台所で気軽にできる草木染めが楽しい!染色ユニット<WUY>が目指す、 “染め直し”という選択肢が当たり前になるやさしい未来。

植物や野菜を使って生地を染める伝統的な草木染め。どこか格式高いイメージがありますが、昔の日本の家庭では草木染めを生かした衣類の染め直しが日常的に行われていて、暮らしに密接な文化となっていました。化学染料の発展と共に衰退してきましたが、環境問題やSDGsへの関心が高まるここ数年、気軽に実践できるアップサイクルな取り組みとして注目が集まっています。その先駆けとなったのが、染め師の山里歩美さんとその夫・章悟さん、歩美さんの従兄弟・福村真司さんの3人からなる草木染めユニット<WUY>。ワークショップの開催や自宅でも簡単にできるキットの販売、「Re:染め」と呼ばれる衣類の染め直しサービスを通して、草木染めの魅力を伝える活動をしています。今回は、大阪・和泉市にある<WUY>のアトリエにお邪魔して、実際にワークショップに参加させていただきながら、草木染めを始めた経緯や取り組みについて伺いました。

草木染めは、使う植物と素材との相性やその日の温度・湿度で色合いが変わります。何度やっても新しい発見があって飽きることがないんです。

今日は、草木染めのワークショップを開いていただきありがとうございます。草木染めって、どんな工程から始めるんですか?

歩美:参加者には、染めたい衣類や布、糸などを持参してもらいます。植物と相性の良いコットン100%の素材やリネンがおすすめです。最初に“精錬”と呼ばれる洗い作業を行い、繊維と繊維の間に詰まった埃や汚れを取り除きます。処理が不十分だと色の染まり付きが悪くなるので、きれいに染めるためには欠かせない作業の1つでもありますね。

精錬はどうやって行うのでしょうか?

歩美:アトリエでワークショップをする時は、中性洗剤を入れて洗濯機で洗います。それ以外の場合は、洗ってから持ってきてもらうよう事前にアナウンスしています。一般的な洗濯洗剤って酸性かアルカリ性が多いのですが、それだと仕上がりの色に影響してしまうので、中性洗剤を使うのが基本です。

(左)色々レクチャーをしてくれた染め師の山里歩美さん。 (右)アトリエ内の洗濯スペース。

なんだか理科の授業みたいですね。

歩美:そうそう。リトマス試験紙みたいな感じかな。中性洗剤を使って洗っておくと、色抜けしづらくなってきれいな色を保ったまま使うことができるんです。新品のTシャツや靴下を持ってくる人もいるけど、表面がコーティングされていて染まりにくいパターンが多いから、1度洗ってから持ってくるのがおすすめです。公園など外の現場でワークショップをする時は、バケツを使った簡単な精錬をしてから始めています。

例えば、染めるTシャツにシミや汚れが付いていた場合、色には影響してくるんですか?

歩美:その汚れと植物との相性によって、どう影響するのか出来上がるまでわからないんです。比較的、食べ物のシミは色には影響しづらいですが、逆にブリーチや漂白剤など化学的なシミが付いたまま染めちゃうと、ガツンと反応して浮き出てくる場合もあります。

歩美:草木染めは自然由来のものなので、その時々の植物や素材との相性次第で、どんな色に染まるかはやってみてからのお楽しみ。収穫した植物の時期によっても違う色になるし、同じ収穫時期の枝葉で染めても、抽出の濃度やその日の気温・湿度、使う水の温度によって色味が全然異なります。今からみんなで同じように染めるけど、染める素材によっても色の出方が違ってくると思いますよ。

草木染めって奥が深いんですね。

歩美:毎回同じ色に仕上がることはないから、私も出たとこ勝負って感じ。今までの経験を踏まえてある程度イメージはできるけど、絶対的な確信はないんです。だから、ある程度の幅を持って柔軟に楽しんでもらえたら。草木染めって染めても染めても新しい色に出合えるからキリがなくて、長く続けていても全然飽きないです。

まさに沼ですね。

歩美:洗濯ができたみたいなので、そろそろ染めの準備に入りましょう。絞りっていう技法で模様が付けられるんですけど、皆さんやってみますか?布を適当につまんで、ゴムでギュッと結ぶんです。そうすると、白く残る部分ができて表情の変化が生まれます。強くくくるとパキッとしたコントラストが、ゆるくくくるとぼんやりとした模様ができますよ。これも完成するまでどんな風になるかわからないので、実験するような感覚でラフに結んでみてください。

お手本で見せてくれた歩美さんの手元。まさに職人の手でした。
歩美さんを参考に私たちもやってみました。

今日は、どんな染料を使うんですか?

歩美:広島・尾道の『USHIO CHOCOLATL』でいただいたカカオハスクと、京都のお茶屋さんから譲ってもらった廃棄の茶葉をグツグツ煮込んで染料にしました。この組み合わせは私も初めて なので、どんな色に染まるかワクワクしています。

歩美:布を水に浸した後、ポタポタ水が落ちない程度に軽く絞ります。染料液と媒染液、2種類の鍋を用意して、まずは染料液に布を浸します。

すごくきれいな色になりましたね!

歩美:これがチョコレートと茶葉を掛け合わせた素材そのものの色味です。この色もきれいですが、“色止め”と呼ばれる作業をしないと繊維に色が定着してくれないので、鉱物を含む媒染液を使って色止めを行います。実はこれって食材も同じで、スーパーで売られているウニや漬物の発色を保つためにも、今日の媒染液と同じ焼きミョウバンという物質を使った色止めが行われています。染めってもともと台所仕事だったので、お料理と共通する部分も多くて。興味深いですよね。

歩美:この後、媒染液の中に衣類を入れます。一瞬で色が変わるのでしっかり見ておいてくださいね。

わ〜すごい!入れた瞬間、一気に違う色に変わりましたね!

歩美:これだけでも随分色が変わったけど、長く漬け込めば漬け込むほど色味が深くなっていきます。染料液と媒染液の行き来を何度か繰り返しつつ、好みの色になるまで続けてもらえたらと思います。媒染液に使う鉱物は、大きく分けてアルミ、銅、鉄の3種類。どれを選ぶかによっても発色に違いが出るんです。

何度も繰り返していくと、こんなに深いグレーに染まりました。

歩美:自分好みの色になったら、染めゾーンから引き上げて余分な染料を水で洗い流してしばらく水に浸しておきます。しっかり乾かしたら完成です!

完成後、「どんな感じ?」とそれぞれ完成したアイテムを見せ合うのが楽しい。
染め上がったアイテムを持って記念にパシャリ。それぞれの個性が溢れる仕上がりに。
子どもとの遊びの延長で衣類の染め直しをスタート。台所にある道具を使って家庭で簡単にできる草木染めの魅力を、多くの人に伝えていきたい。
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Profile

WUY

染め師の山里歩美さん(中)とその夫・章悟さん(右)、歩美さんの従兄弟・福村真司さん(左)からなる草木染めユニット。草木染めによる衣類の染め直しを「Re:染め」と呼び、ワークショップを開催したり自宅で簡単にできるキットを販売したり、草木染めをカルチャーとして紹介する活動を行なっている。仲良しの3人が醸し出す独特のゆるい空気感も心地いい。

https://wuy.stores.jp/

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