Interview & Writing
前出 明弘
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小林 俊史

カウンターから身を乗り出して見たくなるリズミカルな調理、ヒゲをたくわえてアクセもじゃらじゃらさせたクールな出立ち、心地よい音楽と程よい緊張感から生まれるGood Vibesな空間。そして何より、料理がおいしい。割烹ストリート1丁目1番地として人気を博してきた『casual KAPPOU iida』が、誕生から5年を経て新たなステージに突入するってことで、代表の飯田恭央さんにいろいろお話を聞いてきました。生まれ育った豊岡でのことからバイト代を握りしめて大阪に出てきたこと、独立のこと、スタッフのこと、新しいお店のこと…、飯田さんのバックボーンや想いを垣間見ることで、『casual KAPPOU iida』という存在を改めて知れると思います。街には音楽やファッションなどのいろんなカルチャーが入り混じり、それぞれが発光しながら醸成していってるけど、『casual KAPPOU iida』もそうなんじゃないかと。飯田さんから生まれ、スタッフやお客さん、たくさんの人たちと共に育まれてきたこの場所は、ストリートからカルチャーになる!?そんな気がしてならないほど、これからさらに色濃く発光していきそうです。

高校の卒業式の次の日に大阪に出て、1週間ほど遊んだら帰るつもりだった。でも、結局帰らなかった。

26歳で『casual KAPPOU iida』を始めたわけですが、それまでの昔話も聞かせてもらえればと。飯田さんは兵庫県の豊岡市出身だそうで、高校時代はボクシングもしてたんですよね?

豊岡市の竹野の方で、海がめちゃきれいなんですよ。ボクシングはしてましたけど、ジムに行ったり行かなかったりくらいの感じで、そんなにガチじゃないです。

そもそも、なぜボクシングを?

単純に腕っぷしが強くなりたかったんです(笑)。まぁ、ちょっと元気な高校生だったかな。学校には4限目に行って、学食でごはん食べて5限目には帰っちゃうみたいな。いつも補習を受けてるようなタイプでしたね。

良く言えば、元気で力が有り余ってるタイプだったと(笑)。その頃って、将来の夢とかあったんですか?例えば、料理人になりたいとか。

特になかったですね。ただただ毎日遊んでるのが楽しかったですし。でも、ごはんを作るのは好きでした。母親が旅館で働いてたので、中学3年の頃から夏休みとか冬休みには調理場に入らせてもらい、盛り付けの手伝いをしてたんです。高校生の時は飲食店でバイトしてたし、両親が共働きだったんでおじいちゃんのごはんを作るのは僕の役目でしたね。

意識はしてないけど、ごはんを作るってことがめちゃくちゃ身近なアクションだったんですね。おじいちゃんにはどんなものを作ってたんですか?

たいしたもんじゃないですよ。作り置きのものを温めたり、昼メシにインスタントラーメン作ったりとか、それくらいのレベルでしたけどね。でも、やらされてる感はなかったし、好きでやってたかな。

気持ちがこもってることが大事ですもんね。おじいちゃんも孫に毎日作ってもらえるのは、うれしかったと思います。大阪にはいつ頃出てきたんですか?

高校の卒業式の次の日ですね。バイト代の7万円を握りしめて、大阪に出てきたんです。地元の先輩が桃谷に住んでたんで、1週間ほどお邪魔して大阪で遊ぼうかなと思ってました。でも、結局そのまま転がり込んだんですけどね。

1週間の予定だったのに、帰りたくなくなった?

楽しかったんでしょうね。兄や姉はずっと地元にいたから、僕はいつか都会に出たいなと思ってたんです。都会への憧れが漠然とあっただけで、何かしたいわけでもないし、就職や進学もしない状況でしたからね。まぁ、どうにかなるかなと。とりあえず大阪に出てから考えようって感じでした。

両親には何て伝えたんですか?

「豊岡には帰らん」って言いました。そこから引っ越しの準備で一度戻り、荷物をまとめて先輩の家にルームシェアさせてもらったんです。両親も納得してくれましたが、「都会で生活するなら自立してやってや!」と言われてたんで、まずは食っていくためにもバイトを始めましたね。

バイトは飲食店ですか?

『鳥貴族』ですね。先輩に初めて連れて行ってもらったんですけど、地元には朝まで営業してる店なんてないし、コスパもいいし、若造にとっては衝撃やったんですよ。それで、ここでバイトしよって思いましたね。

大阪暮らしは『鳥貴族』と共にスタートしたんですね。その後は?

