あそこ行ったらタダで野菜もらえるらしいで、ラッキー！みたいなんじゃなくて、人から人へ好意でつながって、ゆっくり広まっていくのがいいなと思ってます。

エージさんみたいに廃棄される野菜を活用している人は、今まで市場にはいなかったんですか？

いや、おったと思いますよ。誰かにあげるとか近所に配るとかは、多少あると思う。ただここまでガチで持って帰って、不特定多数の人に持って帰ってもらってる人はおらんと思います。だって、やっぱり大変なんですよ。悪い部分をハネて、箱に詰め替えて、バイクに積んで運んで、それを下ろして並べてって。ほんまめんどくさいじゃないですか。でも僕の場合は、それが面白いって思ってしまったから。

それだけ労力をかけても見返りというか、価値があると。

あの子来てくれるかなーとか。梨好きやから置いといたろうとかね。あ、そうや、僕がめっちゃ贔屓してる6歳の子が今日来てくれるんですよ。梨なかったらガッカリするかもしれへんから、キープしとこ。

さっきから小さい子がエージさんに差し入れ持って来てくれたり、ほんまに心斎橋の雑居ビルでこんな心あたたまることが行われてるなんて、びっくりです。

ねえ。好意でしかつながってないから。さっきも近くのバーの店主さんに教えてもらって初めて来たって子がおったけど、そのバーの人も、その子のこと嫌いやったら教えてないと思うんですよ。ママさんたちもそうやし、会社帰りに同僚と寄ってくれる子らもそうやし。

たしかに、この雰囲気は、善意とか好意でつながってるからこそだと思います。

たまに、そらタダで野菜配ったら誰でも来るやろみたいな言い方する人もいるんですけど、タダやけどタダじゃないっていうか、僕も労力かけて市場から持って来てるし、来る人もわざわざ時間をかけて立ち寄って、野菜を活かしてくれる。お互いが歩み寄ってる感じ。タダやけど、ただごとじゃないんです。

持って来る人、持って帰る人、その中間がこの場所なんですね。

そうそう。それで言うたら、僕はただ持って来てるだけで、そこから先はみんながいることで成り立ってる。やから、野菜取りに来てください！って大々的に発信してるわけでもないのは、あそこ行ったらタダで野菜もらえるらしいで、ラッキー！みたいなんじゃなくて、今みたいな感じで、人から人へゆっくり広まっていくのがいいなと思ってるから。

そうですよね、エージさんが野菜を配るのは、人に会えるからですもんね。

そうそう、廃棄される野菜が全部はけた、バンザーイ！ってことじゃないから。野菜だけバーンてかっさらって帰られたら悲しいでしょ。軽トラで来て箱ごと運び出してなくなったりしたら残念すぎるし。

ここに来ているみなさんにとっても、大事な場所なんだということはすごくわかりました。

取りに来てくれる人も、このビルのお店の人も、みんなでやってる感じ。僕がおらんときにはかご片付けてくれたり、葉っぱとか落ちてたら拾ってくれたり。みんながみんなで大切にしてくれてるところなんで。やから、興味を持った人は、インスタとかで探してくれたらええなと思ってます。

エージさんがこれからやってみたいことって何かありますか？

やってみたいことはいくつかあって、飲食店もやってみたいなっていうのはあります。お店って表現したらあれやけど、思いついたことはいろいろやっていきたいかな。野菜でこういうことしてたら、いろんな人とも出会えるし。

野菜のことは、ずっと続けていかれるんですか？

うん、野菜はやめるつもりはなくて。もし市場の仕事をやめても、僕がウェーイって行ったら野菜くれるんですよ。もうどこの店のエージじゃなくて、エージで知ってもらってるから。やから、例えばもし僕が店をやったとしても、野菜とは付き合っていこうって思ってます。もうここまで来たらね、野菜なしの丸腰で、女の子と会うんが怖いんですよ。エーちゃん今日なにあるん？って言われてなにも持ってなかったら、喋ってもらわれへんのちゃうかなって（笑）。もう僕は、野菜なかったら無理なんです。

＜モリエージさんのお気に入りの場所＞

静かなところ（琵琶湖の沖島とか）
普段は市場と家とショータの店（太陽の村）しかいないんで、どこって難しいんですけど……。もともと田舎者やから、田舎は好きなんです。寂しがりやから都会に住んでますけど、たまには静かなところに行きたくなりますね。道に迷うのも楽しいから、全然知らん場所をバイクで走るのも好きです。