朽ち果てた廃屋群をDIYして村をつくる。廃屋ジャンキーの西村周治さんに、自身の取り組みや廃屋の魅力について聞いてみた。

住む人がいないまま、荒れ果ててしまった家屋=廃屋を購入し、リノベーションして新たな命を吹き込むユニークな取り組みを行う人物がいる。それが、自身を“廃屋ジャンキー”と称する西村周治さん。固定の住居を持たず、神戸市内の古い物件を購入してDIYで改修しつつ、引っ越しを繰り返しながら暮らしているそう。「西村組」という解体&建築集団の親方を務める彼は、今や買い手の付かない住居や不動産の駆け込み寺のような存在で、「これどうすんねん」という物件があれば、「西村さんに連絡したらええやん」という風潮さえあるんだとか。灘区にある蔦に覆われたアトリエ兼住居や、垂水区にある海の見えるレンタルスペースなど、手がけた物件は数知れず。最近は長田や梅元の廃屋群を買い取って村づくり(!?)に奮闘中と、なんとも興味深いウワサもあって……。今回は、そんな西村さんの人間性や廃屋の魅力に迫ります。ちょっとでも気になった方は、ぜひ読んでみてください!

廃屋をDIYして住む生活を始めたのは、シンプルにお金がなかったから。僕以外に手を付ける人もいないし、やらなあかんなと。

西村さんのこれまでの経歴を教えてください。

神戸芸術工科大学の建築学科を卒業して、しばらく定職につかずアルバイトで生計を立てていました。その時の月収が7万円くらい、住んでいたマンションの家賃が5万円くらいだったので払えなくなって、すぐに追い出されてしまったんです。なので家賃1万5,000円の賃貸を借りて、自分で改装して友人3人とシェアハウスをしていました。DIYにハマったのはその頃ですね。みんなで楽しく暮らしていたんですが、ある時そこに新築マンションが建つことになり、泣く泣く引っ越さざるを得ない状況になってしまって。そんな風になるなら、いっそのこと家を買って好きなように改装して住もうと。自分で安い家を探して購入し、同じようにDIYして住んでいました。するとその家に住みたいという人が現れて、そこを貸してしまい住むところがなくなったので、また家を買ってDIYをして……。それを何度も繰り返しているうちに、現在のヤドカリのような生活がスタンダードになりました。

活動の原点は、その頃だったんですね。

そうですね。廃屋を修繕して自分で住むという生活を始めたのは、シンプルにお金がなかったから。生きるために家を直していました。

その時期から解体や修繕をご自身の仕事にされていたんですか?

最初はそんなことなかったです。リノベーション物件を扱う不動産会社やラーメン屋で働いたり、アルバイトでいろんな職を転々としていました。結局その不動産業界での経験を生かして、廃屋を改装する仕事を始めたんです。廃屋が大好き!みたいな熱い気持ちより、誰も手を付けないし、やらなあかんからやろかという感じです。

親方を務めている「西村組」は、どういった経緯で結成されたんですか?

コロナで暇になった人たちを集めただけですよ。初期の頃はドイツ人とイギリス人がいて、絵を描きながらこんな感じやで〜と指示を出していました。だけど出来上がりが想像と全然違っていたり……、伝えるのってやっぱり難しいですね(笑)。以前から解体の仕事はしていましたが、「西村組」として正式に始動したのはコロナになってからです。今は20人から30人いますね。

作業中の西村組の皆さんをパシャリ。それぞれ自分の作業に勤しんでいます。

買い取る廃屋の条件、みたいなものはありますか?

アクセスがあまり良くない、人気のないエリアをあえて選んでいます。急斜面に民家がぎっしり建っている長田区の丸山地区とか、道が狭くて車が入れないような場所ですね。解体業者を呼ぶのも大変だから、住人がいなくても手入れされずにそのまま残っている家屋が多いんです。不動産会社からダイレクトに連絡をもらうこともよくあって、他に買い手がいなくても、この人やったらどうにかしてくれるんじゃないかと思われているみたいです。

道幅が狭く、リヤカーを引くのがやっと。業者もなかなか踏み込めないエリアです。

なるほど。不動産会社から直接連絡が来るんですね。

廃屋だから安いですし、タダであげるよという物件もあって。一軒買うと淡路と長田の廃屋がセットでついてきたりとか、もう訳がわからないですよ(笑)。もちろん全部朽ちているから、かなりの手直しが必要だけど。意図せず手つかずの案件がどんどん増えていって、大変なことになっています。

家屋を手入れせずに放置していると、どんどん自然に侵食されていく。その風景や力強さに惹かれます。
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Profile

西村 周治

1982年、京都府生まれ。一級建築士・宅地建物取引主任士。神戸芸術工科大学建築学科を卒業後、ボロボロの長屋を改装して住み始めたことを機にDIYに目覚め、神戸市内の廃屋を改修しつつ引っ越しを繰り返す。2020年に有機的な建築集団「西村組」を結成、“無理をしない”を合言葉に日々廃屋と向き合う。

西村組
https://nishimura-gumi.net/home/

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