銭湯やサウナ、クラフトビールグッズを展開する<Chain&co.>の牛嶋亮さんに聞く、リスペクトの精神を込めたヒップホップスタイルのもの作り。

昔ながらの銭湯に訪れると、必ずと言っていいほど身に着ける「ロッカーキー」。正式名称が何なのかはさておき、お馴染みのフォルムと使い込まれた風合い、そして味わい深さ極まる佇まいが特徴です。昨今銭湯&サウナブームが広がり、もはや日常に溶け込むアイテムとなった「ロッカーキー」ですが、こちらに偶然着目し、おしゃれグッズへと変身させた人物がいるんです。それが、今回紹介する<Chain&co.>の牛嶋亮さん。銭湯やサウナのみならず、クラフトビールや音楽など、多彩なカルチャーに造詣が深い彼は、グラフィックデザインなど行う傍らオリジナルグッズを制作するアーティスト。手がけたアイテムは多岐に渡り、そのどれもが元ネタとなるカルチャーへのリスペクトを忘れない、凛とした軸を保っています。そんな彼の制作スタイルやもの作りのルーツ、今後の展開などを伺いました。<Chain&co.>はもちろん、銭湯の新しい魅力にも気付けるかも?! ぜひ読んでみてください!

ギャラリーでの個展をきっかけにデザインに興味が湧いて、もの作りの楽しさを再認識しました。

牛嶋さんは様々なカルチャーに造詣が深いとお聞きしました。どんな学生時代を過ごしてこられたんですか?

幼い頃から車に興味があって、将来は自動車関係の仕事に就きたいと工業高校に通っていました。だけど吹奏楽部に所属して部活にのめり込むうちに、音楽の道に進みたいと考えるようになったんです。だけどウチは音大に行けるほど裕福じゃないし、楽器を買うにもお金がかかる。そんな現実もあって、最初の目標にしていた自動車関係の会社に就職したんです。そこは自動車工場で使うラインを製造していて、新しいラインを作るときは図面から組み立て、工場での取り付けまで一気に請け負うような会社でした。もの作りのおもしろさに気付くことができたのは、ここで働いたおかげかもしれないですね。

その会社では、どれくらいの期間働かれたんですか?

6年くらいですかね。その間も音楽はずっと続けていました。就職した当初はお金が溜まったら音大にと考えていたんですが、仕事と趣味のバランスがかなり良かったので、どちらでも良くなっていました。だけど23歳くらいのとき、リーマンショックの余波で国内製造が難しくなって、「中国に出向してくれないか」と上司に相談されたんです。当時結婚を考えていた相手がいたので、転職を視野に入れつつ悩んでいたんですが、「本当にやりたいことはないの?」と彼女に聞かれて。「ずっと音楽をやってきたから転職するなら音楽を仕事にしたい」と答えたんです。すると、自衛隊の音楽隊に入るのはどうかと提案されて。高校卒業後もずっと楽器のレッスンを受けてきて、周りも背中を押してくれたので、音楽の専門学校に通いながら就職を目指すことにしました。

本当は2年間勉強して試験を受けるんですけど、年齢制限があったので1年目から受けることにしました。成績は悪くなかったんですが、2年連続で落ちてしまったんです。工業高校の出身だし工場で働いていた実績もあるから、資格を持ちすぎていたというのが理由で。それに自衛隊というベースがあっての音楽隊員だから、やっぱり自衛隊として使える人材が欲しかったみたいですね。工業系の資格や経験を生かして機械整備を担当するのはどうかと言われたんですが、それはちょっと違うと思っちゃったんです。

それは大ピンチですね。そこからどのような流れで、もの作りやデザインに方向転換したのですか?

それでも音楽はずっと続けていて、R&Bを編曲してビートマシンと組み合わせつつ、金管五重奏で演奏するという少し変わったバンドで活動をしてたんです。僕はスチャダラパーとか元祖渋谷系のアーティストが好きなんですが、ちょうどこれからのことを考えてたとき、京都の『トランスポップギャラリー』でかせきさいだぁさんの個展があって。アートは全然詳しくなかったんですが、気になったので訪れてみたんです。そこでギャラリーのオーナーさんに「君は何をしてんの?」と声をかけられて、当時組んでいたバンドの話をすると、「おもしろいやん。バンドのTシャツとか作って販売してみたら?」と言ってくれて。話を聞くと、そこで売っているかせきさいだぁさんのTシャツも、その方がシルクスクリーン印刷で作ったモノだったそうで。その次の週、実際にやらせていただいたんですけど、思いのほか難しくてなかなか上手くいかなかったんです。だけどこれまで6年間、工業系の会社でクリエイティブなことをしてきたから、久しぶりのもの作りがめちゃくちゃ楽しくて。それでシルクスクリーン熱に火が付いて、もっと勉強したいと通い詰めていると、アーティストの個展の手伝いをする機会が増えたんです。その頃は「貧乏アーティストです」という体で周りの人と接していて、色んな人にアドバイスをもらって、自分でイラストレーターなどを触ることも多くなりました。

シルクスクリーンを通して、もの作りの楽しさを再認識されたんですね。

同じくらいの時期に、友人の知り合いが滋賀で自称日本で1番イケてるボードゲームカフェを開いて、足を運んでみたんです。そこのオーナーをしているハッシーに、音楽しながらTシャツ作ってバイトをしてることを話すと、いきなり「うちで働いてみいひん?」と言われて。ほぼほぼ初対面だったんでびっくりしたんですけど、彼の本職がバリバリのデザイナーだったらしく、「ボードゲームのこと覚えなあかんけど、暇な時間とか営業後にデザインのこと教えてあげるわ」と言ってくれました。

それは嬉しい偶然でしたね。お金をもらいながらデザインの勉強ができたんですね。

すごくありがたかったです。ハッシーには本当に色んなことを教えてもらいました。3,000円のフライヤー制作からこども園のトータルブランディングまで、少しずつやり方を覚えながら真面目に取り組みました。確かに大変なことも多かったですが、そこでデザインに対してポジティブに向き合う自信がついたんです。

その頃も音楽活動は続けていたんですか?

続けたい思いもあったんですが、「1つのことに集中して、余力が生まれてから他のことに手を出した方がいい」とハッシーに助言されて。しかも音楽に関しては、自分の中でやり切った部分もあったんです。とあるスマホゲームに音楽を採用してもらえて、すごく嬉しかったんですけど、そのギャランティが思いのほか安くて(笑)。音楽で食べていく大変さを痛感しました。音楽はもう一度始めることもできる、そう考えてデザインの世界に一気にシフトしたんです。

ダジャレみたいなもの作りが得意。元ネタに対してリスペクトを込めた、質のいい遊びみたいなことをしていきたい。
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Profile

牛嶋 亮

1988年生まれ、滋賀県出身。銭湯やクラフトビールなどを題材に、雑貨やアパレルグッズをリリースする<Chain&co.>を手がけるアーティスト。かなりの銭湯ラバーで週に2、3回は必ず訪れるそう。1時間半ほどかけて3、4回交互浴を繰り返すのが牛嶋流。

https://chainandcocreative.stores.jp/

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