風呂に浸かって上がる流れ。これは私が長年入り続けて辿り着いた西式温冷浴の入浴方法で、上がってからの爽快感を感じてもらえます。

シンゴ:銭湯にはいろんな効能を書いてますが、今までどれも信じてなかったんですよ。でも、ここのは違う。ほんまに爽快感があって、ビックリしましたから。それ以来、『末広温泉』にやられてしまってます。

『末広温泉』の湯主である井上さん。桶美さんいわく、温冷浴と銭湯を本気で愛してるほんまもんの人。

井上:多少の個人差はありますけど、水風呂に入ることで皮膚や臓器が収縮し、熱い風呂に入ると膨張する。その収縮と膨張の繰り返しが、言わば天然のマッサージなんです。それが爽快感につながると私は考えていて、今87歳ですが至って健康です。その昔、家に風呂のない時代は、カラダを洗うための場所という価値が銭湯にはありましたが、今は家に風呂があって当たり前。大阪でも最盛期は2600軒ほどあった銭湯も280軒ほどに減り、実際に営業しているのはさらにそれ以下になってます。だから、家の風呂と同じ温度でやっててもお客さんは来ないですし、健康になってもらうための場所として『末広温泉』では西式温冷浴を推奨しているんです。

桶美:ある意味、今もしっかりと営業してる銭湯はどこも精鋭部隊なんすよ。僕もいろんな銭湯の湯主と知り合いで、未来に向けてハッパかけることもあるけど、井上さんには言うたことない。本気で銭湯をやってはるから。しかも、ユイちゃんが入ってさらにパワーアップしてるし。

ユイ:『末広温泉』のヘビーユーザーで、以前は新大阪に住んでたんですよ。でも、今は近所に引っ越してきて、夫婦で『末広温泉』で働いてます(笑)

桶美:なんか銭湯愛の次元が違うやろ?シンゴちゃんもほぼ毎日来てるし。

シンゴ:僕は尼崎から通ってます(笑)

桶美:そんな強者ばっかりがいてるんよ。ユイちゃんが入ってからは、掃除のレベルも一段階上がってるしな。シャワーのノズルの部分やタイルの目地とか、サウナの木の部分もめちゃキレイになってるし。掃除する場所にも銭湯愛があるし、魂が細部に宿ってるんですよ。

ユイ:みんなに気持ちよくなってもらいたいですしね。

真ん中が『末広温泉』の看板娘であるユイさん、右側が常連のシンゴさん。いずれも相当な銭湯狂。

桶美:コロナ禍で何日か休業して再開した時、奥の水風呂に入ってマジで涙が出てきたもん。タイルもめちゃキレイになってて、「休んでてもサボってないやん!」って。ある意味、自分の風呂みたいな感覚やからすぐに気づいてしまうんよ。地下水を汲み上げるポンプも変えて掃除も徹底してるおかげで、水質も水圧も上がってるでしょ?

井上:途中で調整して止めないとあかんくらい出るようになってますわ。

水質まで分かっちゃうんですか?

桶美:ここに4〜5回入りに来たら、マジで分かるようになると思うで。塩素入った水道水の水風呂とは全然違うし。でも、塩素が入った水風呂は表面がキンキンに冷えてて、夏場には入りたくなる時もあるから、それはそれでええんよ。ちなみに『末広温泉』の水は、肌あたりが良くてゆっくりと冷える感じ。それが、天然の地下水の醍醐味ならでは。

ユイ:これはあくまで個人的な意見なんですけど、すごいアトピー持ちやったんです。でも、ここ来るようになって治ったから、温冷浴はもちろん、風呂の温度や水質とかも関係してるのかなって思ってます。

当事者の声はやっぱ説得力ありますね。先ほど桶美さんがいろんな人を連れて行ってると言ってましたが。

井上:大久保さんにはほんまに感謝してます。北海道から沖縄まで、全国に『末広温泉』の名前を広げてくれてて、その繋がりで各地からわざわざ来てくれるんです。でもね、銭湯はこの先もっと減ると私は思ってるんですが、大久保さんは絶対に否定しはります。「僕らがいるから大丈夫やで」って。

桶美:僕らみたいな気持ち良さを求めるお客さんを想像できてなかったんやと思う。マジで温冷浴した後は頭がスコーンって空っぽになる気持ち良さがあるし、僕の中では健康のためよりも、その瞬間を味わいたいだけ。これからも、いろんなヤツをどんどん温冷浴の気持ち良さにハメていったるわって。シンゴちゃんも、『末広温泉』無くなったら死んでまうんちゃう(笑)

シンゴ:ほんまに仕事も頑張れなくなるわ(笑)

井上:だから、私も妥協しません。水風呂と熱い風呂に10回入るということは、それだけ水と湯があふれるのでコストもかかりますが、温冷浴の価値を分かってもらいたくて続けてます。490円の料金で交互に10回入れたら家の風呂よりも値打ちがある、そう思ってリピーターになってもらえたらええですね。

桶美:銭湯は人も少ない方がゆっくり入れるからええけど、混んでないと続けられへんから。日々のコストはもちろん、修繕だって必要になるし。京都にある『ゆとなみ社』の湊君たちは自分らで修繕とかもやってるから、今後も期待してます。後は、政治的な側面で動いていくことも必要ちゃうかなと。

井上:大久保さんには足向けて寝れませんわ(笑)

桶美:何を言うてますの、僕らは銭湯が無くなったらマジで困る。それに大阪の温冷浴は、『末広温泉』から始まるもの。ここが温冷道場と呼ばれてるのには、それだけの理由と歴史があるから絶対に残さないとあかん。

井上:道場は心身ともに鍛える場所やから、そう言われてるのはうれしいですわ。若い人らの成長の過程に利用してもらえるなら本望ですね。

ユイ:ほんまに、『末広温泉』には足向けて寝られへんと思いますもん。

シンゴ:僕らの心の拠り所ですからね。

桶美:『末広温泉』に入る時は、マジで一礼せなあかんと思うで。

やっぱ風呂だけは飽きへん。<桶MUSIC FACTORY>っていう、風呂をテーマにした音楽レーベルも立ち上げたから。
12345
Profile

桶美

大阪市在住、温浴施設愛好家。2022年は365日皆勤で、トータルで500回以上銭湯へ通う。全国の温冷浴情報を発信する『フルタイム風呂タイム』、風呂をテーマにした音楽レーベル<桶MUSIC FACTORY>も主宰。我が身のために、今日も銭湯と温冷浴の魅力を広めている。

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE