植物は、神様からのプレゼント。植物屋<fytó>の寺田悠佑さんが教えてくれる、日常の中にある小さな喜びの見つけ方。
お金を払わなくても楽しめる、自然のお花を知ってもらえたらいいなと思っているので。
小さい頃から植物はお好きだったと仰っていましたが、植物を好きになるきっかけは何かあったんですか?
特にはなかったですね。物心つく前から庭の花を植え替えたり、当たり前のように植物に触れていて。小学生の時には、100均で売ってる植物をお母さんにお願いして買ってもらってました。
小学生で自分の植物を欲しがる子って、珍しい気がします。
そうですね。もともとかわいいものが好きで、男の子が好きな乗り物とかライダー系とか全然興味がなくて。シルバニアファミリー買ってもらってたんで(笑)。だから本能的に、かわいいものが好きだったんだと思います。
シルバニアファミリーを愛でる男の子だったんですね。
うち男4人兄弟なんですよ。僕が末っ子で、兄たちはもっと男の子らしくて戦いごっことかしてたんですけど。僕がかわいいものを楽しむことをお母さんが喜んでくれるのを感じていて、そういうものを選んでたのかなって、あえて思い出そうとしたらそんな気がします。
男の子4人兄弟っていうのが意外でした。
お母さんは1日15合のごはんを炊いて、餃子は200個作ってました。
すごい、もうお店の量ですねそれは(笑)。ちなみに寺田さんは、子供の頃は将来になりたいものとかはありましたか?
その時々にマンガの影響を受けてパン屋さんになりたいとかはありましたけど、でもこれと言っては。あ、でも牧場で働きたいっていうのは常時ありました。小4の文集にも、牧場で働きたいって書いてます。ふわっとですけど、牧場とか森の中でジャムを作って暮らすような、そういう自然の中で働きながら楽しみながら生きるっていうのをすごい求めてたなって思います。
やっぱり職業、仕事っていうよりも、どう生きるかっていうことを小さい頃からなんとなく意識していらっしゃったのかもしれないですね。大学時代に塾を始められたのはなにがきっかけですか?
高3のときに、僕たち友達同士5人のために、友達のお兄ちゃんが1年間受験をサポートしてくれたんです。それがその塾の始まりで、そのお兄ちゃんが2年ぐらい続けた後、就職する事になったので、僕と友達が引き継いだっていう感じです。
じゃあ、寺田先生みたいな。
寺さんって呼ばれてました(笑)。今でもその子たちが、結婚したり子ども生まれたりすると、しょっちゅう会いに来てくれるんです。それが本当にうれしくて。この大事な塾の生徒たちと、これからも関係を築いていけるような仕事をしたいなと思っていたので。
教え子さんって、どれぐらいいらっしゃるんですか?
6~7年やってたから、多分100人ぐらいですね。高校のすぐ隣に一軒家を借りて、しかもすごく本気で勉強させる塾だったんです。夏休みは1日10時間以上やるっていうのを約束できる子しか入れないくらいの本気塾でした。
1日10時間!!
だから生徒も本気ですし、それを求めるからにはこっちも全力でサポートするしっていう感じで。一軒家で1年間、家族よりも毎日長い時間過ごすので、本当にすごい仲良くなるんですよ。高3の子達の受験終わった最後のホームルームの時はもう号泣。そういう青春みたいな塾でした。
1年駆け抜けたあとは、先生も生徒も感動ですよね。
やりがいはめっちゃありました。一生懸命やってる人に対して自分も一生懸命与える喜び、尽くす喜びみたいなのをそこで初めて知ることができて。人のために一生懸命になるのってこんなに楽しい事なんだなって実感しました。
でもそこまで真剣に向き合ってしまうと、ご自分の時間っていうのはとれないですよね。
自分でも、これができるのは25歳ぐらいまでかなって思ってました。全力で仕事をする楽しさはその時に学べて良かったなって思います。
お店を始められるときに、<fytó>という店名の由来はどこからですか?
