心斎橋の雑居ビルで、廃棄野菜を無料で配るモリエージさん。なぜタダで野菜を配り続けるのか、フードロス解消でもなくSDGsでもないその理由。

「今日は白玉ねぎあるで!水分が多いからやわらかいねん」「セロリもらうわ。かぼちゃはもうない?」こんな会話が繰り広げられているのは、八百屋の店先ではなく、ミナミにある雑居ビルの階段。所せましと並べられた箱にはさまざまな野菜がぎっしり詰まっていて、訪れた人はみんなお目当ての野菜をピックアップして「エーちゃんありがとう~!」と帰って行きます。エーちゃんと呼ばれているのは、大阪中央卸売市場内の八百屋で働くモリエージさん。廃棄される野菜を市場から運び、欲しい人に無料で配っている、いわば「野菜配りおじさん」的な方。なぜエージさんはみんなにタダで野菜を配るのか、その理由を知りたくて、会いに行ってきました。エージさんは物価高騰の折に現れた救世主なのか、SDGs達成に燃える社会活動家なのか、はたまたフードロス解消を目指す意識の高い方なのか。実際にお会いしたエージさんはそのどれでもなく(全部でもあり)、野菜でみんなをご機嫌にしてしまう最高にハッピーな方でした!

野菜を置いてたら、みんな来てくれるじゃないですか。僕が野菜を配ってるのは、人に喜んでもらえるのもあるけど、自分のさみしさを野菜で埋めてるんです(笑)

すごい量の野菜ですね。これは全部、廃棄される予定だったんですか?

そうなんですよ。市場から出荷された野菜が店頭に並んでお客さんが食べるまで、けっこう時間かかるじゃないですか。その時間を逆算して、大丈夫なやつしか出荷しないんですよ。まだいけるやん?て思っても、お客さんの手もとに届くときに傷んでたらあかんから。やから、ちょっとでも気になるやつは箱ごと廃棄になるケースもあるんです。仲卸業は、食べる人に直販ではなくて売る人に売るので、売り物になるかが市場の基準なんです。

箱ごと廃棄になってしまうんですか?

大量にさばくから、いっこの箱の中からええやつとかだけ選んでられへんのですよ。

それはもったいないですね。ちょうど食べ頃の野菜が廃棄されてしまうという…。

まあでも、それを無理に出荷して、何かあったらそっちのほうが大変やから。傷んでた!とかってお客さんからクレームきたら、そっちのほうが損害が大きいから。

「今日は撮影やから!」といつも以上に大量の野菜をスタンバイ。左のコンテナに入っているのは、この日一押しの白玉ねぎ。

なるほど。リスクを減らすために、傷む可能性のある野菜はハネてしまうんですね。で、そのもったいない野菜たちを、エージさんが救っていると。

いや、これ僕ね、先にぶっちゃけちゃいますけど、フードロスを減らすことに燃えてるとか、SDGsとかをそんな意識してるわけじゃないんです。

そうなんですか?

市場に入ったんが10年ぐらい前なんですけど、その頃も野菜ばんばん捨てられとったんですよ。もったいないなあと思って、これまだ食えるやないですかって言うたら、お前持って帰れやってキャベツ1玉もらったんです。次の日市場に行ったら、またキャベツが箱ごと捨てられようとしてて、これも捨てるんすかって言うたら、ほな箱で持って帰れやって。

キャベツが1玉から1箱に増えましたね。

そんなん自分じゃ食い切れへんじゃないですか。やから、最初はチャリンコに積んで友達んとこ持ってったんですよ。そしたら、バチクソ喜んでもらえたんです。こんな喜んでもらえるんやなってこっちも気分よくなって。そこからどんどんもらう野菜の量が増えて、今度は飲食店やってる友達にも持って行くようになったんです。飲食店やったら量たくさん使ってもらえるかなと思って。それから9年ぐらい、ずっと自分で友達のところを回って配ってたんです。

並び終えてインスタで告知すると、続々とお客さん(?)が。近くのカフェの店主さんは、エージさんに缶コーヒーとお菓子を差し入れ。

以前はエージさんが直接、配りに行ってはったんですね。それもすごい。

でも、ちょうど去年の10月、てんこもりの野菜がある日に体調を崩したんですよ。これは絶対配りに行かれへんわと思って、今日はここのビルに置いとくから、みんな取りに来てくれへんかな?って弱音を吐いたんです。そしたらみんな、全然いいよって取りに来てくれて、野菜もすっとなくなったんです。それで、あ、こっちのほうがいいかも!と思って。

配りに行くのではなくて、取りに来てもらうスタイル。

そうそう。実験的に何回かやってみたら、今までは自分の知ってる人にしか渡せんかったけど、ここに置いてたら知らん人も来てくれるんです。同僚と来てくれたりとか、友達に教えてもらって来てくれたりとか、好意でつながった知らん人がばーっと来てくれて。そういう嬉しいおまけがついてきて、これはちょっとやばいな、ええなって。自分が体調不良で配れんかったことがきっかけで、結果的にすごくいい形になったと思います。

今ここで少しお話してる間にも、いろんな方がいらっしゃいますね。

そうなんすよ。野菜を置いてたら、みんな来てくれるじゃないですか。今まで野菜を配り回ってたのは、人に会いに行く口実でもあったんですよ。やから、僕がこんなことをやってるのは、人に喜んでもらえるのもあるけど、自分のさみしさを野菜で埋めてるんです(笑)。SDGs的にはすごい今のご時世に合ってるねって言われるんですけど、動機はそういう感じです。

もし自分をひとつ褒めるとしたら、野菜をもったいないって持って帰って、友達にあげたことなんですよ。それが分岐点。あそこで配ってなかったら、今こんな楽しいことになってない。
1234
Profile

モリエージ

京都府福知山市出身。約10年前から、中央卸売市場で廃棄になった野菜を友人に配り始める。2022年10月からは心斎橋の雑居ビルにて、不定期(週2回程度)で<フリー野菜>を実施。愛車はホンダの三輪スクーター「ジャイロ」。<フリー野菜>の実施は、インスタグラムのストーリーズで告知。

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE