絶妙におかしくて、独特で、クセになる。動くイラストレーター・アワジトモミさんの「流されて、今」。
ほんとに何も考えずに作ってて。運動神経がよくなくて、リズム感もないから、あんな動きになるのかも。
アワジさんの作品はモチーフも、動き方も、色彩も独特ですが、その発想はどこからくるんでしょうか?
アワジ:どこなんでしょうね…。
何かに影響を受けているとか。
アワジ:受けてるのかなあ。色は直感なんですよ。
寺田:僕らもそう聞かれることあるけど、わからんというか答えようがないなあ。
描かない人間からすると、どんなふうにインスピレーションが湧いてくるのか、何をどうしたらこれを描こうと思うのか、その過程が想像できなくて。
アワジ:よく言われます、なにを考えてこうなるん?って。
寺田:生まれつきちゃいまっか?音楽家が、メロディーが降りてくるみたいな。偉そうに言うてるんじゃなくて、説明つかへんねん。生い立ちが違ったらまた全然違う絵になるから、いろんなものに影響は受けてるんやろうけど、意識はしてない。
今まで受けたいろんな影響とか経験とかが、無意識で表現になってるみたいな?
アワジ:わからないけど、じゃあ降りてきてるのかもしれないですね。あ、思い出した、ピングーはめっちゃ好きでした。クレイアニメには憧れてましたね。
アワジさんの動画の動きってすごく特徴的ですけど、クレイアニメの影響もあるんでしょうか?
アワジ:特徴的なんですかね…。ほんとに何も考えずに作ってて。運動神経がよくなくて、リズム感もないから、あんな動きになるのかも。
ゲームっぽい雰囲気もありますが、その辺りは?
アワジ:あ、ドット絵は好きで、ポケモンは初期が一番好きで、デジモンとかやってました。たしかにゲーム的な動きかもしれない、なんかピコピコして落ち着きない感じとか。
本当に意識されてないんですね。
寺田:意識すると作られへんかもしれへんね。
アワジ:先生の作品も、急に猿が出てきたりしますもんね。
寺田:そやねん。あれも別に考えてない。
アワジ:先生も考えてない。
寺田:後からいくらでも理屈はつけられるけど、描き始めたらもう全体のバランスとかそういうものを見ていくうちに、ここにこれ描いたら面白いかなとか、そういう感じですよ。
見るほうからしたら、どんな意図があるのかな?って考えてしまいます。
寺田:それが作戦です(笑)
大きい二次元コードを描いてみたいです。バーコードとか好きなんです。誰かが便利だと思って考えたようなものが、すごく好きなんですよね。
メタセコイアでは、手描きの二次元コードを作品として展示しておられました。二次元コードをアナログで表現して、それを読み取った先にデジタルのアニメーション作品があるというのがすごく面白いなと思ったんですが、あれはどういう狙いがあったんですか?
アワジ:展示場所が『neji』さんの壁面の本棚だったんですよ。本棚にどう展示しようか考えてたら、先生が昔、木の本を作ったことがあるって言うので、じゃあそれを盗んでやろうと(笑)。去年、別の展覧会で二次元コードを飾る展示もしていたので、木の本に二次元コードを描いて、本棚に並べました。
二次元コードを描いた木の本が作品なのか、読み込んだ先のアニメ―ションが作品なのか、けっこう考えました。
アワジ:それも作戦です。なんかこう、二次元コードも作品として見てほしいし、でも媒介というか向こうに行くためのツールでもあるので、どっちかなと思ってもらえると嬉しいです。
手描きの二次元コードとアニメーション、どちらも作品なんですね。
アワジ:でもどちらかと言えば、アニメが見られるのはおまけって感じです。二次元コードは私が死んだらWEBサイトが閉じてしまっていつか見れなくなるので、この本の状態で、アニメが見られなくてもかわいいものを作らなくちゃいけないなと。
二次元コードが読み込めなくなっても、本そのものが作品として。
アワジ:見てもらえる、残るようになったらいいなと。
これから描いてみたいもの、作ってみたいものはありますか?
アワジ:昨年、NHKの仕事がきたんです。『ギャップの架け橋』っていう特番なんですけど、番組の中で使うゆるいアニメを作らせてもらって、すごい楽しかったんです。好きにさせてもらって。タイトルロゴも4つぐらい提案したら、全部採用してもらって。番組も素敵やったし、楽しかったので、映像系の仕事がきたらいいなって。
すごく需要ありそうな気がします。
アワジ:あとは、大きい二次元コードを描いてみたいです。
大きい二次元コード?
アワジ:二次元コードを描いてたら、褒めてもらえるんです。誰も描こうと思わないから、だからすごいねって。なんかね、バーコードとか好きなんです。誰かが便利だと思って考えたようなものが、すごく好きなんですよね。
寺田:ウォッシュレットみたいな?
アワジ:それは違う(笑)
アワジトモミ
1988年大阪生まれ。イラストレーター。GIFアニメ「動くイラスト」が話題になり、2020年に出展した国際アートフェア『UNKNOWN ASIA』では8名からのレビュアー賞を、2022年『メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア』では庄野裕晃賞と松村貴樹賞をダブル受賞。桑原茂一氏による『FREEDOM DICTIONARY』でもフィーチャーされるなど、カルチャー界隈からも熱い視線を集めている。ウェディングムービー「オープニングうさぎ」も制作。