加古川をカルチャーの街に!『Factory No.079』の岩本卓也さんが、地元を盛り上げるために歩んできた15年の軌跡と、これから見たい景色。
田舎に都会を作る。それが僕の店作り、街作りのテーマなんです。
加古川の街の案内ありがとうございました!ええ街だなと思いましたし、お店に集まってる若い子たちの姿を見て、やっぱり岩本さんたちの影響があるのかなと。そこの実感ってありますか?
僕らどうこうじゃないですが、カルチャーを感じるようなお店は増えてきてて、「俺たちもやりたい!」という若い子もちょろちょろいてるので、少なからずいい影響は与えられてるのかなと。『Factory No.079』に中学生の頃から通ってくれてた子は、古着屋を始めたりもしてるし、改めて店を続けてきてよかったなと思ってますね。
DJやラッパーに続き、地元で店を始める子も出てきてるんですね!
店を始めてるのはほぼ地元の人ですが、僕は移住者を囲い込むクセがあってね(笑)。震災の時に東京から関西へ一時的に移住してくるヤツがいたから、加古川を案内して一緒に家を探したりもしてたんですよ。それでこっちに住んでもらい、東京のカルチャーを落とし込んでもらう。小さい街でお客さんの絶対数も少ないので、違う街から来てもらわないと何も起こらないんですよ。もちろん加古川の子にも来てほしいけど、県外の人にはもっと来てもらえるようにアピールしてますね。
15周年記念の音楽イベントも、DJ MUROさんやCOJIEさんというすごいメンツですし。ART SHOW『SORE TO KORE』も含め、県外の人を呼び込む強い企画があるのはすごいなと思います。
いえいえ、先輩たちにご協力いただいてのことなので、本当に感謝しかありませんよ。僕自身としては、DJで各地に行かせてもらってますが、それは全国の人に加古川を知ってもらうための戦いでもあるんです。兵庫と言えばやっぱり神戸だけど、「加古川という街もあるんだ!」と思ってもらえるように浸透させたいし、少しずつですが浸透してきてる実感もあります。
加古川観光大使的な感じですね。
あまりにも加古川を勧めすぎるから、周りから「市長を狙ってるん?」とか言われますが、そうじゃないんです。店の名前にも市外局番の079を付けてますし、加古川を背負うと言うとおこがましいですが、それくらいの覚悟はあります。だからね、これからも加古川をどんどん前に出していきたいなと。例えば、地方に行った時にどこから来たか尋ねられても、「神戸の方…」とは言わない。「加古川です!!」って、胸張って言います。まぁ、「どこですか?」って言われることもありますけどね。
岩本さんをそこまで突き動かすその原動力って、何でしょうか?もちろん、自身の生まれた街を盛り上げたいという想いがあってこそのことだと思いますが。
神戸も大きな街ですが、「カルチャーの世界では加古川がいいよね!」って言われたいし、そう思われたい。そのために活動してる感じです。最初にも少し話しましたが、自分の子どもが加古川を離れずに過ごしてくれることが、親としては1番の夢でもあるので。だから、とにかく加古川を好きになってもらえるように、いろんなところに連れ回してます。イベントのことを我が家では“祭り”と呼んでるんですが、子どもらも「最近は祭りないの?」とか「あの祭りはよかった」とか、言うてくるようになりましたからね。大きくなって都会に出た時に、「こんなん加古川にもあるわー」と、言ってもらえるように僕はこの街を盛り上げていきたいんです。
お子さんも、いい感じに育ってますね!
僕らの若い時はそんなイベントや店も全くなかったので、カルチャーの街にしていくことがミッション。例え実現しなくても、種は蒔いて死にたいなと。15年やってまだこれだけかぁーって想いもありますが(笑)、まだまだこれからも動き続けるだけですね、僕は。
ただハコや場所を作ればいいってわけでもないですし、若い子たちが集まったり巣立ってる今は、着実にその目標に向かってる気がします。すごく漠然とした質問になるんですが、岩本さんにとって地元とは?
