ガマンできへんくらい銭湯が好き。365日皆勤の温浴施設愛好家、桶美さんに沸き続けてる銭湯愛と、温冷浴という奥深き世界。

「もしも銭湯がなくなったら、僕、廃人になると思うわ」と、茶目っ気込めて話してくれたのは、温浴施設愛好家であり、大阪が誇る温冷浴の伝道師、桶美さん。最近の銭湯ブームには目もくれず、自分が気持ち良くなりたいから銭湯を残したい、そのために魅力を広めるという極論で突き進む道は、ただの銭湯好きじゃ辿り着けない次元のもの。でもね、人間って、ほんまに好きなものにハマれると、ここまでいけるんやと思えちゃうんですよ。桶美さんに沸き続けてる銭湯愛と温冷浴という奥深き世界、この記事で全てを語り尽くせてるわけじゃないけれど、どうぞ湯っくりと読んでみてください。銭湯好きの人はさらに深く楽しんで、銭湯の魅力に気づけた人は、まずは近所のどこかに浸かりに行ってもらえれば。人生、もっとおもろくなるんとちゃいますかね。

銭湯の気持ち良さをカラダが覚えると、疲れた時の方が風呂が気持ち良くなるから仕事も追い込むし、イヤなことにも積極的に取り組んで解決しようとしてまう(笑)。そうなったらマジで無敵やで。

桶美さんの銭湯愛をいろいろ聞いていきたいですが、そもそも銭湯に通い出したのっていつ頃からなんですか?

小学校くらい。学校終わって一回家に帰り、近所の銭湯で友だちと待ち合わせして、風呂に入ってから遊びに行く。そんな感じやったかな。

学校と遊びの間に銭湯を挟むって、小学生の頃から強者感あります。

僕らの周りではそれが普通やってん。大人になってからも定期的には行ってたけど、20代前半の頃は仕事もめちゃくちゃ忙しくて。毎日深夜2時くらいまで働いとったから、週末とかは早めに切り上げて会社のメンバーと行くくらい。まぁ週に1回のレベルやったと思う。

なるほど。今では毎日銭湯に通ってるそうですが、そこに至るきっかけは何かあったんですか?例えば、桶美さんと言えば温冷浴ですが、それが関係してるとか。

温冷浴は20代前半からやってたけど、当時はそんな名前があるのも知らんかったし、そもそも情報とかもなかったから。サウナして水風呂に入って、そこから熱い風呂に入ってのぼせかけたら水風呂に入る。それが気持ちよくて繰り返しとってん。で、10年前くらいに『末広温泉』に行った時、西式温冷浴に出会ったんですわ。

西式温冷浴とは?

1927年に医学者の西勝造さんという方が提唱した、西式健康法の中にある温冷浴の方法のこと。熱い風呂と水風呂を交互に繰り返す入浴法で、「こんなんがあるんや!」と思って、西式温冷浴にハマったんですよ。そこから銭湯通いがさらにエスカレートしていったかな。

気持ち良すぎたと。

体験してもらったら分かると思う。マジで気持ち良いし、頭がスコーンってなるから。大阪府下でも温冷浴できる銭湯はいくつかあるけど、中でも『末広温泉』は水風呂が19度、熱い風呂が45度という絶妙な温度管理が完璧やねん。それぞれの風呂に1分入るのを交互に繰り返すのが西式温冷浴なんやけど、温度が高かったり、低かったりすると成立できへん。でも、『末広温泉』ならできる。しかも、湯主である井上さんの心意気が好きやねん。一般的な銭湯は閉店時間にきっちり閉めるのに、『末広温泉』はギリギリのタイミングで温冷浴してたらわざわざ入って来て、「最後まできっちりやっていきや」って言うてくれる。さすがにそこは甘えず、閉店時間にはキッチリと出るようにしてるけど。この前なんか、23時57分に熱い湯が出てきたからな。普通は閉店の30分前には湯を止めるのに、ここは違う。温冷浴を広めたい愛がすごいし、とにかく本気なんよ。

銭湯側のそんな心意気を知ると、利用する側の身も引き締まりますよね。

ほんまに、今日も風呂に入れてもらってありが湯ございますって感じやで。もう数えてないけど、2019年の時点でいろんな温浴施設に900人は連れて行ってたから、今は確実に1000人超えてると思いますわ。

すごい数ですね。

『末広温泉』の西式温冷浴が好きで、初めて一緒に銭湯行くヤツはだいたいここから始まるんよ。それで温冷浴や銭湯の気持ち良さを知ってもらって、どんどんハメていく(笑)。正直、今まででハマらんかったんは15人くらいちゃうかな。それ以外はみんな銭湯好きになってるで。

桶美さん自身が銭湯に通う理由って何なんですか?