いろんな飲食店とかお金ない時はごみ収集のバイトとかもしてましたね。それで20歳くらいの時にもつ鍋の『蟻月』で働き始めて、22歳の頃から3年間は野菜のセレクトショップで働いてました。

野菜のセレクトショップですか?

こだわりの野菜を作ってる農家さんから直接仕入れてるお店ですね。野菜の目利きとか、めちゃ勉強になったかなと。その後は、豊岡の水産会社が経営してる和食屋さんで働いてました。ケンカして1年でクビになっちゃいましたけど(笑)

ケンカで?

地元の会社がやってる店で、そこの職人さんにはホントいろいろ教えてもらってたんですよ。魚の捌き方とか出汁の取り方とか、特に修業と言えることをしてきてなかった自分にとっては、料理の入門編を教わったような店でした。でもね、オーナーさんが料理のことをめちゃくちゃ口出してくるんです。それで、「お前は言うだけで、料理全然できへんやんけ!」って言うたら、クビになりました(笑)

ハッキリ言っちゃったんですね(笑)。それで予期せずに独立することになったと。

自分で店をやろうなんて考えてなかったですけど、「辞めたるわ!」と啖呵をきった手前、もうやるしかないなと。でも、その時は貯金が2万円しかなかったんです。それで、曽根崎にある日本政策金融公庫に行ったんですけど、さすがに貯金2万円では融資してもらえずで(笑)。担当者さんからは「何とか貯金額を100万円にできませんか?」と言われたので、両親に頭下げました。そのおかげで貯金額が102万円になり、無事に融資してもらうことができたんです。

担当者さんも最初はビックリしたでしょうね。「この子、大丈夫かな?」って。

そうやと思います(笑)。でも、25歳やったので比較的融資してもらいやすかったみたいで、何とか助かりましたね。そして、その資金を元に『casual KAPPOU iida』を2017年3月3日にオープン。僕が26歳の時でした。

僕は、おいしいは懐かしいに直結すると思ってる。

クビになってから急展開でオープンしたわけですが、店を始めることに不安はなかったんですか?

特に不安はなかったし、カッコイイ店にする自信はありました。まぁ、全く根拠のない話ですが。不器用だけど人と喋ることが好きだったから飲食店で働いてたのもあるし、接客面においてもお客さんに喜んでもらえるんじゃないかとは思ってましたね。今考えると荒削りだったし、調子に乗ってたんやろなーって。

根拠のない自信を持ってないと独立なんてできませんからね。ましてや26歳の若さだし。急展開の中、お店の構想はどんなことを考えてたんですか?

日本人なんで、和食にするのは決めてました。実家で作ってるお米も使うつもりだったんですが、オープンの少し前に父親がガンになったと連絡があったんです。おかげさまで今は回復して元気になってますが、「とりあえずお米をいっぱい売れば少しは足しになるだろうし、生きる気力にもなるかな」と思ってましたね。

あの塩むすびは名物の一つですもんね。元気になって良かったです!和食にするのは決めてたそうですが、その中でも割烹というスタイルにしたのは?

前職の店の師匠に割烹を教えてもらってたんです。師匠からは「お客さんが食べたいものを当たり前のように出すのが割烹だ」と教わっていました。コース料理だけの店なら割烹とは名乗れないし、例えばお客さんが昼間に刺身を食べたから、夜は肉が食べたいと言った時に「はい、ありますよ!」と答えられる。「ちょっと多いから、持ち帰り用に包んで」と言われても対応できる。それが割烹だと、僕は教わってきたんです。

好みに合わせて、お客さんに寄り添うってことですね。

カジュアルと名付けたのは、価格帯もそうだし、僕らのこのラフなスタイルもあるから。10年前くらいからくずし割烹というのもあったし、カジュアルな方が僕らしいかなと思って。

店が持つスタイルとか空気感とか、飯田さんらしさが出てるなって思います。それに、やっぱりごはんがうまい!

