台所で気軽にできる草木染めが楽しい!染色ユニット<WUY>が目指す、 “染め直し”という選択肢が当たり前になるやさしい未来。


子どもとの遊びの延長で衣類の染め直しをスタート。台所にある道具を使って家庭で簡単にできる草木染めの魅力を、多くの人に伝えていきたい。

真ん中が歩美さんの夫の山里章悟さん、左が福村真司さん。

ワークショップとっても楽しかったです。ありがとうございました!ここからは、<WUY>に関する話を聞かせてください。まず、<WUY>の3人はどんな関係性なのですか?

章悟:僕と歩美が夫婦で、真司は歩美の従兄弟にあたります。真司とは結婚後に知り合ったのですが、偶然同い年で波長も合ったので、今は力を合わせて草木染めをはじめとしたプロジェクトに取り組んでいます。

親戚同士のユニット、ちょっと珍しい気もします。

章悟:僕は22歳で結婚して子どもが生まれ、最初はサラリーマンをしていたんですが、お金のために自分の人生切り売りすることへ違和感を覚えるようになったんです。自分たちはもちろん未来の子どものためにも、やりたいことをやれる世の中にしたいと強く考えるようになりました。そこで、Web制作やグラフィックデザイン、イベント企画などを通して、“やりたいことを、やりたい時に、やりたいだけ”できる暮らしを提案する株式会社COSHUUという会社を立ち上げたんです。

真司:僕は企画やプランナーの仕事をしていて、2人に合流する形で一緒に動くようになりました。

歩美:<WUY>は最初、2人の娘と一緒におうち遊びの一環で草木染めをしていたことが原点です。個人自営業として始めましたが、会社を立ち上げてからは法人のプロジェクトとして統合しました。

歩美さんは、どこかで草木染めを学んでいたんですか?

歩美:全然。もともと幼児教育を専攻していて、染色を学校や職場で学んだ経験はありません。

おうちでは何を使って染めていたんですか?

歩美:日によって色々です。子どもと散歩に行ったついでに植物を採ってきて、「これ何色になるのかなぁ」って言いながら、花をすり鉢で潰して色水を作ったり潰した木の実を絵の具代わりにして絵を描いたりしてました。そんな中、衣類の染め直しをするようになったのは、大阪・昭和町にあるアパレルショップ『PERK』で<moi>というブランドの草木染めのお洋服に出合ったことがきっかけ。そこで見た服がめちゃくちゃかわいくて、子どもや自分の着古した衣類を染めるようになったんです。もともと<moi>の世界観に憧れていたこともあり、遊びから抜け出して深くハマるきっかけになりました。

草木染めには、特別な道具など必要ないんでしょうか?

歩美:台所で普通に使っている鍋やおたま、ボールを使って簡単にできるんです。子どもが摘んできた植物を鍋でグツグツ煮込んでいると、なんだか魔女になったような気分になれるんですよ。子どもが幼稚園から帰ってきたら、ずっとそうやって一緒に遊んでいましたね。入れる植物が違えば色も変わるし、輪ゴムで適当に結ぶだけで模様が付くし、遊んでも遊んでもキリがなかったです。

台所にあるものを使って簡単に染められるんですね。知らなかったです。

章悟:草木染めの楽しさを知ってから、彼女も色々自分で勉強するようになって。染色の起源や考え方を、僕らに教えてくれるようになりました。

歩美:草木染めって伝統工芸の1つなので、最初は学校で学ばないと習得できない敷居の高いものだと思っていました。だけど本をたくさん読むうちに、昔は家事の1つとして当たり前に行われていたことだと知ったんです。化学染料が登場するまでは、1つのものを長く大切に着る暮らしが当たり前で、服をまとうこと自体に病から体を守る薬のような意味がありました。各家庭で採取した旬の植物で衣服を染めて、その時季の流行り病から身を守っていたみたいです。

章悟:ちなみに薬を飲む時などに使う“服用”っていう言葉がありますが、そこに“服”という字が使われてるのは当時の名残らしいですよ。

歩美:お母さんが台所に立って、家族の健康を願いながら草木染めをしていたって考えると、そういう暮らしや考え方ってすごくいいなぁと。実際私も同じように台所で染めているし、誰でも気軽にできるんだなって思って、それが草木染めを身近に感じるきっかけになりました。汚れた衣類を蘇らせることができるから環境にもいいし、自然と触れ合うことで心が豊かになる。いつしかそんな草木染めの魅力を、もっとみんなに知ってほしいと思うようになったんです。

どういった経緯でワークショップをするようになったんですか?

