手ぬぐいをきっかけに、僕がハマった初期衝動を共有したい。知るほどにディグりたくなる<手ぬぐいChill>の魅力とは。

昨今のアウトドアブームやSDGsの風潮もあり、注目度が高まりつつある手ぬぐい。今回紹介するのは、大阪・柏原の伝統産業として伝わる注染の技法を用いた手ぬぐいブランド<手ぬぐいChill>の三上翔さん。“手ぬぐい”と聞くと、和柄やナチュラルなテキスタイルを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、<手ぬぐいChill>には音楽やアートが好きな人なら必ずほしくなるイケてるデザインがたくさん!人気のペインターを起用したり飲食店や音楽アーティストとのコラボ手ぬぐいを作ったり、今の気分にぴったりなグッドルッキンな手ぬぐいが揃っているんです。だけど単におしゃれなだけじゃなく、カルチャー色の強いギミックがさりげなく盛り込まれているのも魅力。知るほどに味わい深い<手ぬぐいChill>ってどんなブランド?ぜひ読んでみてください!

最初は、注染手ぬぐいの世界に入ることに乗り気じゃなかった。今では柏原市の伝統産業を次の世代に繋げていけたらって思っています。

そもそも「注染」ってどんなものなんでしょうか?

明治時代から受け継がれる手ぬぐいの染め技法です。絵柄を切り抜いた型紙を生地にあて、デザインに沿って防染糊を付けて、数十枚重ねた上から染料を注いで染めていく昔ながらの手法。大阪の堺と柏原で発展してきた地場産業の1つです。

こちらが和紙を柿渋でコーティングした伝統的な渋紙。これだけ作るのでもかなり時間がかかりそう。

三上さんが注染手ぬぐいに着目したきっかけは?

柏原に実家があって、注染に使う防染糊を作る町工場を経営しているんです。小学校の課外授業で注染の工場見学にも行っていたので、地元に昔から伝わる産業というのは認識していました。高校生の頃は長期休みにアルバイトもしたけど、正直家業を継ぐ気はあんまりなかったです。

それはどうしてですか?

すごく狭い空間で作業するし、海藻を粉にしたものを使うから匂いもキツくてベタベタする。機械の音もうるさいし、夏場は粉砕された粉が汗で付着して、身体中ドロドロになっちゃうんです。そんなこともあり、一生の仕事にはしたくないなと思っていました。だけど、大学を卒業してフラフラしている時に母親の体調が悪くなってしまって。仕方なく手伝うことにしたんです。

最初は渋々だったんですね。

そうなんです。当時は、自分から外の世界に遊びに行かないと友達が作れない環境だったので、仕事終わりによく夜の街に繰り出して遊んでいました。音楽が好きやったので、クラブに行ったりとか。二十代の頃は仕事よりも遊びに全力投球って感じでした。

昼間は柏原でお仕事をして、夜は市内で遊ぶ生活を続けていたと。そこから手ぬぐいのブランドを立ち上げたり実店舗を構えたり、モチベーションが上がるような出来事があったんですか?

そのまま三十代になって、色んな状況が重なって防染糊が手に入りづらい時期があったんです。防染糊は染料と違って最終的に流してしまうものやから、できるだけ安くせぇっていう風潮があって。それまでは軽視されがちだったんですが、その時期を経て世間の目も僕の考え方も変わったんです。糊は染料を流すキワに使うもので、ケチってしまうと仕上がりの美しさが全然違ってくる。自分は伝統産業に深く関わっていて、注染手ぬぐいを作るうえで大切な役割を担っているんやなと。伝統を継承していくことの大切さを感じました。

というのも、それが堺発の手ぬぐいブランド<にじゆら>さんが出てきた時期やったんです。僕が10〜20代の頃は染め屋さんがどんどん減っていって、一時はもう注染はアカンと思ってたけど、デザインさえ良ければ若い人にも受け入れられるんやと。次世代にバトンを繋いでいくには、防染糊もきちんと残していかないといけないなと思いました。今子どもがいるんですけど、その子が将来大人になった時に、自分もやりたいと思ってもらえる状態を作っておくのも大事やなと感じる部分もあって。そんな時、柏原市が空き店舗活用事業という取り組みをしていることを知って、注染手ぬぐいを盛り上げるため2016年に実店舗を構えました。

それ以前に<手ぬぐいChill>はあったんですか?

