絶妙におかしくて、独特で、クセになる。動くイラストレーター・アワジトモミさんの「流されて、今」。


最初のムービーはトレース台もないから、窓ガラスに貼って太陽光で透かして。絵コンテもなくて、1000枚ぐらい絵を描きました。

キャリアのスタートになったオープニングムービーですが、いきなり作れるものなんですか?

アワジ:はじめはコピー用紙に描いて、トレース台もないから窓に透かして何枚も描いて、それを1枚1枚スキャンして、だーってつなげていって作りました。ようやったなって自分でも思います。

めっちゃアナログ!

アワジ:パラパラ漫画をつなげる感じで。最初の頃は1秒24~30コマでもっと早く動かしてたんですけど、今は1秒8コマです。8がいちばん見ててもしんどくないんです。始めたばっかりの頃はPhotoshopも使えなくて、窓にうつしてやってたから、ブレブレなんです。だから動きが早いと気持ち悪くて。それで8コマでやりだしたら、もう8コマが定番になりました。

初めてでも、できてしまうところがすごいと思います。

アワジ:ほんまにつなげるだけなんで。白黒やし。

先ほどお友達用に制作されたオープニングムービーを見せていただきましたけど、すごい超大作ですね。

アワジ:あれは学生の頃からの友達に作ったので、思い入れも強いんです。めっちゃ喜んでくれて嬉しかった。

私まったく知らない人ですけど、ちょっと泣きそうになりました。

アワジ:でもこれほんまによう作ったなと思うんですけど、描いてスキャンして動かしながらストーリー作って…ってすごい効率の悪い作り方してて。1000枚ぐらい描きました。

1000枚を、描いて、撮影して、つないで?

アワジ:そうです。絵コンテとかも知らんから。音楽聴きながらそれに合わせて絵を描いて、足りなかったらそこ足して、でもつないだら余って。効率よく作ったら800枚ぐらいで済んだと思います。今はちゃんと台本作ってから制作してます。

「オープニングうさぎ」の絵コンテ。ムービー制作のきっかけを作った旦那さんが担当する、ほどよくゆるいナレーションも魅力。

いまお仕事で制作されるのは、新郎新婦さんから直接のご依頼ですか?

アワジ:直接ですね。メールとかで。

寺田:どこで見はんの?

アワジ:インスタとかで見てくれはって。私はそんなに上げてないんですけど、お客さんが上げてくれたのを見て来られたりとか。今は8月以降の式まで承ってます。

すごい、売れっ子ですね!

アワジ:がんばっても月に2本ぐらいしか作れないんです。去年からずっといろんな人と打ち合わせしてて、もう誰がどのエピソードやったっけ?ってなります。

でも、思わぬことで仕事につながったんですね。

アワジ:私ほんとに人の縁というか、たまたまやったことが全部上手くいってる感じで。先生との出会いも、1000円で絵の体験教室やってるんやーって来てみたら、先生の人柄がすごくいいなと思って通い出したんです。

寺田:人柄やったらまかせとけ!

アワジ:まあ先生がこんな感じでいい人やったから。この人から人柄を学ぼうと思って。

人柄の師匠。

アワジ:師匠ですね。先生にすごいいろんな人につなげてもらって。あと、飲み友達ですかね。私がいっつも飲みに誘うから、先生の仕事がぜんぜん進まない。

手に職をと思って美容の学校を出たんですけど、美容に全く興味がなくて。たこ焼き屋さんとかで働いてました。

ムービーや絵が仕事になる前は、どんなお仕事をされていたんですか?

アワジ:「オープニングうさぎ」を始めたのが2015年ぐらいで、仕事になったのが2017年ぐらい。それまではいろいろ、WEB制作とかしてました。

会社にお勤めして?

アワジ:そうですね。学美容の専門学校を卒業してるんですけど、美容師には一回もならず。

美容学校のご出身なんですか?