ここの美容室がirini(イリニ)っていうんですけど、がギリシャ語で“平和”やったかな?そういう感じの意味で。白い壁に青い扉みたいなのも、ギリシャテイストなんですよ。ここで植物のお店を始めるから、ギリシャ語で植物を調べてみたら“fytó”だったので、あ、かわいいやんってそのまま使いました。
ギリシャ語なんですね。内装がすごく素敵だなと思ってました。
3番目の兄が大工なので、ここの什器やカウンターは全部兄が作ったんです。兄たちもクリスチャンなんですけど、親切を示し合うことが幸せにつながるっていうことを教えられてるから、そのおかげでみんな仲良くできてますね。
お兄さんが作られたんですね!アンティークかなと思ってました。ご兄弟仲が良かったら、お母さんも安心ですね。
そうですね、反抗期とかは大変だったでしょうけど(笑)。
ちなみに、寺田さんはこれからやってみたいことか、何かイメージされてるものってありますか?
さっきもお話した、野花を一緒に探すワークショップはやりたいですね。お金を払わなくても楽しめる、自然のお花を知ってもらえたらいいなと思っているので。
お金を払わなくても楽しめるっていうところがポイントなんですね。
お金がそもそも好きじゃなくて、お金のやり取りも苦手なんです。ワークショップも、参加者さんからお金を取りたくはないけど、でもそれが仕事になったらいいなっていう想いはあるんです。だからこれは願望なんですけど、行政なり企業なりが、僕にお金を払ってそういう仕事をさせてくれたらいいなって思うんです。
物を売ることでお金をもらうっていうより、そういう考え方や喜びをシェアすることをお仕事にするっていう感じですね。
どこかの企業さんとか大阪市とか、雇ってくれたらいいんですけどね(笑)。もしそれが本当に仕事になったら、もう植物を売らなくてよくなるので。でも、fytóの植物を好きでいてくれる方があるから完全にやめちゃうのもどうかなと思うんですけど、でも僕自身は売るのはあんまり好きじゃないっていうのはあって。
たしかに、寺田さんの植物へのスタンスとかを考えると、売るっていうのにちょっと違和感があるのは何となく分かる気がします。
そうなんですよね。生活のためにお金は必要なので、売らなくてはいけないんですけど、でもお金を出さなくてもかわい植物はその辺にもあるんだよっていうのを知ってほしいというか。
そういう事をお伝えする事が仕事になればいいですよね。教えるのもお上手そうですし。
まずはこの春から、ワークショップを何回かやってみようと思っていて。どんな感じになるのかなって緊張してます。
子供も喜びそうだし、大人も野花の存在に気付けると楽しいですよね。
むしろ、メインは大人向けかなと思っています。子供はやっぱり外にいるので、植物と触れ合ってるんですよ。でも大人はそういう喜びを忘れてるし、なにより圧倒的に大人のほうが疲れてますよね。
お花に癒されるのは、たしかに大人のほうですね。
しかも、感動できるのも大人なんですよ。大人になっていろんなものを失ったあとに気付いたほうが、感動できるので。
まちを歩いて野花を見つけて癒されるワークショップ、需要があるような気がします。野の花に気付けるぐらいの自分になりたいなって思いました。
きっと、もっと幸せになれると思います、そういう小さなプレゼントに気付けたら。
<寺田さんのお気に入りスポット>
COCO COFFEE(奈良県香芝市逢坂)
その場に居合わせたお客さんと店主さんと、みんなで喋りながらコーヒーを飲めるのが、日本っぽくなくて好きです。“人”が好きな人は絶対に好きになれるお店。いちばん好きなお店です。
海が見えるところ
奈良県で生まれてずっと住んでるので海への憧れがあります。海は気持ちを穏やかにしてくれます。瀬戸内海の穏やかな凪を初めて見た時は感動して泣いてしまいました。
空が広いところ
抜けるような青空も、移り変わる雲の形も、朝焼けや夕日に染まる空も、いつも奇跡的な美しさがあります。空は神様のキャンバスやなぁ〜と思っています。
寺田 悠佑
奈良県出身。兄夫婦のヘアサロン
植物はオンラインショップでも購入可能。
営業日やイベント出店などの予定はInstagramから。
https://fyto.thebase.in/