5年かけて『casual KAPPOU iida』としての味になったなと。お食事は毎日のものだし、そこが一番大切な部分。今日食べても次の日にまた食べたくなる、そんな気持ちになってもらえるように仕込みも調理もしてますね。僕は、おいしいは懐かしいに直結すると思ってるんです。僕はキャビアを食べても「懐かしい!」って思わないし、フォアグラを食べても「また明日も!」って思わないから、店で出すことはありません。例えば、「めっちゃうまいウニを用意して!」と言われても、「それなら、ウニをしっかり味わえる店に行った方がいいですよ」って普通に伝えますからね。それよりも、白ごはんとなめこの味噌汁、わかめの酢の物、鯖の塩焼きとかをバランス良く食べる方がいい。

「おいしい=懐かしい」って、確かにそうかも。食の好みは人それぞれある中で、毎日食べるものや毎日食べたいものは、そこが原点な気がします。

いっぱい食べても胃もたれしないし、化学調味料も使ってない。冷たいものは冷たく、温かいものは温かく、当たり前のことを手間暇かけて作る。お客さんに「おいしい!」と思ってもらうことが全てだし、それだけを突き詰めて5年間やってきましたね。

シンプル・イズ・ベスト!その普遍的なことを突き詰めるのはめっちゃ大変だけど、だからこそ『casual KAPPOU iida』の味になっていったんですね。この5年間でいろんな経験をしたと思いますけど、店を構えて良かったと実感することやツライこともいっぱいあったんじゃないですか?

挙げればキリがないですね。正直、オープンして1年間のことはあんまり覚えてないし…。いろいろ言われても自分のスタイルは曲げずにやってきたから、今があるのかなと。30歳という節目で独立する人は多いですけど、僕は偶然にも26歳で店を構えられた。その4年間のアドバンテージがあるのは、ちょっとラッキーやなと思ってます。後は、両親に少しだけですけどお小遣いを渡せるようになったことかな。

確かに4年という歳月の差はデカイですよね、特に若い時は。しかも、コロナ禍という大変なことも経験しました。当時、他の飲食店はテイクアウトのお弁当などを提供してましたが、飯田さんはそうではなく、お店で食材を販売されてましたよね?それも飯田さんらしいアプローチだなと思ったんですが、その意図って?

単純に仕入れ先の八百屋さんが困ってたので、とりあえず買えるやつを全部買ったんです。その八百屋さんも農家さんが困ってるから仕入れたけど、飲食店が買わないから野菜がめちゃくちゃ山積みになってて…。「買ってほしい」なんて一言も言われてないけど、カッコつけで人にモテたい性格が出ちゃって、いっぱい買いました。それが、マーケットを始めたキッカケですね。

自分の性格のせいにしてますけど、大変な状況はお互い様だからなかなかできないことですよ。

めちゃくちゃシャイなのに目立ちたがりなんでね、つい(笑)。まぁ、とりあえず買ったものの、「さぁ、どうするか」って感じでした。お弁当にしなかったのは、100%の状態で作っても、10分後には95%、1時間後には75%…という感じでおいしさがどんどん下がってしまうから。それなら下処理して80%まで仕上げた状態でレシピと共に提供すれば、お客さんが自宅で100%にすることができるなと。ステイホームと叫ばれてた時期だし、自宅で料理も楽しめるうえ、「やっぱiidaは違うな」と感じてもらえると思ったんです。

お客さんとしても下処理された食材を選ぶ楽しさ、作る楽しさ、そして味わう楽しさも得られる。あのマーケットはスゴイなと思いました。他にも朝食やうどん、コロッケをしてる時もありましたね。

今、僕らができることをしてきただけですよ。僕自身、何事も「何で?何で?」って気になるタイプで、知りたがり。「あれはどんな原価率かな?」「あのオペレーションはどうなってんの?」って感じで、気になることは実践して調べたくなる。コロナの時期にうどんを始めたのも、いろいろ調べて「器があればできるやん!じゃ、やろか」みたいな。できることをする、ただそれだけですよ。それに、自分で店を構えてから気持ちの持ち方も変えるようにしたんです。

どのように変えたんですか?

正直、これまでは働いてても100%の楽しさはなかったんです。もちろん、楽しい局面はありましたけど、そうじゃないこともたくさんあった。だからこそ、自分の店を構えてからは、何があっても楽しんでやると決めたんですよ。どんなことがあっても顔には出さず、楽しんでニコニコする。「飯田、悩みあるん?」って聞かれるくらい(笑)。そう決めたから、コロナ禍の時も自分にできることを楽しみながらやってただけなんです。

もし誰かに無理と言われても、「まだ実現してないだけです!」って言えばいい。

新しいお店『casual KAPPOU iida 2』の話を聞く前に、これからを担うであろう若手のメンズスタッフのことも伺えればと。

飯田:石田翔大は2021年の7月から。山内稜は2022年の3月からで、実は明日が初出勤の日なんですよ。

そうなんですね、今日は会えなくて残念。では、翔大さんにいろいろ聞きますね。どうしてこの店で働きたいと思ったんですか?