いえ、店舗を構えたのが先でした。お店では堺の手ぬぐいをメインで扱っていて、柏原の手ぬぐいと言えるものがなかったので、クラウドファンディングでお金を集めて2017年に<手ぬぐいChill>を立ち上げました。

手ぬぐいを使っている若い人って多いですよね。何がきっかけなんでしょうね。

なんでしょうね。<Chill>がきっかけですかね。

(笑)

そんな風に言えるようになるのが理想です(笑)。アパレルブランドがSSシーズンのアイテムとして作ることも多くなってきて、染めとプリントだと半々くらいかな。注染って最小のロットが100枚からやから、ふと思い立って作るには少しハードルが高いんです。だけどここ数年、若い子も興味を持ってくれることが多くなって嬉しいですね。

フェスなんかでも見かける機会が増えましたね。

日除けや汗拭きタオル代わりに使えるので、フェス需要はかなり高いです。あとはストリートでスポーツをしている人ですかね。スケーターやジョガーの人も使ってくれはります。あとは山小屋のお土産として結構売ってるかな。

もともと手ぬぐいって丁寧な暮らしをしているナチュラル系の方が使うイメージがありました。最近はストリートカルチャーとすごく近いものなんだって思います。

スタートしたての頃は、<にじゆら>さんみたいなナチュラルな柄の方が絶対商売として成り立つってわかってたけど、まぁ一緒のことをしても意味がないのかなって。どうせなら自分がイケてると思える人のデザインで、ストリートカルチャーが好きな人に向けてやりたいなと。手ぬぐいを使う人の裾野を広げていけたらなって思ったんです。<Chill>は色がパキッと出るように染めてるものが多いから、そのぶん長く使ってもらえるし、少しずつ色落ちしていく過程も楽しめるんですよ。個人的にはデニムを育てるような感覚で使ってもらえたらなと。最近は日常使いする人も増えて嬉しい限りです。

銭湯好きはどうですか?

銭湯は案外ハマらないんすよ。特に大阪って10円とかで貸しタオルがあるから、別に手ぬぐいなんかいらんっていう人が多いんです。京都の『梅湯』や『ゆとなみ社』は「銭湯を守ろう」っていうスタンスやから、手ぬぐいみたいな伝統的なカルチャーがウケるけど、大阪は娯楽で行ってる人も多いからあんまり売れないですね。京都の人って頭で考えて動いてるけど、大阪の人はバイブスで生きてる人がほとんどやから(笑)。だから大阪がおもしろいのもあるんですけどね。それはよその町の銭湯に行くようになって感じました。

なんだか興味深いですね。大阪人と京都人の違いを表しているような気がします。

知ってる人ならわかるギミックを盛り込むのが<手ぬぐいChill>のこだわり。架空のお店を考えて、ノベルティ手ぬぐいを作ることも。
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Profile

三上 翔

1982年、大阪府柏原市出身。祖父の代より、地元に古くから伝わる染色技法・注染に使う防染糊の町工場を経営しており、「この伝統をもっと広めたい」と2016年に手ぬぐいブランド<手ぬぐいChill>をスタート。柏原の店舗は不定期で営業しており、最近はイベント出店を中心に活動中。

Shop Data

手ぬぐいChill

住所:大阪府柏原市古町2-1-21
営業時間:不定期(SNSで要確認)
電話:090-3722-1498

https://chill-tenugui.net/
https://chilltenugui.thebase.in/

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