呪物は最新のサブカルチャー?! オカルトコレクター/怪談師として活動する田中俊行さんの、怖いけど気になる呪物の話。

超自然的なパワーが宿り、持ち主である人間に禍福をもたらすと言い伝えられている呪物。少年漫画「呪術廻戦」の影響もあり、呪物の存在はここ数年で飛躍的に知れ渡るようになりました。そんな呪物を世界各国から蒐集し、“呪物部屋”なる空間を自宅に設けてコレクションしているのが、神戸出身の怪談師・田中俊行さん。彼はオカルト好きの母の影響で幼い頃から怪談集めをスタートし、現在は怪談師と呪物コレクターの二足のわらじで活動しています。今回は、大阪・北浜の『ASITA_ROOM』で開催していた企画展「祝祭の呪物展(※すでに終了)」にお邪魔して、色々と話を聞きました。田中さんと共同で企画を行った<アシタノシカク>の代表・大垣ガクさんにも登場してもらい、来場者のリアルな反応なども伺っています。呪物=単なる怖いモノではなく、実は最新のサブカルチャーだったんです。 怖いモノ見たさでぜひ読んでみてください!!

とある人形との出合いをきっかけに呪物の蒐集をスタート。今では150点以上もの呪物が自宅の呪物部屋に並んでいます。

北浜のギャラリースペース『ASITA_ROOM』さんでの呪物展は今回で3度目ですね。先ほど展示会場も見させていただきましたが、会場がお客さんでいっぱいでした。

田中:かなりにぎわっていましたね。展示の初日にお邪魔して以来だったので、お客さんと交流できてよかったです。

「私の人形と一緒に写真を撮ってください」というファンの方もいてびっくりしました。そういうお願いってよくあるんですか?

田中:結構ありますよ。「この子呪われてるんです」って僕に見せるために人形を持ってきたりとか、「昔からずっと大事にしてる子です」って僕に人形を抱っこさせたりとか。関取に赤ちゃんを抱っこしてもらうみたいな感覚で、呪力を上げようとしてるんですかね。僕自身は全く霊感がないので効果があるのかわからないんですけど。

北浜のデザイン事務所<アシタノシカク>が運営するギャラリー『ASITA_ROOM』で開催されていた「祝祭の呪物展」の様子。

不思議なムーブメントですね。まずは知らない人のために、田中さんがどんな活動をしているのか教えてください。

田中:怪談師として活動しながら世界中の呪物を集めてまして、僕の家には150点ほどの呪物が並んでいます。僕の生活について1つ言うとするなら、呪物コレクターの朝は早いってことですね。

朝が早い。どうしてですか?

田中:呪物にお菓子をあげたり呪文を唱えたり、寂しくないよう声を掛けてあげたり、モーニングルーティーンがすごく多いんです。同じくナイトルーティーンも多いので、寝る前も結構時間がかかります。呪術師から譲り受けた呪物には、1つひとつ取り扱いに関するルールがあることが多いので、その言いつけをできるだけ守るようにしています。逆に超自然発生的に呪物として扱われているモノに対しては、自分なりに考えながら声掛けなどを行っています。

呪物は集めて終わりじゃないんですね。

田中:きちんとお世話をしないと襲われる場合があるので、人間と同じように扱うのが基本です。

そもそも呪物ってどういうモノなのでしょうか?

田中:僕は大きく分けて2種類の呪物が存在すると考えていて、1つは呪術師が呪いを込めて意図的に作ったモノ、もう1つは超自然発生的に呪物と呼ばれるようになったモノ。例えばとある村があったとして、敵との争いや自然災害、病気なんかに村が巻き込まれることなく、安全に過ごせるようにと願いを込めて呪術師が作るモノで、そこには人智を超えた力が宿るとされるんです。これが基本的な呪物の考え方なのですが、僕はそこから枠を広げて、髪の毛が伸びる人形や不幸をもたらす置物なども呪物と捉えています。要は物体を起点に何か霊的なアクションが起これば、それが良い悪いに関係なく呪物だということですね。身近なところでいくと、仏像も僕からすれば呪物です。呪物に対して怖いイメージがあるかもしれませんが、基本的には良いモノなんですよ。

呪い(のろい)という字が入っているからですかね。怖いイメージがあります。

田中:“呪”には“まじない”という読み方もあって、2つの意味を含んでいるんです。仏像はポジティブな気持ちで造られているから良いモノになるけど、人を貶めたいとかお金持ちになりたいとか人間の欲望を叶えるために生まれた呪物もあるので、そういうモノはやっぱり危険です。

大垣:今回の「祝祭の呪物展」でも平和や安全、幸せを願って作られたモノをたくさん展示させていただきました。

田中:そう考えると、1、2回目の展示はネガティブなアイテムの方が多かったです。僕自身の興味をそそられるのがネガティブなモノなので、基本はそちらを中心に集めています。

田中さんはとある人形を引き取ったことをきっかけに、呪物集めをスタートしたんですよね。それに関して、詳しくお伺いしても良いですか?