翔大:飯田さんが買い物されている堀江のショップ『THE GROUND depot.』に僕も通ってて、よく話を聞いてたんです。学生時代に居酒屋でバイトしてたり、ちょっと自炊する程度なんで料理は全然できなかったんですが、行ってみたいお店だなと思ってました。結局、一回も行けてなかったんですが…、インスタでスタッフを募集されてたので速攻でDMしたんです。すると、次の日に当時バイトしてた難波の『Brooklyn Roasting Company』に、いきなり飯田さん現れて…。しかも、キャップ被ってサングラスして、マスクもつけて変装してるっぽい感じやったんですが、すぐ分かりました(笑)

どんな子か気になって見に行ったんですね。

飯田:インスタ見てだいたいは分かったけど、どんな感じで働いてるんかなと。

翔大:めちゃビックリしましたけど、すぐ走り寄って「飯田さんですよね?DMさせていただいた石田です!」って伝えました。

スタッフの石田翔大さん。難波の『Brooklyn Roasting Company』ではバリスタも務めていた。

飯田さんから見た印象はどうでした?

飯田:『THE GROUND depot.』で服を買ってるのは聞いてたし、オシャレでアクセもつけて、ちょっと自分に過信してるヤツやなと。調子乗ってて、うわついとるなと。でも、いい目をしてるとは思ったかな。

だそうですよ、翔大さん!

翔大:ありがとうございます!!それで数日後に面接に行ったんですが、お店に入って10秒後くらいに「君にしようと思ってる」と言っていただけて。そこから働かせてもらうようになりました。

実際に働き出して感じることは?

翔大:考えや行動の甘さを実感しますし、厳しく教えていただいてるのも自分のためを思ってだと感じてます。料理のことだけではなく、人生において大切なことを教えてもらってるなと。例えば、先輩や目上の方との接し方、言葉の使い方など、すごく細かい部分までですね。他の店では教えてもらってなかったことばかりで、毎日が勉強の日々です。

飯田:声が小さいねん(笑)

だそうですよ、翔大さん!お店では基本的には接客担当ですが、料理の手伝いなどもしてるんですか?

翔大:いえ、お客様に提供するものはまだです。でも、魚を捌く練習はさせてもらってます。

飯田:鯵とか僕よりも捌くのが上手くなってますからね。翔大のおかげで、鯵フライもメニューの仲間入りですよ。

翔大の鯵フライ!一つ一つ階段を上っていく感じで、できることが増えていくといいですね。この先どうなりたいとか、翔大さん自身の目標ってあるんですか?

翔大:最終的には自分の店を持ちたいと思ってますが、まだまだそんなことも考えられないくらいのレベルなんで、まずは目の前のお客様と向き合い続けること。そこを大事にしたいと思ってます。

ちゃんと目標を見据えて、日々を積み重ねていく。自身の現在地も分かりつつだから、しっかり前に進んでると思いますよ!ちなみに、稜さんはどんな方なんですか?

飯田:正直、まだ分かんないです。でも、iidaで働きたくて後先考えずに福岡から出てきたようなヤツなんで、まぁ察してください(笑)。一緒に働いてみないと何とも言えないですけど、素直なヤツだとは思いますよ。衝突して離れるか、絆が深まるか、それはこれからのお楽しみです。翔大と稜もどんどんぶつかっていいし、取っ組み合いのケンカをしてもいい。その時は僕が両方をシバきます(笑)

これからもっと、いい感じのグルーヴが生まれそうですね(笑)

飯田:僕も適材適所を考えて、それぞれが成長できる場所にしたいと思ってます。僕にしかできないこともあるし、もちろん翔大や稜にしかできないこともあるのでね。特に翔大の場合、今はツライこともあるかもしれんけど、2〜3年頑張った後にiidaの旧店舗をまだ契約してたら、任してもいいと思ってるんで。個人事業主としてコーヒー屋さんしたいならやってもいいし、可能性だけはいっぱいあるからさ。

翔大:はい、ありがとうございます!!