アワジ:手に職つけなあかんと思って行ったんです。でもアシスタントで通い出したときに、休みの日に練習しに来るん嫌やし、休みないし、絶対無理やと思ってすぐやめちゃったんですよ。その後たこ焼き屋で働いてたんですけど、そこが潰れて。同じたこ焼き屋で働いてた友達が、次はこれがいいんじゃない?って子ども向け施設の仕事を見つけて来てくれて。

友達が見つけて来てくれるんですね(笑)

アワジ:そう、その施設で3年ぐらい働きました。そこの仕事がすごく楽しくて。ステージで司会もしてたので、二次会で頼まれるようになったんだと思います。いつの間にか、司会キャラになってて。

でもその司会がきっかけで、今につながってるんですもんね。

アワジ:ほんとに、流されて流されて。

イラストレーターなりたいとか、絵を描く仕事がしたいとか、思ったことはなかったんですか?

アワジ:中学生ぐらいまでは絵をすごく褒めてもらえてて、いろんな人に。何で褒められたのが覚えてないですけど。でも高校行くときに、美術の世界ってなんかよくわからんと思って。デッサンとかするじゃないですか。そういうのちょっとできないと思って。美大とかに行っても、その後の就職もよくわからないじゃないですか。父がけっこう早くに亡くなったので、手に職だと思って美容の学校に行ったんですけど、美容にめちゃくちゃ興味がなくて。保育士とかも考えたんですけど、学校の先生に「アワジは保育園の先生向いてないと思うで」って言われたんですよ、注意力が散漫やから。

寺田:学校の先生がそんなこと言うの?

アワジ:私もそのときは、夢ないこと言うわあと思ったんですけど、今考るとならなくて良かったです。

その子ども向け施設のあとは、どんなお仕事を?

アワジ:WEBデザインとかコーディングをしてました。WEBとデザインが学べる学校に通ったんです。それも「オープニングうさぎ」のWEBサイトをちゃんとしようと思ったんですけど、発注すると高いじゃないですか。誰かに頼む値段と学校に行く値段を比べたときに、自分で作れるようになったらそれも仕事にできるわと思って。それで学校に行くほうを選びました。

そこで、WEBとデザインのスキルを身に着けたんですね。

アワジ:その学校にコーディングのアルバイトの求人があったので、アルバイトしながらオープニングムービーを作って…っていうのを3年ぐらい続けてたんですけど、コロナでバイトをクビになってしまって。それからは個人で、友達の仕事を受けたりしてました。

寺田先生の教室の通われてたのは、WEBとデザインの学校に行っているときですか?

アワジ:たぶん…。あんまり覚えてないんですけど、2018年か2019年ぐらいです。

寺田さんはアワジさんの作品を最初にご覧になったときは、どんな印象でした?

寺田:上手に描いてましたよなんでも。美大とか出てる人とくらべても、面白い絵を描くし。

アワジ:えー。嬉しい。

動く絵を描くようになったのも、その頃ですよね?

アワジ:先生が、動くほうが面白いんじゃないかって。それまでも、ちょこちょこ動くものは作ってたんです。そういうのが面白いって言われて、そっちをいっぱい描くようになって。だから、私が動くイラストを描く人って認知されたのは、『UNKNOWN ASIA』が最初です。

寺田:アワジちゃんの絵、いろんな人に紹介したらみんな面白いって言うからね。

アワジ:先生めっちゃ紹介してくれるんですよ。「この子おもろい絵描くねん、見たって」って。搬入とか手伝いに行ったら、いつもまわりの人に押し売りしてくれはる。

ほんとに何も考えずに作ってて。運動神経がよくなくて、リズム感もないから、あんな動きになるのかも。
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Profile

アワジトモミ

1988年大阪生まれ。イラストレーター。GIFアニメ「動くイラスト」が話題になり、2020年に出展した国際アートフェア『UNKNOWN ASIA』では8名からのレビュアー賞を、2022年『メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア』では庄野裕晃賞と松村貴樹賞をダブル受賞。桑原茂一氏による『FREEDOM DICTIONARY』でもフィーチャーされるなど、カルチャー界隈からも熱い視線を集めている。ウェディングムービー「オープニングうさぎ」も制作。

https://opening-usagi.com/

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