Interview & Writing
前出 明弘
Photo
小林 俊史

大学時代にグループを組んでアート活動して、就職を機に別々の道に進む。でも、就職せずに好きなことに没頭して、ひたすら突っ走る者たちもいる。どっちが正解でどっちが間違いでもなくて、それぞれの選択が全てだけど、今回フィーチャーするのは後者。うきち、SHUN、としおの3人からなるクリエイターグループの透明回線です。大学時代から学外でバリバリ活動して表現することの楽しさを知り、覚悟を持って自分たちのスタイルを磨き上げてきた彼ら。ずっと若手だった彼らも今年で29歳を迎えるということで、これまで辿ってきた道とこれから進んでいく道について、話を聞いてきました。透明回線、その名を覚えておいてください。

お互い嫌ってたけど、意識はしてた。しかも、うきちの奴は授業の講評で高得点取るから、「絵もうまいんかい!」って感じで。

透明回線を結成したのはいつ頃なんですか?

としお:大学2回生の時なんで、2012年ですね。僕は舞台芸術学科で音響などのバックステージ業務を勉強してて、うきちとSHUNが同じグラフィックデザイン学科でした。

SHUN:1回生の頃から仲良くて、3人でいつも一緒にいましたから。

左から、としお、SHUN、うきち。

SHUNさんとうきちさんは学科も同じですもんね。

うきち:SHUNとは同じ学科でしたけど、嫌いだったんですよ(笑)。特に話すこともなかったし、タイプも真逆だったし。としおは学内でライブをしてたんで、それを見て仲良くなって、メシとかよく行くようになったのが始まりかな。

SHUN:うきちは分かりやすく言えば、完全な陽キャ。静かに絵を描いてるのに教室の後ろでいつもワチャワチャしてたから、「うるせー!」と思ってたんです。だから、お互い嫌い合ってたはず(笑)

でも、そんな2人が仲良くなるキッカケは?

SHUN:友だちが「メシ作るから遊びにおいでー」と言うので、家に行ったらうきちがいて…。マジで最悪だと思って、いつ帰ろかなって考えてたんです。

としお:でも…(笑)

SHUN:夜には肩組むほど仲良くなってた(笑)

ちょっと急展開過ぎるんですが(笑)

うきち:メシ作るまでに時間があったからみんなで卓球しに行ったんですけど、気づいたら肩組んでしましたね。

SHUN:しゃべってみたら、意外とおもろいやんって感じで。見た目の印象で判断してたのもあるし、授業の講評の時にお互い高得点を取っていて、「あいつ、絵もうまいんかい!」と思っていたんです。

うきち:だから、お互い意識はしてた存在だったんですよ。絵がそうでもなければ何も思わなかったけど、うまかったからチラチラとは見てた(笑)

としお:僕は元々うきちと仲良かったので、SHUNともその流れで。

インタビューは彼らのアトリエで。ライブペインティングに使用するスプレー缶や制作したグッズなどが所狭しと並んでいました。

これは、マジで卓球に感謝ですね。でも、個人で活動するのではなく、なぜグループを結成しようと思ったんですか?

SHUN:学内にWHOLE9というユニットを組んでる先輩がいて、その方たちのライブペインティングを見て、オレたちもこんな表現をしたいと思ったのが最初ですね。でも、同じ感じだとおもしろくないなと。ただ、としおは音楽をやってるし、即興でピアノ演奏もできちゃうので、この3人が集まれば何か新しい表現ができるんじゃないかと思ったんです。

透明回線という名前はどういう経緯で?

うきち:漢字4文字で、検索ワードに引っかからないもので考えてましたね。

SHUN:としおがその頃にエレクトロ系の音楽をしてたので、電子っぽいから“回線”というワードはすぐに決まって、後の2文字をどうするかでめちゃ悩みました。

としお:結局5〜6時間悩んで、朝方にようやく決まったんだよね。

SHUN:そうそう。なかなか浮かばずで、みんなで東京事変を聞いてたら“透明人間”が流れてきて、「あれ!透明って良くない?」と。それで、全員一致で透明回線という名前に決まったんです。

名前ってとても大事だし、その時点でも生みの苦しみだったり、喜びを味わってたんですね。そこから活動がスタートしていくと。

SHUN:まずはWHOLE9の先輩たちにグループ結成の報告に行こうとなったんですが、「待てよ。作品が何もないやん」となりまして(笑)。挨拶のしようもないから、とりあえずとしおの家に集まってみんなで処女作を完成させたんです。

うきち:確か、5日くらいかかったよな。

としお:そうだね。それで、まずは報告と挨拶ができたんですけどね。

あれ、そこからまた何かが起きるんですか?