飯田:だから、声が小さいねん(笑)。もし誰かに無理と言われても、「まだ実現してないだけです!」って言えばいい。僕も調子に乗ってると言われたことあるけど、どうせいつか乗れなくなるんやったら、乗れる時に乗っておかないと。若い時に調子に乗りつつも、しっかり目標を持って進んでる方が、重厚感のある大人になれるんちゃうかなと。これはあくまで僕の主観ではあるし、翔大は自分の考えで行動すればいいけどね。まぁ、気合いやで気合い!

翔大:はい!!

飯田:おぉ、いい声やん!

程よい緊張感は保ちたい。お客さん側もお店側もお互いをリスペクトし、そのうえで空間や時間を共有する。そして、若い子がデートで使った時に、ちょっと胸を張れるような店にしたいなと。

ではでは、新しいお店『casual KAPPOU iida 2』について、いろいろ聞かせてください!お店の構想はいつ頃から考えてたんですか?

2店舗目を出したい、事業を拡大したいというよりも、自分の仕事の成長を考えた時に必要な場所だと思ったんです。30歳を過ぎて、このままだと何もない大人になってしまうんじゃないかなと。現状維持にヤバさを感じたのが要因ですね。そこからどんな店にすべきかを試行錯誤しながら考え、ようやくオープンを迎えられました。

お店のスタイルとしては?

これまでと同じようなアラカルトのスタイルですね。家に遊びに来てもらうような感覚でお客さんを迎えたいなと。僕があえて「いらっしゃいませ」と言わないようにしてるのも、そのためです。「こんばんは」とか「おいっすー!」みたいな感じで。もちろん、スタッフは「いらっしゃいませ」と言いますが、お客さんとの絶妙な距離感は変わらず大切にしたいと思ってます。

私生活の延長にあるような場所ですよね。料理ももちろんそうだし。

ただ、程よい緊張感は保ちたいと思ってるんです。「お金を払ってるから好きにさせてくれ」というのは違う気がしていて、お客さん側もお店側もお互いをリスペクトし、そのうえで空間や時間を共有する。音楽にもこだわるし、常に清潔感を持ち、スタッフの身だしなみもカジュアルだけどピリッとしてる。それが僕らのお店『casual KAPPOU iida 2』。若い子がデートで使った時に、ちょっと胸を張れるような店にしたいと思ってます。

飯田さん自身も若くして独立したからかもですが、目線は高めつつも、常に若い子たちを見てる気がします。

昔から世話好きというか、世話焼きなんですよね。例えば「100万円出すから貸切にして」と言われても首を縦には振らんけど、若い子が「すいません予算これくらいなんですけどいけますか?」と言われたら、「いけるでー!でもウィンナーとか入るかもよ」みたいな。行儀のいい若い子には、いろいろしたくなるんです(笑)

街のいい兄貴的な存在ですね!そんな飯田さんがいて、翔大さんやリョウさんたちも働いてる空間は、やっぱカッコイイなと。さらに内装や器、もてなしの部分にもこだわりが詰まってますし。

内装は三好工務店の三好君にお願いしました。僕のイメージを共有しながら具現化してくれたので、さすがやなと。天井とかもめちゃくちゃ大変やったみたいだし、キッチンのステンレス部分にはバイブレーション加工で錫のような重厚感も出してくれました。『casual KAPPOU iida 2』は旧店舗の同じビルなんで、僕も暇を見つけては確認しに来てたから、めちゃやりにくかったかもしれませんけどね(笑)

三好工務店の三好さんがデザインした天井。重なり合う層と縁のラインが美しくて、見惚れてしまいます。

天井とかめちゃシブいですよね。まぁ、同じビルだと気になって当然だと思いますよ。

でも、同じビルだからできることもあったんです。仕込みの途中で三好君や職人さんのごはんを作ったりもしてました。「ちょっと丼作ったから食べてー」って。リスペクトもしてるし、ちょっとした心づかいで僕の想いも伝わるのかなと。田舎的な発想かもしれませんけどね(笑)

言葉だけじゃなくて、行動が伴ってるからこそ、想いって伝わるものだと思います!

後は三好君のアイデアで、空間に対してカウンターの軸をズラしてます。お店に入った瞬間に空間の広がりが生まれ、席数もゆったり16席にしました。また、器類は『NOTA SHOP』でオリジナルを作りましたし、お客さんのコートにかけるカバーは『odd numbers』でヴィンテージファブリックを揃えました。

滋賀県の人気ショップ『NOTA SHOP』にオーダーしたオリジナルの器は、シンプルながらも風合いが素敵です。南船場の『odd numbers』で揃えたヴィンテージファブリックのコートカバー。コートをかけてもらう行為にワクワクすることは普段はないけど、ここなら別。

隅々にこだわりがいっぱいですね。

僕はもちろん、スタッフも成長し、お客さんにも楽しんでもらえるお店になったと思ってます。2022年4月1日オープンなので、ぜひ皆さんのお越しをお待ちしてます!!