そりゃもう気持ち良いから。実は僕、全然酒が飲めなくて、付き合いで酒の場にいることも多かったけど、友だちとかみんなを銭湯に引き込んでん。酒って飲んでたら最後は愚痴とか噂話とかになることも多いやんか。でも、銭湯は逆で、みんな機嫌が良くなる。風呂入って機嫌が悪くなるヤツとかおらんでしょ?そんな付き合いできた方がええなと思って。

確かに。

風呂入ったら気持ち良いし、機嫌も良くなる。それって最高やん。仕事でムカつくことがあっても、風呂入ってたら逆にムカついてた相手のことを心配するようになったり…。「あの人、大丈夫かな?」って(笑)。精神的にもそうやし、もちろん身体的なリフレッシュもあるので、その気持ち良さをカラダが覚えてしまうと、疲れた時の方が風呂が気持ち良くなるから仕事とかもどんどん追い込むようになる。しんどいこととか、イヤなことにも積極的に取り組んで解決しようとしてまうし(笑)。そうなったらマジで無敵やで。

めちゃくちゃ逆転の発想ですね。そこまで考えたことなかったです(笑)。ちなみに毎日銭湯に通ってるってことは、家では風呂に入らないんですか?

たまにシャワー浴びるくらいかな。かれこれ3年くらいは休まず銭湯行ってるから、家では風呂に入ってないわ。

ってことは、年間365回以上は銭湯に行ってると。

「これだけ銭湯に行ってる!」とかは言うてないけど、去年は500回以上。毎日誰とどこの銭湯に行ったかはメモしてて、毎年最後のインスタ投稿の時にハッシュタグで数字をつけてる。その数字が、その年の銭湯に行った回数なんよ。

500回以上!? 1日に2回行くこともあるってことですよね。

早めに銭湯行って帰宅してから嫁さんに誘われるパターンもあるし、みんなで風呂入ってメシ食べ終わって時間があればもう一発キメに行くパターンもあるし。極めていったら、サウナと温冷浴で銭湯を使い分ける場合もある。頭おかしいんちゃうって思われるかもしれんけど、2回目がまた気持ち良いんよ。1回入ってるからカラダが仕上がってる状態で、最初から気持ち良くなれてまう。しかも『末広温泉』なんか入湯料が490円で、同じ日なら2回目は200円、3回目は無料やから(笑)

「ESOW君にお前のことを考えて描いた絵やと言われたから、即買いでした(笑)」と桶美さん。温泉マークを模した絵柄がヤバすぎです。

まさに温浴施設愛好家ですね。

その肩書きは自分で付けたんやけど、理由があるねん。普通に銭湯が好きで行ってるだけやのに、サウナ入ってたら「桶美さんもサウナーなんですね」とか言われるから。サウナ好きって言われるのはいいけど、サウナーって何やねんと思って(笑)。だから、温浴施設愛好家って言うようにしたんよ。まぁ、天邪鬼な性格もあるんやけど。

ちなみに桶美という名前はどこから?

本名が大久保やから、OKBって言われてたんよ。後でまた話しますけど、自転車のリムを作ってる時にそう呼ばれとった。でも、なんかAKBみたいでイヤやなーと思って、銭湯が好きやから桶美やったらちょうど当て字にできるなと。それで桶美にしただけ。でも、今は「桶さん、桶さん!」って言われたりもするんよ(笑)

日本の温冷浴は、『末広温泉』から始まるもの。ここが温冷道場と呼ばれてるのには、それだけの理由と歴史があるから絶対に残さないとあかん。
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Profile

桶美

大阪市在住、温浴施設愛好家。2022年は365日皆勤で、トータルで500回以上銭湯へ通う。全国の温冷浴情報を発信する『フルタイム風呂タイム』、風呂をテーマにした音楽レーベル<桶MUSIC FACTORY>も主宰。我が身のために、今日も銭湯と温冷浴の魅力を広めている。

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