表現をする場所であり、昔からの仲間がいるからこそ、表現をしやすい場所。そして、開拓していくべき場所かなと。
SHINGO★西成さんの歌詞にもある、“自分たちの街は自分たちで作る”ということですね。
最初に『Factory No.079』を立ち上げた時も、「加古川では無理だよ」「1年で潰れる」と言われたりもしましたが、それを糧に反骨精神でやってきたし、支えてくれる仲間もいました。何をやっても新鮮に受け止めてもらえて、何をやっても一番手になれたのも、そもそも何もなかった場所だからこそなんです。僕の店作りや街作りのテーマとしては、田舎に都会を作るということ。そのイメージでやると、田舎で都会を味わえるから、逆にいい空気感が作れるなと思ってます。都会に遊びに行くのもいいけど、ここに来れば日本の最新がわかるみたいな感じが理想ですね。
田舎に都会を作る、その言葉はすごくしっくりきました。これから先の店作りや街作りで、岩本さんが考えてることって何かあるんですか?もしあれば、聞かせてもらえればなと。
若い子たちが街から離れずに、加古川出身を誇って言えるようにしていきたいので、商売的にはこのままこの場所で続けていきたいと思ってます。ただ、僕自身も感度は研ぎ澄ましてるし、いろんなアンテナも張り巡らせてるけど、歳を重ねるにつれて若い子とはズレてきてるかもしれない。おもしろいヤツ、ヤバいヤツはどんどん増えてきてるから、もし引き継ぎたいっていう強い想いを持った子が出てきたら、バトンタッチもありかなと考えてます。老害にはなりたくないんでね(笑)
世代交代的な。じゃぁ、その時期が来れば、岩本さんは若い子たちがガンガン前に出るためのサポート役に回ると?
もちろんその役目も担いますが、他にもやりたいことがめちゃくちゃあるので(笑)
まだまだ夢が尽きなさそうですね。それも、加古川を盛り上げるための何かですか?
当然、そうですよ。例えば1つ挙げるとすると、実は今、いろんな地方で安い物件を借りていってるんです。その各地の物件を宿に改装したり、新たな拠点にしてグルグル巡りながら加古川をアピールするツアーをしたいなって。
加古川PRのための支部を各地に作ると。個人でそこまでやってる人いないし、めちゃ楽しそう。それに、やっぱり加古川愛、地元愛があふれまくってます!
加古川は、街も人もおもしろいと思ってもらいたいのでね。盛り上がってる刺激的な街にしていくために、僕ら自身ももっと刺激的なことをこれからもしていきたいんですよ。
<岩本さんのお気に入りのお店>
Bar Antonio(兵庫県加古川市加古川町北在家)
地元の先輩が10年前に始めたお店で、加古川のカルチャーシーンにはなくてはならない存在です。ここができてから加古川の音楽シーンが一気に広がりましたし、僕らもお客さんとしてずっと大切にしていきたい場所。『Factory No.079』の15周年パーティーも、開催させてもらいました。
岩本 卓也
兵庫県加古川市出身。生まれ育った地元で、セレクトショップ『Factory No.079』、カフェ『ROOM2 COFFEE & ROASTERS』、レストラン『NEW BUILD』を展開。GREENWORKS名義でDJとしても活躍し、音楽レーベル『SOUL POT RECORDS』を主宰。全国各地を飛び回りながら、加古川の知名度を普及させるための活動を続けている。
https://www.instagram.com/factory079
https://www.instagram.com/soulpotrecords
https://www.instagram.com/newbuild_079
https://www.instagram.com/room2mrc
https://www.factory079.jp/
NAOKI SAND YAMAMOTO
兵庫県加古川市出身。プロダクトにアパレルデザイン、ライブペイント、ミューラルなど、場所や手法を超えて表現を楽しみ、国内外のアートシーンで活躍するグラフィックアーティスト。ストリートで人気のブランド<SAYHELLO>を主宰し、アーティストコレクティブ『81BASTARDS』の一員でもある。
MHAK as MASAHIRO AKUTAGAWA
福島県会津若松市出身。ペインター/アーティスト。デザイナーズ家具や内装空間に多大な影響を受け、絵画をインテリアの一部として捉えた“生活空間との共存”をテーマに制作活動を行う。グローバルからストリートまで、様々なブランドにアートワークを提供。アーティストコレクティブ『81BASTARDS』の一員でもある。