スケボーに乗る土偶がかわいい!<ヨーヨー窯>の屋号で活動する陶芸作家・渡部彩弥さんは、なぜ13,000年前の縄文土器に魅せられたのか。


縄文マニアの人が声かけてきはったんです。「一緒に縄文土器を作ってみませんか?」って。それで、作らせてもらうことになったんです。

渡部さんは土偶や土器っぽい作品を手掛けておられますが、なぜそういうものをモチーフにされているんですか?

焼き物の歴史のなかで、いちばん好きなのが縄文時代なんです。縄文時代の焼き物って、一万年くらい前からあるんですけど、すごい過剰な装飾が施されてるんです。実用で作るものじゃないですか、煮炊きしたりとか。それに過剰な装飾をする文化が、面白いなっていうのがあって。時代が進むにつれてシンプルになっていくんです、用途重視になって。

今見ても独創的なフォルムをしている、縄文時代の火焔土器をモチーフにした作品。

だんだんシンプルになるんですね!逆かと思ってました。

そうなんです、その過剰な装飾がいちばん最初っていういのがすごく面白くて、好きな時代です。土偶も、埴輪と混同されがちなんですけど、実は全然違っていて。

埴輪と土偶って違うんですか?

埴輪は王様のお墓に備えられる、賑やかしみたいなものなんです。それに対して、土偶はもっと身近な存在だったみたいで。詳しくはわからないですけど、王様とかがいなくてみんなで暮らしてた時代で、身の回りの物だったみたいなんです。だから、土偶が好きなんです。

暮らしの身近にあったものだから。ちなみに時代も違うんですか?埴輪と土偶は。

土偶は縄文時代で、埴輪は古墳時代。埴輪のほうが新しいんです。

縄文時代は暮らしの道具に過剰な装飾をして、土偶を愛でて、なんかいいですね。

そうなんです。土偶もたくさん見つかってるので、多分みんなの暮らしの側にあったんではないかなって感じです。

土偶とか縄文土器に惹かれたのは陶芸を始められてからなんですか?

そうですね、学生時代に奈良で一度「遮光器土偶」を見たことがあったんです。その時はまだ何も知らなくて、思ったよりちっちゃいんやーぐらいの感じで(笑)。でも他にもたくさん見た中で、いちばん印象に残ってたといえば残ってたんですね。それから大学を卒業してしばらくして、久しぶりに絵を描こうと思って、遮光器土偶の絵を描いたんです。それをステッカーにしたんですけど。

「ストリートカルチャーが好き」という渡部さんらしく、スケボーに乗っている土偶の絵。

かわいい!

この絵をイベント出店のときにシルクスクリーンで刷って販売してたら、縄文マニアの人が声かけてきはったんです。「一緒に縄文土器を作ってみませんか?」って。それで、作らせてもらうことになったんです。富田林の山のなかで、縄文時代に使ってたような土を使って、野焼きって焚火で焼く本格的なのを毎年やってはったんですよ。それでやらせてもらったら、すごい面白くて。その頃から釉薬をいろいろ使ってカラフルな作品を作り始めてたので、土偶もそういうカラフルなものをやってみたいなと思って、今もこうして作ってるっていう感じです。

そんなきっかけで、土偶を作るようになったんですね。土偶の作品って、あんまり他に作ってる方いらっしゃらないような。

野焼きで本当の縄文土器みたいな作品を作られてる方はわりといらっしゃるんですけど、こんなカラフルなのはないかもしれないですね。

土偶って基本のフォルムはほぼ同じだと思うんですが、個体差とかってどういうふうにつけられるんですか?

個体差はめっちゃあるんです。作っていくまでどうなるか分からないから。この土偶も、土が黒と青で、オレンジの釉薬をかけてるんですけど、これは本当は黄色にしたかったけどオレンジになっちゃって。あとは、メガネの大きさとか、顔の幅とか、肩幅とか手の長さとか、そういうので全部表情が変わるんです。

©渡部彩弥

確かに!いくつか見比べると、色もフォルムも全然違うんですね。

そうなんです、実は全然違って。

それは作りながら、こうしていこうかな?と考えて形にしていくんですか?

いろいろな遮光器土偶のなかで私がモチーフにしているものがあって、それを頭の中で思い描きながら作るんですけど、ちょっと手が短くなったり、どんどん変わっていって。頭の上に提灯みたいなのが乗ってるんですけど、それも自由に作ってます。一応この形っていうのはあるんですけど、その形をうにょうにょさせたりとか、バリエーションは自由にしたいなと思ってます。

出土した遮光器土偶にも、いろいろな種類があるんですか?

もともとの遮光器土偶もいろいろあって、学生時代に私が見たのは小さいものだったんですけど、昨年の夏に東京の国立博物館に所蔵されてるのを見たら、それはかなり大きくて。表情も、口が丸いのとかもあったりします。

当時からバリエーションがあったんですね。遮光器土偶という名前はどこから?

雪上のサングラスを遮光器っていうんですけど、このメガネみたいなのがそれに似てるから遮光器土偶っていう名前が付けられたみたいです。

メガネみたいなの以外にも、たくさん装飾がありますよね。そもそも土偶ってなにを表しているんですか?

諸説あって、文献とかが残ってないんであんまりわからないと思うんですよ。ずっとこれまでは女性で、妊婦とかそういうのをモチーフにしてるって言われてたんですけど、ここ2年ぐらいで植物の精霊やっていう説が出て。遮光器土偶は里芋の精霊やとか(笑)

里芋の精霊なんですか!?

手の形がそれやとか言って(笑)。ほんまに分からへんし、私は女性説かなと思ってるんですけど。でも分からないまんまでいいかなって。知りたい人は調べたらいいと思うんですけど。

©渡部彩弥

土偶ってまだそんなに解明されてない部分があるんですね。

そうみたいですね。青森県でいちばん発掘されてるんですよ、この遮光器土偶が。他は長野県とか山梨県とかいろんなところで出てるんですけど、主に東北から北海道、アイヌ民族の原型やったりとかいろいろそういう文化とも交わってくるみたいで。でもあんまり詳しくないんで。

そっちの説のほうが、ロマンがあるような気がしますね、里芋の精霊より。

そうかもしれないですね(笑)

自分は大阪で陶芸をしてるんで、産地の土というものがないんです。なので、自分がいる大阪市で作ってるっていうのを出したくて、街中で拾った金属をここに入れてるんです。
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Profile

渡部 彩弥(わたなべ あや)

大阪府堺市生まれ。絵を描くことが好きで美大を受験するも、工芸科に入学。陶芸に出合い、作陶を始める。大学卒業後は地元・堺の陶芸教室で働く傍ら自身の作品を手掛ける。土や石に触れながら、その中で生まれる模様や窯の中で渦巻く炎によって釉薬が溶けて混ざる色を大切にし、器や植木鉢などを制作。自然の現象から着想を得た、独創的な色の表現も魅力。

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