39組の作品が京町堀を彩る、現代アートまみれの3日間!見どころが満載すぎた、第2回目の「メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア」


日本の文化的背景を土台にしながらも、あらためてドラァグクイーンという文化を咀嚼して、さらに彫刻として表現していきたいなと思っています(大山貴弘さん)

続いては、私のイチオシ!大山貴弘さんのインタビューです。大山さんは、"Drag Queen"(ドラァグクイーン)という主にゲイ男性による女装パフォーマーをモチーフにした木彫・木版画作品を制作されています。

大山さんは、なぜドラァグクイーンをモチーフにされているのですか?

もともとずっと木彫をやっていて、始めた当初は身近な人たち、家族とかを彫ってたんですが、自分自身のモチーフというものを決めていこうと考えて、ドラァグクイーンに。自分自身のセクシャリティもマイノリティだったので、そういう人たちにとってクイーンは非常に象徴的な存在なんですね。
ただ一方で、テレビではマツコ・デラックスさんとか、ミッツさんとかが有名で、奇抜なかっこうや発言を楽しまれている部分があるんですが、掘り下げてみると文化的にも面白いですし、70年代のアメリカで騒動が起こったという歴史もあり、そういう背景も含めて知ってもらいたいっていう気持ちがありました。
そこにプラスアルファで言うと、80年代になって日本に入ってきてそこから今に至るんですけど、アメリカのものをそのまま取り入れるのではなくて。日本人もセクシャリティの多様性については、キリスト教が入ってきてからは厳しくなりますが、もともと性に対しての受け入れは広かったので、そういった日本の文化的背景を土台にしながらも、あらためてドラァグクイーンという文化を咀嚼して、さらに彫刻として表現していきたいなと思っています。

私もなぜかドラァグクイーンに強く惹かれる部分があって、作品からも仏像のような神々しさを感じます。

造形としても、仏像を参考にしている部分は多くあります。と言うもの、仏像は煩悩をとりはらった人なので、造りのなかにもそういったものを感じさせるような表現が多彩にあるんですね。いわゆる性を感じさせない表現というか。
あと、ドラァグクイーンは男性であることが多いので、体つきであったりとか、ポージングとかは、仁王さまのような男性的な特徴をもたせています。その上にくる薄い衣の表現や色彩は、女性性を取り入れたり、そういった技術を使いながら表現しています。

男性性と女性性が共存しているんですね。

造形は男性的で力強い運慶、質感などはしなやかな快慶を参考にしているような感じですね。

この肌の風合いもとてもなめらかですが、素材の木肌そのままなんですか?

木目が見えてはいますけど、彫ったあとに少し磨きをかけて、白い下地材を薄くといて、中にも浸透させることで奥行きを出しています。べたっと塗るのとはまた風合いが違ってきますね。

素材に使っているのは楠。彫りやすいので、教材にもよく使われるとのこと。

フォルムを彫るだけでなく、質感も表現されるんですね。

例えば、頬のあたりは紅茶ですね。人間の肌の奥の毛細血管が赤く見えるように、木のときに紅茶をしみこませて、その上から削っています。

うちから出る血色感を紅茶で!すごい、本当に繊細に表現されているんですね。大山さんはずっと立体の作品をメインにしておられるんですか?

木彫で立体作品を制作していますが、最近では版画作品も手掛けています。ずっと木を彫っていたので、絵を描くのではなくて木版画に。ペンとか筆で描くよりも、僕にとっては鑿(のみ)で彫った線のほうが、よりアウトプットがスムーズにできるので。最近は版画を通して、立体作品もほうも少しずつ変化しています。
最近作風が変わるきっかけになった版画は、民間仏とか、いわゆる技術のある仏師ではなく、一般の大工さんとかが彫った素朴な仏像とかに影響を受け始めまして。岩手の出身なので、同じ東北・青森出身の棟方志功の素朴な感じにもひかれて、手足を大きく描いてみたりしてますね。

立体と平面での表現は、やっぱり全然違うものですか?

そうですね、いろいろな作家さんがいらっしゃると思いますけど、僕はかなり違うなと思っていて。なにより三次元であるか、二次元であるか。いい意味で彫刻っていうのは空間を利用していろいろな動きができるんですが、その分重力が発生して、造形的に厳しい動きというのがあるんですね。対して、平面というのは奥行きがない分、二次元のなか、いわゆる縁の中で動きを作る必要があります。どちらも種類の違う制約があるにせよ、それぞれの良さがあると思います。最近は、その制限みたいなものが楽しいなと思えるようになってきました。

大山さんは岩手県のご出身ですが、大阪のアートフェアであるメタセコイアに応募されたきっかけを伺ってもいいでしょうか?

今回審査員をされている株式会社タグボートの徳光健治さんにお世話になっていて、こういうのがあるよと教えていただいたのと、あと先輩の作家さんが昨年何名か出しておられたので、今回初めてエントリーさせていただきました。

大阪の印象はいかがですか?

やっぱり東京で見ていただくのとは、鑑賞者の皆さんの見方やとらえ方というのが、若干違う感覚はあります。細かくどこっていうのは難しいですが。最初にわあって反応してくださって、それからこれはどうなってるのかとか、いろいろ聞いてくださる方が多いですね。

最後に、これからの活動の展望について、教えてください。

今は版画を通してまた変わってきた新しいスタイルがあるので、その作品をまずはしっかりと自分の中で確立できるように制作していきたいなと思います。もっともっと幅を広げて、彫刻だけでない表現にも興味を持ちながらやっていきたいですし、今はどうしても一人での作業が多いですが、いろいろな分野の方たちと協力しながら、例えば舞台であったりとか、人と関わりながら物事をつくるということをやってきたいなと思うようになりました。


PROFILE

大山貴弘

1993 岩手県生まれ
2018 東北芸術工科大学・芸術文化専攻・彫刻領域 修了
Instagram:@oym.takahiro

ステートメント
https://www.metasequoia-art.jp/creator/oyamatakahiro/

絵って1人よがりだなって、自分1人で描いているときは思っていて。絵を通してどうやったら他人とつながれるか、その方法を模索したいなと思いました。(海と梨/時任梨乃さん)
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