スケボーに乗る土偶がかわいい!<ヨーヨー窯>の屋号で活動する陶芸作家・渡部彩弥さんは、なぜ13,000年前の縄文土器に魅せられたのか。


自分は大阪で陶芸をしてるんで、産地の土というものがないんです。なので、自分がいる大阪市で作ってるっていうのを出したくて、街中で拾った金属をここに入れてるんです。

土偶に出合うまでは、どんな作品を作っておられたんですか?

土偶を本格的に作り出したのはここ4~5年で、それまでは蛸の作品を。

蛸?

蛸がすごく好きで。蛸の足が花入れになっていて、壁に掛けられる作品とかいろいろ。蛸をしばらく作って、そのあとは木の根っこ。土を触っていると地中のことが気になって、木の根っこの作品をたくさん作りました。自然をモチーフにしたものが多かったですね。

土偶のようなプリミティブなものとか、蛸や木の根のような自然なものに惹かれるんですね。

陶芸って、製品の面もあるじゃないですか、お皿とか花瓶とか。それを考えたときに、私は機械で作れるものに今後ぜったい勝てる気がしなくて、職が減っていくだろうと思ってるんです。だから、手で、不完全なものを作っていけたら、それは残せるんじゃないかなって。

たしかに、綺麗なものは技術が発展すれば、いくらでも作れますよね。

それもすごいことだと思うし、使いやすい器も大好きなんですけど、でも自分が作るものは、不完全な物であったり、唯一の物でありたいと思ってます。

お皿のような用途があるものと、土偶のようなオブジェ的なものを作るのとでは、作品への向き合い方って違いますか?

土偶も、お香立てになっているものは、台座の上にちゃんと乗るっていうのを最低限は考えて作るんですけど。コップも水が漏れなくて飲み口がなるべく飲みやすい、ぐらいは考えます。でもどっちも同じような気持ちで作ってると思います。物がどうあれ、こういうシワを残したいとか、ここのこの形がいいなとかは、どの作品でも一緒ですね。土を動かすことに変わりはないっていうか。

これを作ってるときがいちばん楽しい!みたいなものはありますか?

自分で作ってて今いちばん楽しいのは、壺のオブジェなんですけど。土の塊をそのまま切って曲げたりとか、重ねて積み上げたりとかいろいろしてるんですけど、土を操るというか、土と遊んでるっていう感覚で。こうやったら次はどうなるかな、こうやったらいい重なりができた!みたいに土の表情を楽しんでいくうちに、オブジェになっていくっていう作品です。

手前が、土の表情を生かした作品。大阪市内で拾った鉄も一緒に焼いています。

土そのものの表情を楽しむ作品なんですね。

土ってほんと自由で。でも慣れない人が扱うと中に空気が入って割れたりとか、やっぱり仲良くならないとなかなか難しいんです。私もやっと、ちょっと仲良くなれてきたんじゃないかなというところで。素材との関係ができてきたかなって。

土という素材と仲良くなれたからこそ、土そのものをテーマにした作品に挑戦したいと思われたんですね。

そうですね、土をさわりながら、ちょっと砂とか石を混ぜようとか、そういうこともあります。そういう実験的要素も織り交ぜつつ。この作品には一回焼いた鉄を入れてるんですけど、自分は大阪で陶芸をしてるんで、産地の土というものがないんです。なので、自分がいる大阪市で作ってるっていうのを出したくて、街中で拾った金属をここに入れてるんです。

産地の土はないけど、その土地のものを内包するみたいな感じですか?

そうですね。何か他との違いというか、自分のオリジナルをって考えたときに、拾った金属を焼いて入れてみようと思って。拾ったガラスとかお茶碗のかけらとかそういうのでもいいんですけど。

すごい、面白いですね。制作は毎日されてるんですか?

毎日ではないですけど、このあたりで作らないとスケジュールがやばいってなったら作ります。生活とか子育てもあるから、子どもが風邪をひいたらできない時もあるし。

作家さんの仕事って自分の中から湧き出るものをカタチにするじゃないですか。それは作りたいという欲が湧いてきて作られるんですか?それとも、ある程度はルーティーン的な感じなんですか?

展示が決まってる場合はルーティーン的な面もあるんですけど、でも飾りを自由に作ったりとか、自分で楽しめる要素を絶対どこかには作ってます。限られた時間でも気が乗るように工夫してるというか。どうしても作る気にならない日もあって、そんな日はやっぱり上手いこといかないので、絵を描いたり、全然違うことをしてます。今はハギレを縫い合わせて、紐を作ってます。

「布を切って丸めて、丸めた端をずっと縫って」作っている、カラフルな紐。

本当に全然違うことをされるんですね。

なんかすごい、縫いたい!って思ったんです。でも服とかはパターンひいてきちんと作らなくちゃいけないからあんまり得意じゃなくて。思ったまま能動的に作れるようなものを考えて、ネックレスの紐にしたら、ここにペンダントトップを通したら使えるなって。

そういうひらめきみたいなのが降ってくるんですか?

ずっと作業をしてない時とかは次はこれを作りたいとかありますし、見て衝撃を受けたものは作品になったりとかはありますけど、でも作ることは衣食住、ごはんとかと同じくらい自然にあるものとして過ごしてます。

人間を相手に作ってる物であるし、もっと人間のやってることを楽しもうって、この頃は思うようになったんです。
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Profile

渡部 彩弥(わたなべ あや)

大阪府堺市生まれ。絵を描くことが好きで美大を受験するも、工芸科に入学。陶芸に出合い、作陶を始める。大学卒業後は地元・堺の陶芸教室で働く傍ら自身の作品を手掛ける。土や石に触れながら、その中で生まれる模様や窯の中で渦巻く炎によって釉薬が溶けて混ざる色を大切にし、器や植木鉢などを制作。自然の現象から着想を得た、独創的な色の表現も魅力。

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