【ぼくらのアメ村エトセトラ vol.4】 THE・アメ村世代と新・アメ村世代が語る、アメ村の今と昔、これから。そしてとっておきの古着の話。

至るところに古着屋が立ち並び、“古着の聖地”として名を馳せてきたアメリカ村。「最高にアツかった」と熱っぽく語る人も多い90年代後半のアメ村には、個性的なファッションに身を包んだ多くの人が街を行き交い、日本のファッションカルチャーを牽引してきました。ここ数年、若い世代の間でまたもや古着ブームが再燃し、アメ村が最も輝いたあの時代を彷彿とさせるようなにぎわいをみせています。アメ村特集の第4弾は、アメ村と古着との切っても切れない関係性に着目。THE・アメ村世代と新・アメ村世代を担う4名の古着屋オーナーに、アメ村の今と昔、これからのことを語っていただきました。お願いしたのは、『Epic』の平賀拓郎さん、『wit』の蝶野博章さん、『TOI』の前川宗輝さん、『stück』の廣島千波さん。皆さん大阪古着界のレジェンド『ピグスティ』ご出身とのことで、その辺のお話もちょこっと。世代の違う彼らは、アメ村をどんな風に見てきたのか。ラストで語ってもらう、とっておきの古着の話も必読です。服や人への愛、そして古着屋のあるある事情が知れるはず。ぜひチェックしてください!

みんなが見てきたアメ村ってどうだった?アメ村の移り変わりを見てきた4名の古着屋オーナーに話を聞きました。

(左前)平賀拓郎/『Epic』 (左奥)蝶野博章/『wit』 (右前)前川宗輝/『TOI』 (右奥)廣島千波/『stück』

皆さん『ピグスティ』ご出身ですよね。たくさん古着屋がある中で『ピグスティ』を選んだのはどうしてでしょうか?

蝶野:高校生の頃から好きで通ってた店で。ホンマは卒業後すぐに入りたかったんですが、「今は余裕がないから雇われへん」と言われて、当時アメ村にあった『ビッグマン』で3年、『ライトシャイン』で1ヶ月働きました。『ライトシャイン』を辞めた後、『ビッグマン』の元先輩に「鹿児島に店を出すから働いてくれへんか」と誘われて。最初はその人について行くつもりだったんやけど、同じくらいのタイミングで、新しくオープンする『ピグスティ』の2号店を手伝ってほしいという話をもらったんです。悩んだ結果『ピグスティ』に入って17年間働いて、その後2019年に独立して『wit』をスタートしました。

平賀:熊本県出身で、古着屋で働きたくて20歳の時に大阪へ出てきました。当時の田舎の古着屋って“身内じゃないと働けない”みたいな風潮が強くて、そういうのを気にしなくていい大阪に来たんです。最初は違う古着屋で働いてたんですが、24歳の時『ピグスティ』に入りました。ちょーさく(蝶野さん)とは『ピグスティ』で働く前から友達で、入社してから一緒に買い付けにも行ったことがあります。2016年に独立して『Epic』を立ち上げて、昨年アメ村に2号店もオープンしました。

廣島:もともと『JAM』で働いてて、その頃から『ピグスティ』に通っていたんです。本当はアパレルを離れるつもりで『JAM』を辞めたんですが、退職前に『ピグスティ』の坪井さんに「辞めるんです」っていう話をしたら、後日「新しくレディースの古着屋をやるからウチで働かへん?」と誘ってもらいました。自分が働くなんておこがましいってくらい好きな店やったから、誘ってもらえたことが本当に嬉しくて。退職したけど今でも大好きなお店です。昨年辞めて『stück』というオンラインベースの古着屋を始めて、今年5月1日に大阪・寺田町に実店舗をオープンしました。

前川:僕は兵庫県の三田市出身で、学生時代は三田のアウトレットにある<チャオパニック>でアルバイトをしていました。古着好きの先輩に憧れて、「俺も古着を着たらカッコ良くなれるんかな?」と。自分も古着屋に行き始めて、『ピグスティ』に通うようになったんです。そしたら「ここでアルバイトしたら?」って坪井さんが誘ってくれて、当時は掛け持ちやったんで週1~2回働くようになりました。

蝶野:前川も坪井に誘われたんやな。

前川:そうっす。その時就活もしててセレクト系のアパレルを狙ってたんですが、なんせ面接が苦手で心が折れちゃって。古着が好きやったからこの道を選びました。

蝶野:神戸住んでるのになんで『ピグスティ』に行ってたん?

前川:近大やったんで難波が通学圏内なんですよ。やからアメ村とかも結構行ってました。卒業後は、吉祥寺にある古着屋のピッカーの仕事に就いて、1年間くらいカナダにいたんです。やけど、英語も喋れなかったから現地でやることがなさすぎて辞めました。その後正式に『ピグスティ』に入ってアメリカに連れて行ってもらった時、自分に知識がなさすぎて「俺は今まで何してたんやろ」って思いました。今は南船場で『TOI』っていう店をやっています。

廣島:前川くんが最初に入った日は鮮明に覚えてる。確か可愛いチワワのTシャツ着てた。

前川:何それ雑魚キャラすぎやん(笑)

廣島:あと拓郎さん(平賀さん)と初めて会ったのは、拓郎さんの『ピグスティ』最終出勤日で。他のお客さんからもらったお菓子を分けてくれました。

平賀:そうやったっけ。よく覚えてるなぁ。

皆さん同時期に働いてたわけではないんですね。アメ村の街や人の様子って変化しているように感じますか?

