「車も、カジュアルに着くずす感じ」。古着屋から中古車屋に転身した三上直記さんが提案する、“チープアップ”な車の楽しみ方。
住宅街に突如あらわれる、アジトのような建物。そこには何台もの欧州車がずらりと並んでいて、なにやら怪しげな雰囲気……。いや、本当に秘密基地みたいなんです、こちらの中古車ショップ。今回取材に伺ったのは、大阪市大正区にある「ゼロカートラブル」。欧州車を専門に扱う中古車販売店なのですが、“チープアップ”という独自のカスタムを施すことで知られています。あえてドレスダウンしてダサかっこよく仕上げるこのスタイルが注目を集め、今やその人気は全国区。東北から九州まで納車に駆け回っているオーナーの三上さんに、新しい車の楽しみ方をお聞きしました。
「わざわざダサくした車、誰が買うねん」
“チープアップ”という言葉は、三上さんの考案なんですよね?
そうですね、僕が勝手につけました(笑)。高級なアルミのホイールをスチールに履き替えたり、キャリア積んだり、中古の欧州車をあえてダサめにカスタムするスタイルです。簡単に言うとドレスダウンなんですけど、ダウンって語感が好きじゃなくて。むしろ、そうすることでおしゃれになるってイメージを出したいと考えていたら、チープアップって言葉が降りてきたんですよ。チープとアップで韻も踏んでるし、これはええなと。
あえてダサめにってところがいいですね。
ベンツに、軽トラみたいなテッチンホイール履かせたりね。でも始めた当初はまわりから「そんな車、絶対に需要ない。流行るわけない」って散々言われました。わざわざダサくして誰が買うねんと、鼻で笑われましたね。
三上さんがそのスタイルに行き着いたのは、何かきっかけがあるんですか?
僕もともとアパレル出身で、古着屋をやってたんですよ。21歳の時、自分の店を出すために全財産をユーロに替えて、ヨーロッパに古着の買い付けに行ったんです。そしたら、現地ではベンツにキャリア積んでキャンプ行ったりとか、ガンガン雑に乗ってるんですよ。日本では高級車とされている車が、すごいラフに扱われてて。それが、めっちゃかっこよかったんです。
古着の買い付けに行って、車に魅了されたと。
もうずっと車の写真ばっかり撮ってました。日本に輸入される欧州車って高級なイメージですが、向こうでは大衆車ですから、かしこまって乗る感じじゃないんですよ。欧州車を、現地スタイルでカジュアルに乗りくずすのがおしゃれやなと思ったのが、チープアップの原点ですね。
もともと、車はお好きだったんですか?
小さい頃からめっちゃ好きでした。ベースはずっと車。すれ違う車の車種を全部言えるような子供で、古着屋のときもシトロエンAXに乗ってました。中高生になってファッションに興味が出てきてそっちの道に進みましたが、ある日「車屋さんをやりなさい」ってお告げが降りてきたんです。思し召しですね。それで、古着屋をやめて、27歳で中古車屋になりました。
いきなり中古車屋って、なれるものなんですか?
テレビの「マネーの虎」に出演していた南原さんという車屋の社長さんが、中古車屋を始める人の応援プログラムみたいな事業をされてたんですよ。そこに加入して、車業界に足を踏み入れました。でも、この業界の人はみんな車のことすごい詳しいんだろうなと思っていたら、どうも様子が違って「お前ほど詳しいやつはおらん」って言われるんですよ。ド素人のつもりで飛び込んだら、自分がめっちゃ車オタクであることがわかりました。
業界の人からしても、マニアックだったんですね。
みたいですね。自動車評論家の小沢コージさんとかが面白がってくれて、メディアとかでもオタクキャラでいじってもらってました。
三上直記 naoki mikami
滋賀県出身。服飾の専門学校を卒業後、古着を扱うセレクトショップを経て、自身の古着屋をオープン。幼い頃から無条件に好きだった車を商売にするべく、資金を貯めて27歳で「ゼロカートラブル」を開業。元古着屋という経験もあり、レギュラー古着感覚で手ごろに自分好みの車を楽しむスタイルを提案。あえて鈍臭いカスタムでダサかっこよく仕上げる“チープアップ”を標榜し、注目を集める。現在、主食の代わりに二八蕎麦・十割蕎麦を食べる「蕎麦ダイエット」で8㎏の減量を達成。
ゼロカートラブル
〒 551-0031 大阪市大正区泉尾1-36-10
営業時間/11:00~20:00
06-6533-5045 (営業時間外は090-5040-2794)