カメラマンで、現代美術家。両極端にも思える「商業」と「芸術」の間を行き来する、木村華子さんの奥深きグレーゾーン。
現代美術ってよくわからないじゃないですか。私もわかんねー!って思うんです。でも意味のわからないことに信じられないぐらいの熱量をかけている、そこにやられるんです。
現代美術のどんなところが魅力ですか?
こういうことを考えたら、こういう表出になるんか!っていうのが、たまらないんですよ。現代美術の作品に触れるたびに、ああなるほどそうきたか!みたいな気持ちになるんで。よくわからないじゃないですが現代美術って。
ぜんぜんわからないです。ライアン・ガンダー展に行ったら床に紙きれみたいなのが落ちていて、それも作品でびっくりしました。
わかんねー!って思うんです私も。でもそんな意味のわからないものが、わざわざ公的なお金をかけて美術館に大事に保管されているっていう状態自体が好きなんです。そして、その作品を掘り下げていくと、そうされるに値する文脈があるのも面白い。建物を布で包んだり美術館の壁を壊したり、意味のわからないことに信じられないぐらいの熱量をかけている、そこにやられるんですよ。
なるほど。ちょっとだけ、楽しみ方がわかる気がします。
作品によってはある程度説明してくれたり、フックになるヒントがあって、その人の生き方とか時代背景とか。ちょっとスパイスカレーと似ていて、この人は南の出身やからこのスパイス使ってるんやなとか、この時代に生まれたからこういうブレンドなのかとか、味わいなら探すみたいな感じです。
現代美術の味わい方は、カレーに似ている!目からウロコです。では最後に、これから先、やってみたいことってありますか?
自分のなかのトピックとして、これ見てみたいな、気になるな、作品にして考えたいなってことはあるので、その準備をしたいですね。自分が見たいのもあるんですけど、誰かに見てもらったほうがフィードバックがもらえるし、作品にしてみることで理解が深まるというか考えが進むので。
出しつつ進んでいく、みたいな感じなんですね。カメラマンと現代美術家の活動は、これからも並行して?
前はどっちつかずかな、どっちかにしたほうがいいかなと思ったりもしてたんですけど。美大や芸大出身で在学中からバリバリ活動している美術家の人とか、単純に憧れますし。でもカメラマンとして、例えば銀行の頭取とか、芸能人やビッグイシューを売っている人とか、いろんな場所やいろんな人を撮らせてもらうことが、作品を進めていくうえで自分に何かしらの影響を与えているんだなっていうのは思うようになりました。
では今後も、両輪でやっていくと。
美術家は身銭を切って作品を発表したら美術家でいられますけど、カメラマンは頼んでもらっているうちが花なので。カメラマンの仕事のほうは、ぜひ、気軽に頼んでください!最近なんか、「木村さんはアーティストやから…」みたいに言われるんですけど、全然難しい人間ではないので、制作会社の方とか、ビビらず気軽に発注してください。
木村 華子
京都府出身、大阪市在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。関西を拠点に商業カメラマンとして雑誌や広告で活躍すると同時に、現代美術家としてコラージュ、インスタレーション、立体作品などを手掛ける。「UNKNOWN ASIA 2018」では、写真にネオンライトを組み合わせ、青い光が点灯する作品を発表。グランプリをはじめ、レビュアー賞5部門、審査員賞4部門を受賞する。
木村 華子(作品)