ままならないから、面白い。ガラス作家・甲田彩恵さんが追及する「ガラスのまだ見ぬ可能性」。

「街はヒトがおもしろくする」を合言葉に、関西で独自の活動を続けるさまざまなヒトたちを紹介しているMARZEL。その姿勢を貫きつつ、“関西の街をこれからさらにおもしろくしてくれそう”な予感のする、要CHECKなヒトもフィーチャーしていきます。今回ピックするのは、大阪を拠点に活動するガラス作家・甲田彩恵さん。その作品は、繊細な気泡の表情と、どこか愛嬌のあるたたずまいが印象的です。自身のレーベル<nora glassworks>を主宰し、今年から新たに工房を立ち上げた甲田さんとは、いったいどんな人なのか。ショートインタビューと20のQ&Aで、その素顔やものづくりへの想いをひもときます。建築家のご主人が築100年の古民家をリノベーションした工房にお邪魔して、吹きガラスの工程も見せてもらいました。この記事をきっかけに、甲田さんのことや、その作品の魅力にも触れてもらえたらと思います。
気泡もフォルムも、少しのことで大きく変わる。だからこそ、これからも新しい表情に出会える。

吹きガラスで、器やアートピースを制作しています。小さい頃から手を動かして何かを作ることが好きで、高校ではプロダクトデザイン科で金属加工や陶芸、CADなどを学びました。吹きガラスに魅了されたのは高校3年生のとき、教育実習の先生がきっかけです。それまでは風鈴や金魚鉢の印象しかなかったのが、アート寄りの作品と出会って、こんなに自由にできるんだと驚いて。面白そうだなと思って、吹きガラスが学べる大学の芸術学部に進学しました。大学では本来なら3年次から専門を絞りますが、私はガラスに心酔していたので、2年次から学外の教室にも通いました。

吹きガラスに魅了されたのは多分、難しいからだと思います。手で直接触ることができないので、すべて道具だのみなんです。すごく難しいんですけど、それだけに、できたときの達成感が大きくて。上手くできたらうれしくて、できなかったら悔しくて、次はこうやってみようって考えるのが性に合っているんだと思います。あと、ガラスは瞬発力みたいなものが必要で、そこも自分に合っているような気がします。

頭の中で考えるより、まず手を動かしてみるタイプです。街でカラーコーンを見かけたら、あのフォルムをガラスで作ってみたら面白そうだなとか。自分の工房を構えてからは、いつでも制作できるようになったので、とりあえず思いついたらやってみます。
自分の作品では、ちょっとかわいらしさを出したいと思っています。全体を見たときのバランスで、足が太くてぽってりしていたり、歩き出しそうだったり、愛でたくなるようなかわいらしさ。カーブの角度が少し違うだけで雰囲気が変わってしまうので、絶妙なポイントを狙います。

高校時代にプロダクトデザインを学んだ経験からか、機能性も重視しています。大切にしているのは、実際に器を使うシーンを想像しながら、使い手の立場になって考えること。子供が生まれてからは、このくらい厚みがあれば小さい子でも使えるかなとか、そういうことも考えるようになりました。物を大切に扱うという意味でも、小さいうちからガラスの器にも触れさせたいなと思います。うちの娘は大人の真似事が好きなので、ガラスのコップだと、いつもより飲んでくれたりします(笑)

少しずつ時間を作って、ガラスの研究を深めていきたいと思っています。今作っている泡シリーズは、重曹の濃度や時間などを研究して、この表現に辿り着きました。これからは今の気泡の出し方だけにとどまらず、これまでとは違った方法で発泡させたり、さまざまな素材や道具などを使って、ガラスのより魅力的な表情を探求していきたいですね。
最近感じるのは、体の調子が作品にも影響するということ。フィジカルって大事だなと感じます。しっかり体をメンテナンスしながら、ガラスの可能性を追求していきたいと思っています。

甲田彩恵さんを知る、20のQ&A
Q1. よく遊びに出かける街は?
最近はあまり出かけられてませんが、南船場にはよく行ってました。お茶したり、ギャラリーへ行ったり。
Q2. あなたが住んでいる大阪という都市の好きなところは?
気さくでアットホームなところが好きです。天パの娘と自転車に乗っていたら「くるんくるんやなぁ(髪の毛)」と急に声をかけられました(笑)
Q3. よく行く、または好きなお店は?
THE INY COFFEE(奈良)。ちょっと自然に癒されたい時にフラッと行きます。コーヒーがむちゃくちゃ美味しいんです。豆も大量に買い込んで帰ります。
Q4. いつか行ってみたい街は?
トルコ。世界遺産をとにかく巡りたいです。
Q5. 子供の頃の夢は?
宇宙に行く。宇宙人とか作ってました。紙粘土で。
Q6. 学生時代に夢中になっていたことは?
京都ぶらり。まだスマホがない頃、家のパソコンで地図や電車の乗り換え案内を印刷して1人で行ってました。
Q7. 自分の性格の中で武器だと思えるところは?
負けず嫌いなところ。
Q8. リスペクトしている人はどなたですか?
夫。普通に尊敬してます。
Q9. いつか会ってみたい人はどなたですか?
仁井聡子(FM COCOLO DJ)さん。好きなんです。
Q10. 初めて購入したアーティストの楽曲は?
GO!GO!7188のアルバム『ベストオブゴー!ゴー!』
Q11. 最近、自分の心に響いた映画、音楽、本などは?
『ショーシャンクの空に』。胸がキュッとすることも多いんですが、ふとした瞬間にいろんなシーンを思い出して観てしまう映画です。

Q12. 影響を受けた映画、音楽、美術、芸術などは?
タピオ・ヴィルカラさんの作品。学生時代にこの方の作品に感銘を受けて、ガラスを続けようと心に決めました。
Q13. 最近買ってよかったものは?
作家さんのうつわ。
Q14. 次に狙っているもの、欲しいものは?
小さいセヌフォスツール。
Q15. 1日の始まりでしていることは?
1歳の娘とおはようのぎゅ。
Q16. 気持ちを切り替えたり、リフレッシュする方法は?
買い物をする。
Q17. 人生の最後に食べたいものは?
母の作ったコテコテの粕汁。
Q18. 1年後、なっていたい自分の姿は?
ちょいムキムキの健康パワー女子。
Q19. 今の活動を通じてこれから実現したいことは?
自分の工房ができたので、今まで以上にガラスについて研究していきたいと思ってます。
その上で自分の中にある限界に囚われず、ガラスの可能性を見出していきたいです。
Q20. 関西のみんなにひと言!
またいつの日か作品を見ていただけると嬉しいです! よろしくお願いします。

甲田彩恵
大阪市出身。大阪府立工芸高等学校、近畿大学文芸学部芸術学科卒業。吹きガラス工房に勤務したのち個人での作家活動を行い、ガラスレーベル