歩美:自宅で草木染めをしている話を周りにしていると、放課後デイサービスやイベント運営をしている知り合いが「うちでやってみてくれないか」と声を掛けてくださって。それが、草木染めによる衣類の染め直しをテーマに<WUY>が実施した最初のワークショップでした。

章悟:会社として別で動いていた地域関連の事業でも声を掛けてもらいました。南大阪の泉北エリアで、「これからレモンを特産品にしていこう」という動きがあって、そのチームから「レモンの枝葉を使って染色できないか」と依頼がきたんです。そこでのワークショップが色んな人に知ってもらうきっかけになって、声を掛けていただく機会が増えました。

遊びから始まって、少しずつ大きくなっていったんですね。

歩美:もしも草木染めを仕事として捉えてスタートしていたら、私は経験も浅いしきちんと学んでないし……って自分にストップをかけてしまっていたかも。「私でいいなら行きますよ」ってラフなスタンスでやってきたからこそ、今があるのかなと思います。

章悟:服を染め直しながら大切に着る暮らしが、以前は当たり前の文化として存在していた。草木染めの歴史を歩美に教わるうち、それってすごく魅力的な暮らしだと思うようになったんです。しかも循環的な染色は、子どもたちに未来をつなぐ<WUY>の理念にもマッチする。彼女を全面的にサポートしつつ、染め直しのカルチャーを紹介していきたいと感じるようになりました。

歩美:当時、草木染めの布地でモノ作りをしていた人はいたかもしれませんが、染め直しのワークショップをメインに活動していた人ってあんまりいなくて。自分たちはそれでいいのかなって思う部分もあったけど、章悟の言葉やサポートが背中を押してくれました。

歩美:野菜の切れ端や道端に生えてる草木を使えば、家庭で気軽に染め直しができる。私たちがそれを伝えることで、実践する人が増えていったら嬉しいです。<WUY>ではモノを作って販売するより、ワークショップで染め直しの概念を伝えることを目的にしているので、積極的にオリジナルプロダクトの販売は行なっていません。「何か作れば?」という声もいただくんですが、そこはコラボレーションに留めることで、より染色に集中できるような形を取っています。

天然繊維のアイテムを染め直してアップサイクルする“Re:染め”と呼ばれるサービスも行なっていますよね。

歩美:ワークショップに来られない方にも草木染めの魅力を知ってほしくて始めた取り組みです。今は、和泉市の特産品であるという「いずみ印」の認定もいただています。

真司:実際、伝統的な染めの産業はどんどん衰退していて、ビジネスとして本当に上手くいくのかという葛藤はありました。だけどここ数年、コロナ禍で生活が激変すると共にSDGsが広まって、世間の意識が大きく変わったんです。僕らの考えに共感してもらえる人や企業が増えて、より多くの人が染め直しに興味を持つようになりました。

章悟:SDGsや環境問題への関心も高まって、生産者や飲食業界の方から廃棄になってしまうものを活用できないかというコラボレーションの相談も増えています。教育現場で子ども向けのワークショップをさせていただくことも多いですね。日本の伝統文化として草木染めに興味を持ってくれる海外の企業もあって、ここ3、4年でグッと規模が大きくなっている気がします。

歩美:あちこちでワークショップをしていると色んなつながりが生まれて、素材を譲ってくださる方も増えました。チョコレートショップやお茶屋さん、みかん農家さんや庭師さん。海藻を養殖している企業からのご依頼で、廃棄になる海藻を使って染めたこともあります。海藻も海の植物だし、どんな色になるのかおもしろそうだなと。そのチャレンジ精神が、新しいつながりの連鎖になっているように思います。

<WUY>が目指しているのは、誰もが日常的に衣類の染め直しをする社会。その選択肢が当たり前になれば、未来はもっとすてきになるのかなと思います。
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Profile

WUY

染め師の山里歩美さん(中)とその夫・章悟さん(右)、歩美さんの従兄弟・福村真司さん(左)からなる草木染めユニット。草木染めによる衣類の染め直しを「Re:染め」と呼び、ワークショップを開催したり自宅で簡単にできるキットを販売したり、草木染めをカルチャーとして紹介する活動を行なっている。仲良しの3人が醸し出す独特のゆるい空気感も心地いい。

https://wuy.stores.jp/

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