「iidaはいつ行っても気持ちいいな。スタッフみんなキラキラしててチャキチャキしてるし、店もピカピカやん。人に対して平等で優しいし、手話もできるんや!」みたいなことを目指してる。

では最後に、飯田さんのこれからの目標だったり、『casual KAPPOU iida』としての目指す姿を教えてもらえれば!

これはずっと考えてることなんですが、体のどこかが不自由な人でも働けるようなお店にしたいですね。「耳が聞こえないから飲食店では働けないとか、誰が決めたん?」って思ってるので。例えば、スタッフ全員がその子と手話で会話して、通じ合ってるとか。日本ではそんなお店を見たことないけど、ヨーロッパとかには普通にありますからね。さっき翔大に伝えた言葉のように、今はまだ実現してないだけだし、これは自分が実現していきたいと思ってます。

素敵なことだと思います!飯田さん自身がそう思うキッカケとかが何かあったんですか?

キッカケがあるわけじゃないですし、知り合いに障害を持った方がいるわけでもないです。ただ、iidaとして大切にしてる社訓があるので、僕らはそれを体現したいと思っていて。

社訓ですか?それも教えてください!

「人に感謝。弱い人に優しく。人に元気を与える」です。ありがとうございますの気持ちは常に忘れてはいけないし、おじいちゃんやおばあちゃん、子ども、障害を持った方々には優しくありたい。ほんの少しの時間でも僕らと会うことで、元気になってもらいたい。これを当たり前にできる僕らでありたいと思ってるんです。

めちゃ素晴らしいです。人として大切にするべき根っこの部分でもあり、飯田さんやお店そのものの存在の大きさも感じられます。

「iidaはいつ行っても気持ちいいな。スタッフみんなキラキラしててチャキチャキしてるし、店もピカピカやん。人に対して平等で優しいし、手話もできるんや!」みたいなことを、お客さんに感じてもらえるかなと。そうすれば自ずと人が集まる場所になるだろうし、僕らがこの社訓を体現することで、何より親が喜ぶかなと。

それもお店のスタイルですが、スタイルって言葉じゃ表現してはいけないくらい厚みや深みがあるもの。ここにしかないSOULだったり、脈々と受け継がれていくDNAやカルチャーに近い気がします。

僕自身もまだまだ若輩者ですが、これまで経験してきたことはスタッフたちには伝えていけますからね。お客さんからの言葉でスタッフが凹んでる時もたまにありますけど、「その人への感謝の気持ちがまだまだ足らんかっただけちゃうか」って、そんな助言ができるくらいの経験はしてきたと思ってます。だから、この社訓がみんなの根っこになっていけば、お店としても人としても結果はついてくるはず。その最初の結果が、2店舗目の『casual KAPPOU iida 2』。自分はもちろんですけど、スタッフにとっても、このお店がさらなる成長の場になればいいなと思ってますね。


<飯田恭央さんがお気に入りのお店>

Bar PANCHERINA(大阪市中央区上町)
外食したり飲み歩くことがほぼない中、唯一の行きつけと言えるバー。お店の営業後にサクッと飲んだり、営業前に顔出したりしてます。

THE GROUND depot.(大阪市西区南堀江)
10年来の先輩が営む南堀江のセレクトショップ。持ってる服のほとんどをここで買ってます。

odd numbers(大阪市中央区南船場)
『casual KAPPOU iida 2』のコートカバー用のファブリックを揃えたお店で、なんと言っても空気感が抜群。唯一無二を体験できるお店です。

Profile

飯田 恭央

兵庫県豊岡市出身。18歳で大阪に出てきて、26歳で谷町6丁目駅の近くに『casual KAPPOU iida』をオープン。2022年4月1日に2店舗目となる『casual KAPPOU iida 2』をオープンする。休日はNETFLIX三昧か、友だちと自宅のバルコニーでBBQしてのんびりチルするのがもっぱら。

Shop Data

casual KAPPOU iida 2

大阪府大阪市中央区上町1-1-1 1階
TEL/080-2423-4590
営業時間/18:00〜24:00
定休日/水曜・日曜・祝日

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