【ぼくらのアメ村エトセトラ vol.4】 THE・アメ村世代と新・アメ村世代が語る、アメ村の今と昔、これから。そしてとっておきの古着の話。
若者の古着ブームはまだまだ続く?!壮絶だった買い付け事情と、今後のアメ村について。
古着の知識はどうやって身に付けたんですか?
前川:僕は『ピグスティ』におったからっすね。全ジャンルの古着を見せてもらって、そこから自分の好きなやつだけをつまんでいってる感じです。
蝶野:それはわかるかも。
平賀:確かに。
前川:1着でも逃したらめちゃくちゃ怒られますもんね。
平賀:例えバンT 1着でもな。
そういう知識は教えてもらうんですか?
蝶野:『ビッグマン』で働いた時は最初教えてもらえへんかった。「これって何年代のですか?」って聞いたら、「なんで教えなアカンねん」って言われて「え?」みたいな。でもそれにはきっと思いがあって、その人も苦労して知識を身に付けたんやから、それだけ普段から興味を持って服を見とけってことやと思うんです。まぁきちんと関係性を築いたら教えてくれるようになったけど。僕はファッションが好きやから、「ええもんが着たい」って思ったんが本気で知ろうと思ったきっかけ。めちゃくちゃ若い時は合わせ方もクソもなくて、むっちゃ高いヴィンテージ着てるからカッコええねんっていう買い物の仕方をしてたんで。それが年齢を重ねてどんどん変わっていって、今は前よりずっと知識はあるけど、それを着ることに関してはどうでも良くなってる。店では売るけどな。
平賀:逆にそういうのが恥ずかしくて着られへんくなってくるんよな。バチバチのヴィンテージデニムに、ファースト着てみたいなんは恥ずかしくて。
蝶野:余裕があって、サラッとそれができるなら着たいけど。
平賀:逆に知ってるから思うんかな。
蝶野:膨大な量の服を見てたら自然とわかるようになってくるんよな。アメリカ行ってる時は見る服の量もすごくて、それをチョイっと見て片鱗だけで気づかなアカンから。買い付けの話でいくと、『ピグスティ』はアメリカに人が常駐するシステムを作った先駆けやと思うんです。1人でアメリカに2ヶ月行って、1ヶ月帰ってきて、また2ヶ月行くみたいなのを僕と社長で回してました。で、拓郎くんも入ってきて同じくアメリカに行くようになって、アメリカ2ヶ月、日本2週間、アメリカ2ヶ月とかもあったよな。
平賀:1発目はアメリカに1ヶ月半行って、2週間帰ってきて、2回目の買い付けに2ヶ月行ったんです。これがずっと続くのかと思いました。
蝶野:アメリカに居れば居るほどええモノに当たるわけで、常駐させるのはその確率をより上げるためやから。やっぱり短期間の人よりはディーラーとも仲良くなれるしな。
アメリカに買い付け行けるってワクワクしませんでした?
蝶野:全くです。
平賀:楽しみではあったけど、3日目くらいからこれはヤバいと思いました。自分の知識のなさを改めて痛感したのと、めちゃくちゃ怒られてたんで。
蝶野:当時はパソコンも大したもんじゃないし、携帯の電波もつながらんし。今は環境がすごい整ってるから恵まれてんねんで。
平賀:娯楽がとにかくなくて、英語のテレビをただ観るしかなかった。
蝶野:何喋ってるかわからんしな。
前川:ずっと何してたんですか?
蝶野:ホンマになんもしてない。飯食ってテレビ観て寝るだけ。
前川:もちろんGoogleマップじゃなくて地図でしょ。
平賀:そやで。ネット環境ってめっちゃ大事やわ。
蝶野:それでもヤバいやつが出た瞬間は嬉しいねんなぁ。
平賀:10万円で売れるモノが10円で買えたりするもんな。その時は「出た!」って思ってたわ。働いてる時と店を始めてからだと、モノの見方は変わったような気がする。“金になるかならへんか”から、“おもしろいかおもろくないか”になってる。他人に意見を聞かずに好きやから買うってオーナーの醍醐味やわ。
今後のアメ村はどうなっていくと思いますか?
平賀:昔の古着ブームが廃れたのって、セレクトショップの勢いに押されたのが原因だと思うんです。けど今って昔ほどセレクトショップの勢いはなくて、そのムーブメントが来ない限り、引き続き古着が浸透していくんかなと。個人的には古着だけ盛り上がっても仕方ないんで、セレクトショップ一緒にがんばろうって思う。正直もっと早く終わると思ってたけど、まだしばらくは古着ブームが続くんじゃないかな。希望的観測も込みでね。
蝶野:アメ村はアメ村ですよ。昔も今もアメ村でしかないから、どれだけ人や街の雰囲気が変わっても、それがアメ村の個性としてみんなに受け入れられていくんやと思います。
平賀 拓郎
『Epic』オーナー
熊本県出身、古着屋で働くために20歳で大阪へ。『ピグスティ』をはじめとした古着屋数軒で15年ほど働いたのち、2016年に大阪・北堀江で古着&BMXを扱う『Epic』をスタート。昨年アメ村の路面に2号店をオープン。
蝶野 博章
『wit』オーナー
大阪府出身。高校時代に古着の魅力にハマり、17歳で『ビッグマン』に入社。その後20歳で『ピグスティ』に入社し、2019年に独立して『wit』をスタート。持ち前のコミュニケーション力を生かし、ポップアップなども積極的に行う。
前川 宗輝
『TOI』オーナー
兵庫県出身。5年間働いた『ピグスティ』から昨年独立し、南船場で『TOI』をスタート。国や年代に固執しない、若い感性を活かした遊び心のあるセレクトが話題を呼んでいる。
廣島 千波
『stück』オーナー
大阪府出身。『WEGO』、『JAM』を経て『ピグスティ』に入社し、4年間勤務したのちオンラインベースの古着屋とポップアップイベントをスタート。今年5月1日、大阪・寺田町に実店舗をオープン!