「車も、カジュアルに着くずす感じ」。古着屋から中古車屋に転身した三上直記さんが提案する、“チープアップ”な車の楽しみ方。
気軽に楽しめる、レギュラー古着みたいな車。
中古車販売を始めた当初から、“チープアップ”のようなスタイルだったんですか?
テイストはもうちょっと普通っぽかったですね。おしゃれっ気を意識してる車屋ではあったんですけど、駆け出しの頃はそんなに個性もガンガン出せる感じじゃなかったんで。ステッカー貼ったりグリルバッジつけたりとか、そのぐらいです。今のように、ファッションと車をリンクして考えてくれる人もあまりいなかったですし、もう少し純粋な車好きがターゲットでした。車乗りの中でも、ちょっと個性を出したい人みたいな。
今の客層は、車好きだけでなくもっと幅広い感じですか?
そうですね、アパレルとか美容関係とか、お笑いの人もいます。でも、あんまり偏りはないですね。2015年頃からファッション誌『カジカジ』で、ファッションと車をリンクさせた連載をさせてもらうことになって、その影響で客層は一気に広がりました。“チープアップ”を名称として使い始めたのも、その頃だと思います。
ラフに車をドレスダウンして楽しむスタイルが、ファッション雑誌の読者層に支持されたんですね。
今までの車の世界って、「安くておしゃれ」なものがなかったんですよ。古着みたいな文化がなかった。そんなローン組んで必死に買うって感じじゃなくて、もうちょっと気軽に、レギュラー古着を買う感じで車に乗れたらいいなあと思ってたんです。
そう言われれば、安くておしゃれな車って意外とない気がします。
車自体も1990年後半から2000年代前半って、状態がいいものが手頃な値段で山ほどあるんですよ。それが、中古車市場ではただの型落ち扱いされてるのがもったいなくて、もっとみんな乗ったらいいのにってずっと思ってたんです。
ああ、ヴィンテージカーまでいかない中古車たちが、たくさんあるわけですね。
もう僕からしたら宝の山。外も中もきれいでまだまだ走れる欧州車が、軽トラより安く手に入るって素敵じゃないですか。そういう車を人に勧めたくてしょうがなくて、その架け橋がチープアップというスタイルにうまくハマったのかもしれないですね。
いわゆる車好きじゃない層にも刺さったと。
新車のデザインはこんな(つり目)のばっかりで、乗りたい車がないって人が多かったと思います。カスタムも車高下げてエアロパーツ履かせたり、ギラギラした感じでしょ。それが僕自身も嫌で、そこと真逆にいきたいなというのもありましたね。
三上さん的に、ファッションと車の選び方は、近い感じですか?
古着と中古車は、選ぶ感覚としては近いと思います。でも車はかっこいいだけで済まないので、現実的に困らない着地点に落とし込むっていう違いはありますね。服はかっこよくて似合ってればいいですけど、車はかっこよくてもリッター2㎞しか走らないとか、しょっちゅう故障してばっかりとか、乗れたもんじゃないでしょ。
ファッションのおしゃれ感と、車としての機能性、そのバランスが大事なわけですね。
だからその辺りは、お客さんに合わせて提案します。週末に自分と車の時間をじっくり楽しみたい人には、メンテに多少手間はかかるけど個性のある面白い車を、普段使いする人なら、個性はありつつ快適性や信頼性のある車を勧めたり。服とか音楽の好みも聞きながら、オーナーさんの要望や乗り方に合わせて提案してますね。
その人に合わせて、車をスタイリングするんですね。てことは、車のこと、そんなに詳しくなくても大丈夫ですか?
全然、大丈夫です。こんな感じで乗りたいっていうのを話してもらったら、一人ひとりに似合うスタイルを作っていくので。どんどん相談してください。
三上直記 naoki mikami
滋賀県出身。服飾の専門学校を卒業後、古着を扱うセレクトショップを経て、自身の古着屋をオープン。幼い頃から無条件に好きだった車を商売にするべく、資金を貯めて27歳で「ゼロカートラブル」を開業。元古着屋という経験もあり、レギュラー古着感覚で手ごろに自分好みの車を楽しむスタイルを提案。あえて鈍臭いカスタムでダサかっこよく仕上げる“チープアップ”を標榜し、注目を集める。現在、主食の代わりに二八蕎麦・十割蕎麦を食べる「蕎麦ダイエット」で8㎏の減量を達成。
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