スケボーに乗る土偶がかわいい!<ヨーヨー窯>の屋号で活動する陶芸作家・渡部彩弥さんは、なぜ13,000年前の縄文土器に魅せられたのか。
人間を相手に作ってる物であるし、もっと人間のやってることを楽しもうって、この頃は思うようになったんです。
渡部さんが影響を受けたものとか、作品に色濃く投影されてる物とかってあったりします?
何でしょう、自然にある物ですかね。人って賢すぎてややこしいじゃないですか。もっとシンプルに考えたいっていう気持ちが前までずっとあって。街路樹の下の根っことか、街の中でもたくましく暮らしてる人間以外の物にすごい惹かれたりとか、パッと見た夕焼けと雲とかのめっちゃ綺麗な景色に感動したりとか。自然、地球ですね。
だから蛸だったり、根っこだったり。
そうですね。でも、人間が住み良いこの街で作ってることにも最近意味があって。人間を相手に作ってる物であるし、もっと人間のやってることを楽しもうって、この頃は思うようになったんです。髪も染めたりとかあんまりしてなかったんですけど、もっと楽しもうと思って。もっと人であることを今は楽しみたい(笑)
人であることを楽しみたい!いいですね、名言っぽいですね。その考え方の変化が、作品に影響している部分はありますか?
やって来たことは一緒と言えば一緒なんですけど、人を意識するようになって、テクスチャーがいっぱいとか、色がもっと人目を引くとか、そういうところを意識するようになりました。
人に見てもらうことだったり、人からどう見えるかみたいな?
そうですね。対「人」を意識するようになりました。人を意識するようになって、人に知ってもらえるようになったら、今度は私が本当に力を入れて作ったものを見たいと言ってくれる人が増えたんです、ありがたいことに。もうちょっと、自分が力を入れたい部分、ここに装飾をもっと時間をかけて施したりとか、そういうことが今年はできるようになりそうかなと思ってます。
人を意識したことで、本来のご自身の作品を見たいと言ってくださる方が増えた!それは素敵なことですね。
やっと、自分がもっと突き詰められるようになったかなと思います。
今まで陶芸を続けてこられて、印象に残ってる出来事ってあります?
なんやろう、登り窯の焼成がやっぱり面白くて。陶芸教室が持ってはった窯で、そんなに大きいものではないんですけど、2部屋あるやつで。6日間ずっと、火がゴォーって噴き出るところに薪を入れ続けるんです。窯をコントロールする薪の本数とか、みんな交代で夜通し6日間ずっとやるんですけど、それがめっちゃ面白くて。焼き物をしてる中でいちばん好きかもしれないです。
登り窯のどういうところが魅力なんですか?
窯の温度が上がっていったら、窯の中でゴォーって音が鳴るんですけど、水みたいな音がしてて。ゴポゴポゴポみたいな。火やのに水の音がするのがめっちゃ感動的でした。
火なのに水の音!それは神秘的ですね。では最後に、次はこんなことしたいなとか、こんなことできたらいいなみたいなものは何かありますか?
大きい土のオブジェを作って、それだけの展示をしてみたいですね。あと、仮面。昨年、陶器で作った仮面を、ダンサーの子に付けて踊ってもらったんですよ。それを、西田辺にあるうつわ屋さんが面白いって言ってくれて。そこで、着れる壁飾りとして蓑みたいなのを作ってる人と、名古屋の彫金の人の装具を合わせて、仮面と蓑と装具の展示をする予定です
仮面と蓑と装具の展示を、うつわ屋さんで!面白いですね、どんな展示になるのか楽しみです。
そういう変なことも、これからできたらなと思います。一昨年は草木染めの方とコラボレーションして、陶器を草木染めしたんです。水を吸いやすい土を選んで焼いたものを、服を染めるのと同じ感じで、ドボンと藍と茜で染めてもらって。昨年はデジタルコラージュの方と共同で展示をしたんですけど、そういう異素材とのコラボレーションが、今年もできたら嬉しいですね。
<渡部彩弥さんのお気に入りスポット>
辰巳温泉(大阪市住吉区大領)
銭湯が好きで、ご近所のファミリーともよく行きます。辰巳温泉はタイルがいいんですよ、凝ってるんです。多分、志野焼やと思うんですけど、志野焼のタイルを使ってるところなんて見たことなくて。天井も広くて気持ちいいところなので、行ったらぜひタイルにも注目してみてください。
渡部 彩弥(わたなべ あや)
大阪府堺市生まれ。絵を描くことが好きで美大を受験するも、工芸科に入学。陶芸に出合い、作陶を始める。大学卒業後は地元・堺の陶芸教室で働く傍ら自身の作品を手掛ける。土や石に触れながら、その中で生まれる模様や窯の中で渦巻く炎によって釉薬が溶けて混ざる色を大切にし、器や植木鉢などを制作。自然の現象から着想を得た、独創的な色の表現も魅力。