蝶野:今は古着ブームって言われてるのもあって、より若い子が増えたような気がする。僕らが高校生だった頃もいてたけど、もっと怖い店が多かったんで。自分たちの方が立場が下で、服のことを教えてもらいに行ってたというか、ちょっと修行してるみたいな感覚やった。「まだそれを買うのは早い」とか普通に言われてたし。

平賀:完全に店の方が偉かったよな。

蝶野:あとは個人の古着屋がとにかくたくさんあった。今は雑貨屋とか飲食店とか色んなジャンルの店があるけど、当時は古着屋とたこ焼き屋、スニーカー屋くらいしかなくて。最近は路面でやってる個人の古着屋ってなかなかないけど、その時は多かったんですよ。

平賀:僕が大阪に住み始めた2002年頃のアメ村は、少し元気がない印象でした。たぶん90年代のアメ村ってすごく輝かしかったけど、堀江にセレクトショップがたくさんできて前より人が集まらなくなったんです。しばらく衰退気味やったけど、確かに最近若年層が増えて人が集まるようになったように思う。一方で画一化されたモノしか売れてない感覚はあって、昔は憧れの場所だったけど、今は観光地化しているのかなと。

廣島:前は色んな服を着た人が入り乱れてたんですよね。

蝶野:ホンマに個性の集まりやった。アメ村のビッグステップに集まる人はちょっとモード系の服を着てて、「ビッグステップファミリー」って呼ばれてました。天王寺やったら「ミオラー」とか、同じ系統の洋服が好きな人が集まるコミュニティがありました。

当時と今とで売れるモノって変わってきてますか?

蝶野:それでいくと同じかもしれない。昔は安かったものが今は高くなったけど。

平賀:そやな。その中のこれって細分化されちゃったかもやけど、売れてるモノの大枠は変わっていない気がします。

蝶野:今はY2Kって呼ばれる00年代のスタイルが流行ってて、ローライズのデニムを穿いてる女の子とかも多い。自分らが高校生とか20歳くらいの時に、「パンツ見えそう」って思って見てたパンツが流行ってる感じ。それが今っぽくアップデートされてるなと思う。

それでいくと前川さんが見てきた古着ってどんな感じでした?

前川:僕らが18歳くらいの時はリメイクの古着とかインディアンジュアエリーがめっちゃ流行ってたイメージです。学生時代はアメ村は怖いってう風潮がまだあったから、結構勇気出して『ピグスティ』に行ってましたよ。しかも、エレベーターが怖すぎたから階段で登ったりとか。お客さんの頃はエレベーター使ったことないですもん。

平賀:それ2010年代の話やろ。昔はバカでっかい靴履いて、でっかいピアス開けてた人とかめっちゃおったしもっと怖かったで。とある古着屋に入った時に、僕の前にいたお客さんがめちゃくちゃ怒鳴られて恫喝されてたとか。こえ~て思いながらすぐ帰りました。

ちなみに最近はアメ村に行かれますか?

前川:勇気を持って『ピグスティ』に行ってます。やっぱ欲しいモノがあるんすよね。

廣島:私も以前働いてた『ヴィヴィー』はたまに行きます。

平賀:自分の店があるからよく行くけど、服を見るのは『ピグスティ』と『チャッピー』かなぁ。

蝶野:大手の古着屋に価格帯を見に行ってる。今って菅田将暉とかが着るとそれだけで値段が上がったりもするし、古着の価値も変わってきてるのかもしれないっすね。まぁでも僕はお酒を飲みに古着屋に行ってるようなもんなんで。

廣島:自分の店でも飲んでますもんね(笑)。『wit』に行ったら一緒にお酒を飲んじゃうから絶対最後に行きますもん。

平賀:今は少なくなったけど、昔はそういうストロングスタイルの店が多かったよね。もっとゆる~く服を見て、お酒を飲んでだらだら喋ってみたいな。古着屋のスタイルもちょっと変わってきてるんかも。

若者の古着ブームはまだまだ続く?!壮絶だった買い付け事情と、今後のアメ村について。
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Profile

平賀 拓郎

『Epic』オーナー

熊本県出身、古着屋で働くために20歳で大阪へ。『ピグスティ』をはじめとした古着屋数軒で15年ほど働いたのち、2016年に大阪・北堀江で古着&BMXを扱う『Epic』をスタート。昨年アメ村の路面に2号店をオープン。

Profile

蝶野 博章

『wit』オーナー

大阪府出身。高校時代に古着の魅力にハマり、17歳で『ビッグマン』に入社。その後20歳で『ピグスティ』に入社し、2019年に独立して『wit』をスタート。持ち前のコミュニケーション力を生かし、ポップアップなども積極的に行う。

Profile

前川 宗輝

『TOI』オーナー

兵庫県出身。5年間働いた『ピグスティ』から昨年独立し、南船場で『TOI』をスタート。国や年代に固執しない、若い感性を活かした遊び心のあるセレクトが話題を呼んでいる。

Profile

廣島 千波

『stück』オーナー

大阪府出身。『WEGO』、『JAM』を経て『ピグスティ』に入社し、4年間勤務したのちオンラインベースの古着屋とポップアップイベントをスタート。今年5月1日、大阪・寺田町に実店舗をオープン!

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