SHUN:挨拶に行ったら、「3週間後に関西のペインターが集まる飲み会があるから、みんなでおいでよ!」と言ってもらえて。でも、さすがに作品が1つだと話にならないから、3週間で新たな作品を作ることにしたんです。学内のサークル部屋みたいな所に、1週間寝泊まりしながら…。

うきち:でも、ただ作るだけじゃなくて、完成するまでのプロセスも透明回線の作品だから、そこも全てさらけ出す感じで進めていきましたね。

1週間寝泊まりしながら作品を作り続けていた当時の写真がこちら。

SHUN:Twitterで「ここでやってるから見に来て!」と告知して。

うきち:ライブパフォーマンスしてることを認識してもらうことで、学内だけど友だちが友だちを連れて来てくれる連鎖も生まれたんですよ。

SHUN:結局2作品を生み出すことができて、何とか飲み会に参加しました。そこからいろんな人に声をかけてもらえるようになり、イベントなどにも出れるようになっていったんです。

早い段階から学外で活動していたので、表現する楽しさを身をもって感じていた。だから、就職という選択肢は自然と生まれなかったんです。

在学中はどんな活動をしてたんですか?

うきち:オレはペイントとデザイン、SHUNがペイントとイラストレーション、としおが映像と音響。そんな風にそれぞれのステージがあって、3人のやりたいことを1つにまとめて表現するのが透明回線です。そのスタイルは昔も今も変わってなくて、やりたいことを持ち寄って形にして、活動につなげていく感じでした。

としお:初めての学外での活動は、滋賀県の長浜で行われたイベントだったよね。

SHUN:毎年参加していたWHOLE9が急遽行けなくなったことで、代打として声をかけてもらったんです。今までベニヤ板1枚分のサイズしか描いたことがなかったのに、このイベントでは4枚分!失敗したらどうしよ…って、最初は描くことがすごく怖かったのを覚えています。

うきち:でも、ぶっつけ本番でやってみると、めちゃくちゃ達成感と満足感があったんです。

SHUN:自信にも実績にもなったからね。

うきち:全然知らない人に見られながら描くのは初めてだったし、活動のスタート地点があのイベントで本当に良かったなと今でも思いますね。

そこからいろんな活動を続けていく中で、透明回線としての手応えを実感できた瞬間はありました?オレたち、イケてるかも的なやつです。

SHUN:イケてると思ったわけじゃないですが、3人とも同じ感覚で鳥肌が立った瞬間はありました。元々3人とも目指すカッコ良さは同じ所にあるけど、好きなものはバラバラだから、そこを持ち寄って形にしていくのがスタイル。そのスタイルを確信できたのが、2013年に参加した京都のチャプターゼロというイベントです。

うきち:京都府内の芸大が一同に集まり、新入生を歓迎するためのイベントですね。

SHUN:そこに透明回線も呼んでもらったんですが、イベント前日にとしおがいきなりアイデアを出してきたんです。

としお:プロジェクションマッピングって、知ってる?ってね。

国内でも徐々に認知され始めた頃ですね。

SHUN:そうみたいなんですけど、僕らは「何それ?」状態で…。でも、としおは既にプロジェクターを購入してたんです(笑)。それで、こんなことやあんなことができるから、明日やろうと思うと言い出して。

うきち:そして、いつものようなノリで「おもしろそうだし、いいやん!」と(笑)

SHUN:イベントではとしおがピアノを弾いて、その音に反応するようなエフェクトの映像演出をしてたんですけど、オレたちの絵に光がバチっと当たる瞬間に歓声が起きたんです。

観客からの歓声が湧き上がったという、京都チャプターゼロでのイベント風景。このイベントが、透明回線としてのスタイルを確信するキッカケに。

うきち:参加したペインターが全員横並びで作品を描いてたので、オレたちのブースだけ光ってる状態だから、余計に目立っていてね。

SHUN:活動をスタートしてライブペインティングを1年間続けてきた中で、初めての歓声でした。描いてる後ろから「おー!」「スゲー!」みたいな声がどんどん聞こえてきて。その瞬間は、3人とも同じ感覚で鳥肌が立ちましたね。「これだ!これこそがオレたちのスタイルだし、これこそがおもしろいことなんだ!」って全員が実感したと思います。

その感覚を知ってしまうと、どんどん追求していきたくなりますよね。ちなみに、就活とかは?

