関西スケートシーンの台風の目・SHUJI KAWAGUCHIさん。バイブスが揺れ動く方へ滑り続けた先には、表現者という生業が待っていた。
スケーターとして、技術よりも想いの向くままに。
ー大阪のスケーターをもっと知って欲しいと。ビデオ制作に力を入れているのと関係ありそうですね。
今の時代、スケートボードというカルチャーに身を置く上で、ビデオ制作は欠かせませんね。一般的なスポーツだとスキルや技を磨いて大会に出て、そこで勝利することが目標だと思うんですけど、スケボーは違う流れがあって。例えば、アメリカを代表するスケートボード専門誌『THRASHER』のようなマガジンに取り上げてもらったり、ブランドなどが制作するビデオに自分のスケートパートが採用されたりする方が、重要だったりもするんです。だから、自分のスケートビデオパートを作って、見てもらうことを大事にしてますね。
ーでも、知識や技術がないなかで、いきなり動画って作れるもんなんですか…?
僕の場合は、高校生の時にはiPhoneがあったんで、気軽にiMovieで作ってましたね。独学ってほどの勉強もしてないですし…。それより、自分のスタイルを発信したいとか、周りのスケーター仲間を見て欲しいっていう想いが強かったんで、自然と撮るようになりました。自分で表現もするし、自分も仲間も含めて発信したいというか。
ーなるほど。SHUJIさん流のビデオ編集・ディレクション、ぜひ知りたいです。
ビデオ制作の技術よりも、スケーターのスタイルをどう伝えるのかとスポットシークが大切。メイクひとつ決めるのにも、2〜3時間くらいざらにかかるので、いかにその瞬間をかっこよく見せるのかにこだわっています。素材を、どこで切り取って、どこで繋げるのか、その基本があれば大丈夫!って感じで(笑)
ー良い意味でノリというか、その時に自分が何を感じたのか…、“グルーヴ感”を大切にしていますよね!今までのスケートボード人生のなかで、「この道で生きていくぞ」みたいな覚悟が決まった瞬間ってありました?
19歳で、『Sponsor Me(スポンサー・ミー)ビデオ』を制作している時ですかね。さっきも話した通り、スケートボード業界で自分を売り出す最も一般的な方法は、自分の滑りを撮影・編集したパートをサポートして欲しいショップやブランド、メディアに発信すること。そこで、地元のスケーターと本気で映像制作に向き合いました。その時に、自分で滑るのも楽しいんですけど、動画作るのもめちゃくちゃ楽しかったんです。仲間のカッコイイスタイルをもっと色んな人に見てもらうために、「ビデオを作って発信していきたい」と覚悟が決まったのかも。スケーターとして、フィルムメーカーとして、この道で生きて行けたらなって明確に意識するようになりましたね。
生まれ育った街にショップをオープンしたのは、ローカルへのこだわりがあるから。
ー今や着実にスケーターという生き方を生業にしていますよね。そして、その拠点となるのが、2020年9月に地元でオープンしたご自身のスケートショップ『GOOD TIMES』であると。
そうですね。スケートショップの役割って、モノを売る以外にもあると思うんで、『GOOD TIMES』としてビデオも作っています。やっぱり僕らにとってはビデオの優先度が一番高いので。スケーターと交流する場が生まれることで、ビデオ制作にも本腰を入れられるようになりました。
ーショップの構想はいつから考え始めたんですか?
いつかビデオ制作の事務所が欲しいとは思っていたんですけど、「スケーター仲間が集まる場所ができる」「ローカルからスケートカルチャーを発信できる」とかも考えるようになって、ショップがあると「何でもオモロイことができるやん」と思って。シンプルにワクワクしたので、ショップをオープンさせることを決意しました。
ー地元・加美でオープンしたのも、何か理由があったんですか?
理由は2つあって、ひとつはローカルへのこだわり。地元のローカルスケーターを発信したい、さらにはローカルからスケートシーンを盛り上げたいという想いです。もうひとつは、僕たちが滑り続けてきたスケートスポット・久宝寺緑地があるから。せっかくなら、自分たちの中にあるスケートカルチャーが育まれた原点で、これからも過ごしていきたいと考えました。それで、昔から一緒に滑ってたスケーター仲間のSUBARUとKOUを誘ったんです。
ー学生時代から仲が良い仲間と一緒に、好きなスケートボードのカルチャーを生業にして生きている。これって、サブカルチャーが好きな人間なら、みんなが憧れるライフスタイルですよね。にしても、ビデオ制作以上に、いきなりショップ運営を始めるって、ハードル高過ぎませんか…?
マジでトラブルの連続でした(笑)。とりあえず、みんなでDIYしてショップはオープンできましたけど、分からないことも多くて…。でも、スケボーで繋がった人たちがアドバイスをくれて、何とか少しずつ前に進めた感じ。アイテムのセレクトも、良い意味で最初と今ではほぼすべて変わりました。僕はやっぱりグラフィックのデザインに惹かれて、ボードもアパレルもセレクトすることが多いです。
ースケートボードで繋がった縁がここでも力になっている訳ですね。でもやっぱり、中心にはSHUJIさんの求心力というか魅力があるから、すでに地元をはじめ全国のスケーターが足を運ぶショップに成長したはず。今日着てるパーカーも、SHUJIさんがデザインしたオリジナルアイテムですよね?
はい! 昔から絵を描くのは好きだったので。あと、スケートボードのデッキのグラフィックに惹かれて、グラフィックデザインにも昔から興味を持ってたんですよ。でも、大学は理工学部だったから半期で中退しちゃって…(笑)。そこからデザインの専門学校に通い直しましたね。当時は、スケーター仲間とビデオを作ることに夢中やったんですけど、個人の表現活動に目を向ける機会が少なかっただけで、ずっとデザインは好きでした。
ーSUBARU君とKOU君からみて、SHUJIさんのデザインってどう映ってるんですか?
SUBAU:昔からずっと一緒にいて、スケートカルチャーに浸かってきたから、何をカッコイイとするのか、その感覚は近いと思いますね。だからこそ、俺はSHUJIのデザイン好きですよ。
KOU:SHUJIの好きなものは、僕も好きなことが多い。お互いの好みを、お互いに把握して、信頼しているから安心して任せられますね。いわゆるフィーリングが合うってやつです!
SHUJI KAWAGUCHI
1997年生まれ。スケートカルチャーを起点に、ビデオ制作やイラスト制作などアーティストとしてマルチに活躍中。日本のストリートシーンのキーマンであるVERDYがプロデュースする『Wasted Youth』のライダーという一面も。2021年には大阪を代表するセレクトショップ『IMA:ZINE』で個展を開催。次いで2022年2月28日には、原宿の『kit gallery』でも個展を予定している。自身のスケートショップ『GOOD TIMES』はオープンから早1年で多くのスケーターが訪れる名物ショップに。いま、関西のスケートシーンを語る上で欠かせない存在。
GOOD TIMES
大阪府大阪市平野区加美東6-14-34
OPEN:13:00〜20:00
定休日:火曜日