絶妙におかしくて、独特で、クセになる。動くイラストレーター・アワジトモミさんの「流されて、今」。
GIFアニメで表現する「動くイラスト」を手掛けるイラストレーター・アワジトモミさん。2020年の『UNKNOWN ASIA』では初出展にして8名からのレビュアー賞を受賞し、MARZELでも取材した2022年の『メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア』では2名の審査員賞を受賞するなど、何かと注目を集める気鋭の若手です。メタセコイアの受賞インタビューでは、動くイラストを描く理由について「動くほうが楽しいので。でも動かなくても楽しいものだったらどんどん作っていきたい」と語っていたアワジさんに、絵を始めたきっかけやインスピレーションの源など、いろいろ聞いてきました。お邪魔したのは、アワジさんの師匠にして、関西のイラストレーション界の重鎮・寺田順三さんのオフィス。作品同様に想定の枠を軽々と超えるアワジさんワールドを、ぜひご堪能ください!
二次会の司会で、新郎新婦のなれそめを紹介するのが恥ずかしくて。それで、2人のことを描いた四コマ漫画を作ったんです。
アワジさんの「動くイラスト」、すごく独特で面白くて好きなんですが、アワジさんが絵を描き始めたきっかけを教えてもらってもいいですか?
アワジ:友達の結婚式の司会をすることが多かったんです、二次会とかの。そのときに、友達のなれそめを言うのが恥ずかしくて。わかります?誰も聞いてないし、酔っぱらってるから。だいたい知ってますよね、二次会とかだと。それで、その2人のことを描いた四コマ漫画を作ったんです。
なれそめを紹介する四コマ漫画ですか?
アワジ:そうなんです。それがなんか気に入ったので、旦那の友達に見せたんですよ。そしたらすごい褒めてくれて、俺の結婚式でもやってほしいって言われたんです。その後、旦那がなぜか勝手にその人の結婚式のオープニングムービーを作るって約束しちゃって。ムービーなんて作ったことなかったんですけど、パラパラアニメで新郎新婦を紹介するアニメを作ったんです。
四コマがアニメに進化してますね。
アワジ:「オープニングうさぎ」っていう私のキャラクターがいるんですけど、そのうさぎが新郎新婦を紹介するんです。で、そのアニメをまた別の友達に見せたら、その子も結婚式を控えてて、私のも作ってほしいってなって。今度はそれを見た知らない人からも作ってほしいって依頼が来るようになって、これはもう商売にしようって思ったんです。それで、「オープニングうさぎ」の名前で、ブライダル専門アニメを作ることを仕事にして。
友達のために作ってた四コマが、ついに仕事に。
アワジ:そうなんです。でもムービーって、いっぱい絵を描かないといけないんですよ。もうちょっと、1枚絵で仕事できたほうがいいなって急に思って、それで、寺田先生の教室に通いだしたんです。
寺田:それは知らんかったな。アワジちゃん最初から上手に描いてたよ。
アワジ:いやいや、そんなことは。でも先生のところに来て、私は雑誌のカットとかそういう普通の絵を描こうと思ってたんですけど、先生はアニメとかのほうが面白いから、そっちを発展させたほうがいいんじゃないって。
先生からのアドバイスもあって、動くイラストのほうに力を入れようと。
寺田:いまカットイラストとかそんなに仕事ないでしょ、雑誌も減ってるし、大変やから。
アワジ:すき間産業みたいな?
寺田:いやいや、アワジちゃんは発信力があるから、そっちからいったほうがええなと思って。カットの依頼があれば受けたらええし。
たしかに、普通の絵より動きがあるほうが面白いし、他にないですよね。
アワジ:絵がどうやったら仕事になるのかもわかってなかったんですけど、先生のアドバイスで、とりあえず『UNKNOWN ASIA』に出してみたら?ってなったんですよ。でも「動くイラスト」を平面でどう展示するか想像つかなくてどうしよう……って思ってたら、その年はたまたまオンライン開催で。
ああ、コロナ禍まっただ中の2020年は、リアル開催ができなかったんですね。
寺田:オンラインやったら、アワジちゃんの作品がいちばん目立ってたな。それで2日目から、ほかの人もちょっと動かしたりして。
アワジ:けっこう受けが良かったんですよ、『UNKNOWN ASIA』で。そこでチグニッタの谷口さんともつながって、お仕事させてもらうようになって。
すごい、二次会のなれそめ四コマから始まったとは思えないサクセスストーリーですね。
アワジ:流されて今、です。
アワジトモミ
1988年大阪生まれ。イラストレーター。GIFアニメ「動くイラスト」が話題になり、2020年に出展した国際アートフェア『UNKNOWN ASIA』では8名からのレビュアー賞を、2022年『メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア』では庄野裕晃賞と松村貴樹賞をダブル受賞。桑原茂一氏による『FREEDOM DICTIONARY』でもフィーチャーされるなど、カルチャー界隈からも熱い視線を集めている。ウェディングムービー「オープニングうさぎ」も制作。