うきち:早い段階から学外で活動していたので、表現する楽しさを身を持って感じていたんです。大学の授業は社会に出るための基礎を学んでいたけど、オレらは既に外で活動しているし、感覚的にも逆転の現象が起きていて。正直、就職して働くよりも、アーティスト活動していく楽しさを知ってしまった状態。

SHUN:自分たちの作品が評価してもらえることを学生で体験できていたし、全てのリアクションが100%自分に返ってくる快感も知ってしまった。就職するとその体験が遠のいてしまうし、そう考えるとできへんなと。

としお:結局みんなそんな感じで、就活してなかったしね。3人ともこのまま続けていくんだろうなとは、薄々感じてはいましたね。

就職せずに、透明回線を続けていくことは自然な流れだったと。

うきち:そうですね。周囲は就活してたけど、オレたちは動いてなかったので。就職という選択肢はなかったし、みんなに聞いてみると、やっぱり同じ想いを持ってましたから。

SHUN:それぞれの動きを横目で見ながら、「就活やってないな。同じやな」という感じ。ただ、今思い出してもそこまで深く話し合った記憶はないけど、3人の想いは1つやったんです。

まだまだ若輩者だけど、これからの関西のシーンを盛り上げていきたい。そして、次の世代のためにも、透明回線の活動を通じてライブペインティングの文化を育てていきたい。

就職はせず、透明回線や個人として活動していくことを選んだわけですが、実際のところはどうでしたか?

うきち:とりあえずそれぞれがバイトしながら、創作活動は続けていました。メンバーの3人と大学の先輩3人で一軒家を借りて、寝食をともにする感じで。

としお:毎日いろいろ話しながら、それぞれが自分のステージの創作をして、透明回線としても活動しているような状態でしたね。家賃が1人2万円くらいだったので、かなり助かってました(笑)

ハングリーな状態ですね。続けていく不安や焦りは?

SHUN:それは今でも感じる時はありますけど、当時も特に話してはなかったですね。

うきち:個人としても透明回線としても、どうやって表現の幅を広げていくかってことばかり考えてましたね。透明回線は個人の活動があってこそ成り立っているものだから、まずは個人の創作活動をしつつ、3人のやりたいことを透明回線で表現する。その繰り返しだったように思います。

その積み重ねがあって、徐々に活躍する場が広がっていったんですね。今回もビジュアル制作を担当しているFM802主催の「HIGH!HIGH!HIGH!」はいつから手がけるように?

としお:ありがたいことに2016年から担当させてもらってます。昨年はコロナで開催中止になったので、今年で5回目。ビジュアル制作としても転機になった仕事ですし、初めてアニメーションも作らせてもらいました。自分たちでも手応えを感じられたので、この時を境にアニメーションも精力的に作るようになっていったんです。

透明回線で制作した今年度の「HIGH!HIGH!HIGH!」のビジュアル。

今年で5回目の担当になることで、年々ハードルが上がるんじゃないですか?

うきち:自分たちの過去の作品が、イイ意味でハードルにはなりますね。でも、「今年はこうしたいよね」という表現は絶えず持ち続けていれる状態なので、そこを信じて制作してます。

SHUN:FM802の担当の方にも信頼していただいてるので、制作は自由にさせてもらってます。ただ、思考することは年々深まっているし、コロナ禍を体験していることで、絵を描くことの本質も考えるようにはなりましたね。カッコいいもの、ハッピーなものだけを描くのではなく、自分たちの作品にどんなメッセージを込めるか。そこが大切だなと。

作品のクオリティだけではなく、活躍とともに求められるものがより深かったり、高かったりする証ですね。それと同時に、アーティストとしての意識も変わってきたとか?

SHUN:関西のライブペインティング界隈では、ずっと自分たちが一番の若手やったんです。でも、最近になってようやく次の世代の子たちが出てきた。

うきち:これまでも出てきてはいたけど、途中でやめたり、就職したりしてね。

としお:僕らの次の世代までは、4〜5年くらい空いてましたからね。

SHUN:自分たちは先輩にいろんな場を提供してもらっていたからこそ今につながっているので、その役目が来たと思ってます。そういう意味でも、関西のライブペインティングシーンをどんどん盛り上げていきたいし、文化を育てていきたい。自分たちは次の世代にまだ還元できていないので、その目標に直結するような活動をしていきたいなと。

うきち:次の世代に続く道をね。どんどん挑戦して前例を作って、それを形にして還元していけたらいいですね。

常に、目につく所にいる存在としてですね。では最後に、個人として、透明回線としてのビジョンを教えてください!

うきち:透明回線は、個人の活動がしっかりできていれば必然的に付随してくるもの。だから、アーティストとしての個人の取り組みを突き詰めて、表現の幅を広げていきたいと思ってます。絵のスタイルは昔から変わらないし、ライブペインティングしているとどんどん荒々しくなっていくので、その荒々しも研ぎ澄ませていきたいですね。

SHUN:昔から描きたいものしか描かないわがままな性格ですが、だからこそ「描いてほしい!」と指名される仕事も増えてきました。最近ではニューバランスとコラボさせてもらったりもして、個人の活動はとにかく自分のことだけを考えるようにしてますね。これからもどんどん作品を作り続けて、自分の価値を高めていくことが目標。その先にある透明回線としては、先ほど話したようにシーンを盛り上げ、文化を育てていく役目を担えればなと。

としお:個人としてはバンドのPVや楽曲提供をしているので、その活動を変わらず挑戦的に続けていくこと。そして、2人と同様に、透明回線に還元していくこと。僕らが「おもしろい!」と思うものを作り続けていくことは当然だけど、そこのレベルやクオリティは果てしなく高めていきたいですね。後は、3人が生み出すものを客観視して、透明回線としてのテーマを明確に打ち出していくこと。それは、次の世代はもちろん、僕らの作品を見ていただける人たちへのメッセージにもなると思うので。そこを見つけられたら、透明回線はまた次のステージに行けるんじゃないかなと思ってます。

 


<EVENT INFO>

HIGH!HIGH!HIGH!

日程 8月3日(火) 12:00 OPEN / 13:00 START
会場 大阪城ホール
出演 クリープハイプ / SUPER BEAVER / DISH// / XllX / yama / ヤバイTシャツ屋さん / ROCK KIDS 802 EXTRA CRAZY BAND(Key:トオミヨウ / G:阪井一生(flumpool) / G:小野武正(KEYTALK) / Ba:辻村勇太(BLUE ENCOUNT) / Dr:高橋武(フレデリック) / GUEST VOCAL:(TERU(GLAY) / トータス松本(ウルフルズ) / 山村隆太(flumpool))) / OCHIKEN'S GARDEN(梅田サイファー(KennyDoes
/ ふぁんく / KZ / KBD / テークエム / KOPERU / peko / SPI-K) / それとこれとはべつ(菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) / 村山☆潤 / 東出真緒(BIGMAMA)) / 金井政人(BIGMAMA)&斎藤宏介(XllX&UNISON SQUARE GARDEN))
MC FM802 落合健太郎
料金 全席指定8,020円(税込)
※入場者全員にマスク&サラヤ アルコールハンドジェル (ハローキティ ケース付き)(60ml) プレゼント
 →サラヤ アルコールハンドジェルハローキティ ケース付き60ml
当日券 全席指定8,500円(税込)
    イベント当日12時〜南玄関にて
グッズ 販売はイベント当日10時〜北玄関にて
URL https://funky802.com/high/


Profile

透明回線

関西を中心に活動するクリエイターチーム。2012年5月に大阪芸術大学で結成し、うきち(ペイント・デザイン/@uk1mm)、SHUN(ペイント・イラスト/@shun_nnnn)、としお(映像・音響/@toshikinakamura)の3名で構成。主にライブペインティングとプロジェクションマッピングを組み合わせたライブパフォーマンス作品を制作。近年ではMVやアニメーションなどの映像作品をはじめ、企業へのデザインやイラストの提供など、ライブパフォーマンスの枠を超えた活動を行っている。

https://www.towmei.com/

share

TWITTER
FACEBOOK
LINE