田中:怪談師をやっていると、お客さんがライブに呪物を持ってきてくれるんですよ。例えば、「家にずっとある石です。この石の作用によって私の家族は全員不幸になりました」とか。何でそんなん俺に持ってくんねんっていう話なんですけど、捨てるんも怖いし、田中さんが持っといてくれたらいつでも見に行けるから安心っていう。レンタル倉庫みたいな使われ方をしていて、断りきれずに家に持ち帰っていたんですよ。

田中さんが呪物に魅了されるきっかけになったチャーミー。

コレクションの始まりはそこなんですね(笑)

田中:まぁ話の種になるかと色んな人から呪物を預かっていたけど、最初は全く興味が湧かなくて。当時はまだ神戸の実家に住んでいて、とにかくスペース取るなと思っていたんです。それが覆されたのは7〜8年前ですね。和歌山のイベントに怪談師として参加していたんですが、ちょうど僕の誕生日と被っていて、お客さんが「誕生日プレゼントです」とでっかい袋を持ってきたんです。僕もバタバタしてたので、中身も見ずに「ありがとう」って受け取りました。いざ持ち帰って開けてみると、中から使い古された人形が出てきて。よくわからんし気味が悪かったんで、何が誕生日プレゼントやねんって思いながら袋に戻して、そのまま部屋の隅っこに置いてました。そしたらその時、僕の部屋の電気がパパパパって点滅し始めて。その日台風が来ていて天気も荒れてたし、電気の調子悪いなぁと思ったけど特に気にせず、PCを立ち上げてメールを打とうとしました。だけどなぜかSiri(音声認識ソフト)が立ち上がって、メールのソフトが上手く使えないんですよ。もしかしてさっきの人形が原因?と思って袋から出すと、不思議なことに両方ピタリと止んだんです。

不思議なお話ですね。今まで呪物のことを気にしてなくても、ちょっと意識してしまうかも。

田中:単なる偶然だったとしても、そのタイミングで事象が起きたことで、もしかしてこいつの仕業なのかなという思いが浮かんだんです。魂というか、見えない力がモノに宿ることが本当にあるのかもしれないぞって。その出来事をきっかけに、呪物を積極的に集めるようになりました。

先ほどのお話に登場した人形は、可愛がると死んじゃうっていういわく付きなんですよね。

田中:最初はまだ名前もなくて、一体何なんやろうと困惑してたら前の持ち主から連絡が来たんです。この人形はとある介護施設にあって、何人かの利用者さんが可愛がってたようなんですが、人形を可愛がった利用者さんが3日後くらいに死んじゃうっていう出来事が5人ほど続いたようで。スタッフさんが怖がって倉庫に閉じ込めたら、次の日勝手に出てきちゃったこともあるみたいです。困り果てた関係者さんが、僕なら預かってくれると持ってきたとお聞きしました。

めっちゃ怖い話じゃないですか。

田中:5人も殺してるんやと思うとさすがの僕も怖かったですよ。まぁとりあえず預かってみようと思って、その時ちょうど“チャーミー”という名前の大型台風が来ていたのでそこから名付けました。お前は高気圧ガール、チャーミーやでと。最初は怪談のエピソードになればいいなと軽い気持ちだったけど、いつの間にか怪談と同じくらい興味を持つようになって、そのきっかけをくれたのはチャーミーでした。

呪物でいっぱいの田中さんの部屋、メディアでお見かけしたことがあります。体調が悪くなることはないんですか?

田中:僕は霊感が全くないのと、だるいとかしんどいとか自分の体に対してもかなり鈍感で。ただ自分では気付かないけど、「お前最近痩せすぎちゃう?」と周りに言われてハッとすることはあります。もしかしたら呪物にやられてるのかもしれませんね。やっぱりこれだけたくさん集めていると、僕のように感じにくいタイプでも、何らかの信号を送ろうとする呪物はいるんですよ。

と、言いますと?

田中:夢の中にずっと出てくるやつとか。呪物で怖い思いをしたことは2、3回しかないけど、そういう経験は僕みたいに霊感のない人間でもありますね。

夢に出てきて、喋りかけてくるんですか?

田中:何も言わずにただ怒ってるんですよ。人の髪でぐるぐる巻きになった日本人形なんですけど、それが実写化されて夢に出てくるんです。いつも僕は山の麓に立っていて、山の中にすごいスピードで入っていくと鳥居が出てきて、日本人形と同じ着物を着た女性が1人で立っている。その人がものすごく怒った顔をして近づいてきて、そこでパッと目が覚めるんです。

めっちゃ怖い夢ですね。体調には影響がなかったんですか?

田中:当時怪談イベントで全国を回っていて、その日本人形を持ち歩いてたんですよ。恐らく結構雑に扱ってしまっていて、それに腹を立てていたみたいなんです。そのせいなのかツアー中ずっと夢に出てくるし体調も優れなくて、だんだん息が吸えなくなって、最終的に救急車で運ばれて入院しました。酸素濃度が下がっていて、かなり危険な状態だったと聞いています。なぜ呼吸が苦しくなったのか未だに原因不明で、入院中もずっと夢に出てきていました。

(取材後、ライターが録音したインタビューの音源を聞き直しつつ文字起こしをしていると、上記の話の途中でガサガサという謎の音が入っていました。不思議ですね……)

怖すぎます。田中さんも怖いと思いながら接してるんですか?

田中:もちろん怖かったですよ。後から調べてみると、その日本人形にはいわくがいっぱい出てきました。やっぱりこれだけ多くの呪物を集めていたら何かしら怖いことはありますよ。僕もそういう世界があると思って接してるんで、不思議な体験をすることは多いですね。

世界中には色んな呪物が存在していて、その背景と共に知っていくのがおもしろい。表立って話せないこともかなり多いです。
123
Profile

田中 俊行

1978年生まれ、神戸市出身。怪談師、オカルトコレクター、イラストレーター。オカルト好きの母の影響で幼少期から怪談の収集を行っており、近年は世界各国の呪物を150点以上集めている。「稲川淳二の怪談グランプリ2013(関西テレビ)」で優勝するなど、怪談師としての腕前も折り紙付き。

Youtube:田中俊行チャンネル『トシが行く』

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE