クリエーションの原点は“古着好き”のマインド。注目のアクセサリーブランド<リリバイセリ>のデザイナー、田中芹さんのこれまでとこれから。


アイデアは突然降ってくるもの。人と被らないものを追求する古着好きのマインドが、制作活動に色濃く影響しています。

部屋の一角のディスプレイをパシャリ。アンティークのぬいぐるみ(特にテディベア)をコレクションしているそう。

芹さんが新しいものを生み出すとき、アイデアソースになっているものはありますか?

私の場合はアイデアが突然降ってくるんです。家にいるだけじゃ何も生み出せないから、常にアンテナを立てていろんなものを見るようにしています。身の回りにあるものの造形に注目したり、映画やアートなどファッションに近しいものになるべく触れるようにしたり。普段から意識しているうちに自然と浮かんでくるんですよね。

この前は電車の吊革を見てビビッときました。制作するときはデザイン画を描かずに、作って壊して作って壊してようやく出来上がる感じかな。

今はSNSをチェックしていると、びっくりするほど情報が入ってきますよね。自分で発信できる場所ができたぶん、ハンドメイド作家さんも増えているし、どこかで見たことのあるようなものも多いと思うんです。だけど芹さんの作るアクセサリーはどれも出合ったことのないデザインだし、すごく独特な気がします。

そもそも私が制作活動を始めたのが、“ハンドメイドアクセサリーが好き”じゃなくて、“古着が好き”からスタートしているからだと思います。古着が好きな人って誰かと被るのが嫌っていう人多いですよね。私もそう思うし、その概念が根底にあって作り始めたものやからかも。

私が手芸屋で勤めていた頃がちょうどハンドメイドブームで、似たり寄ったりの作品がいっぱいあったんです。でもその良さを私はわからなくて、人と被らないものが欲しいなと考えた結果、こういう形になりました。

古着がお好きということですが、ハマったのはいつからなんですか?

小さい頃からおしゃれが好きで、アメ村の古着屋さんで服を買うようになったのは中学生の頃。ビーズの付いたカーディガンを買ったことをきっかけに古着にハマりました。古着屋に勤めていたときにヴィンテージの奥深さを教えてもらって、熱がさらに加速した感じです。ヴィンテージに限らず、面白いデザインの古着とかグッドレギュラーも好き。

だけど最近着たときのしっくり感が以前と変わって、新品の服も好きになってきました。だから古着好きは変わらないですが、新品の服も見るようにしています。

私も同世代の古着好きなので、その気持ちはすごくわかります。年齢を重ねると似合う形や色味が少しずつ変わってきますよね。古着にこだわらず、いろいろ組み合わせたくなりますし。

そうそう。古着に飽きたわけじゃないけど、そこに何かを加えてアップデートして着るのが気分。最近買ったのは、<Chopova Lowena>のスカートや<SIILON>の帽子。インポートやデザイナーズを買うことが増えました。だけど今まで古着屋さんばかりだったから、新品のお店の見方がわからなくて、買うものをしっかり決めてから行くことがほとんど。古着はビビッとくる服を探すのが楽しいから足を運ぶけど、新品だと「このブランドのこれ!」って欲しいものが決まっているから、オンラインで買うことも多いですね。

以前と比べて服の系統に変化はありますか?

変わってはいないけど、好きなものが明確になったと思います。大きな襟とかパッチワーク、ボリュームたっぷりのフリルとか、可愛いものがずっと好き。割とラブリーなものを身につけることが多いですね。

自分の本当に好きなものは、いつまでも変わらない気がする。可愛すぎるかなと思ってシュッとした服を着ていたこともあるけど、しっくりくるのはやっぱりこっちだし、無理せず好きなものを着るのが一番かなって。

服への愛がギュウギュウに詰まった芹さんのクローゼット。
最近購入したという<SIILON>の帽子。
部屋の随所に芹さんらしさが光ります。なんだか真似したくなりますね。

今年の目標は自分主導のイベントを実施すること。お客さんとの対話を大切にして、<リリバイセリ>をもっと好きになってほしい。

直近で挑戦してみたいことはありますか?

今までは誘ってもらって出展することが多かったけど、もっと自分発信でいろいろできたらいいなと思っています。お客さんとお話しながら販売したくて、ギャラリーを借りて展示会をするのも一つかなと。今はオンラインが主流だけど、本当は店舗で直接買うのがベストだと思うんです。

昨年末名古屋でポップアップをしたとき、「店頭でお話しながら直接買うと満足度が全然違いますね」とお客さんが言ってくださって、それがすごく嬉しかったんです。これまでは誘ってもらったポップアップを中心に頑張ってきたけど、今年は自分主導でイベントができたらいいですね。あとはコロナが落ち着いたら海外にも行きたいです。現地で仕事をするのか材料を集めに行くのかは全然わからないけど、とにかく海外に行っていろんなものを見たいと思っています。

いつか自分のお店を持ちたいという思いはありますか?

今はないんですけど、それこそ自分で場所を借りて何かするようになったら考え方も変わるかも。さっきも言ったけど、私はそんなに真面目じゃないんです(笑)。毎日は絶対開けられへんと思うから、月何日間か営業してあとはアトリエとして使うとか。「お店を持たないんですか?」ってよく聞かれるんですけど、持ったら速攻潰しちゃうかも……。一つの場所に毎日通うのが苦手で、今は自宅が職場だからなんとか成り立っているんです。

アトリエがあったら素敵だと思います(笑)。<リリバイセリ>として将来の目標はありますか?

一人だとどうしても限界があるから、ゆくゆくはスタッフを雇いたいです。制作面じゃなくて営業やプロモーション、事務作業をフォローしてもらいつつ、一緒に<リリバイセリ>を盛り上げていけたらいいな。私の性格やブランドの世界観を汲み取ってくれる仲間がほしくて、いつかそれぞれのプロと一緒に仕事ができたら最高ですね。

今年31歳になるんですけど、将来のことをぼんやり考えていて。例えブランドが成功しなくても、好きな人と結婚して親友の家の近くに住んで、居心地のいい人たちと楽しく過ごせたらいいなって。<リリバイセリ>としてどこまでできるかわからないけど、大きなことは望まないから、大好きな人と一緒に美味しくお酒を飲んで笑っていられたら、私はとっても幸せだと思います。

作業台でアクセサリーを制作する芹さん。よく見ると使っているトレイやピンクッションも可愛い。

●ポップアップ情報
「HOT RATS」

阪急うめだ本店10F
2022年2月9日(水)〜15日(火)

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Profile

田中 芹

1991年生まれ、大阪府出身。“リリという寂しがり屋の女の子がつくるアクセサリー”をテーマにしたアクセサリーブランド<リリバイセリ>のデザイナー。ファッションとお酒が大好き。

Profile

リリバイセリ

ポップアップを中心に展開するアクセサリーブランド。デザイナーの田中芹さんがこよなく愛する古着からインスピレーションを得たデザインは、個性的ながらもファッションにすんなり馴染み、その人らしさを引き立てる。

https://store.qui.tokyo/collections/lilibyseri

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