大阪文化服装主席卒が“ファッション”を諦めた理由。河野伸平さんが語る“好き”との適切な距離感。
SNSで話題になった「まるごとメロンケーキ」、先日MARZELでも特集した『zawa 珈琲とたまごかけごはん』……大阪のなんかオモロイことの裏側には、実はある1人の男がいました。彼の名前は河野伸平さん。株式会社グローレベル代表取締役社長として自社ビジネスを背景に、現場目線のコンサルティングを行っている方です。
でも実は河野さん、もともとはゴリゴリのファッション畑の人間。大阪文化服装学院を主席で卒業したあと、セレクトショップでは販売員やバイヤー、大手グループ企業ではウェブマーケティングやブランドディレクターに携わった経歴を持ちます。
なんでそんな人が、メロンケーキやたまごかけごはんをプロデュースしてるんだ?気になったMARZEL取材班は、大阪・福島のGrowLevel galleryを訪ねました。
20台半ばでぶち当たった「自分が売っている服を自分のお金で買えない」というジレンマ。
河野さんのプロフィールを見るとゴリゴリのファッション畑の人のように思えますが、どうして今はコンサルティング業に?
端的に言えば、自分の好きな服を仕事にするのを諦めたからです。
それはどうしてですか?
僕はもともと<ヴェロニク・ブランキーノ>や<ラフ・シモンズ>といったような、アントワープ系のファッションが好きで、大阪文化服装学院を卒業したあともしばらくはそういうファッションを仕事にしていました。
でも年齢を重ねるにつれて、「なんかこれ違うな」と思うようになって。
「なんか違う」とは?
僕が好きだったブランドの服は、定価で言えばジャケットで何十万円はします。でもぶっちゃけて言えば、アパレル業界ってよほど大きな会社でもない限り、給料ってそこまでもらえません。
だから全然違うことを仕事にしているお客様が、ガンガン僕の好きな服を買っていく光景を目の当たりにしながら、自分はお金がないから買えないんですよ。
好きでやっている仕事なのに、自分の給料じゃ目の前にある好きな服を買えない。24歳とか25歳の、一番服を買いたい時期にそういうジレンマに気付いてしまった。
アパレル業界に勤める人は、多かれ少なかれぶち当たるジレンマかもしれませんね。
そうだと思います。そこで僕はファッション好きとして関わらなくていい仕事に就こうと思いました。
それが大手グループ企業だった?
はい。給料も良かったし、子供服の会社だったので当時の僕には全く興味のない分野でした。
結果はどうでしたか?
取り扱っている服に興味がないぶん、ITの技術や経営のスキルをたくさん学ぶことができました。この頃に学んだものは、確実に今につながっていると思いますね。
通販事業の売上を5年間で十数億円以上拡大したり、赤字に苦しんでいた会社の子供服事業をリブランディングして過去最高収益を出したりと、実績を作ることもできました。
せっかく手に入れた大企業での仕事を捨てて、起業したのはなぜですか?
社内でいろいろあって(笑)。ただ最初はアパレル企業に転職しようと思っていたんですよ。ずっとアパレルしかやってこなかったから。
でもそのことを当時の取引先の社長さんに相談したところ、「お金は出してあげるから、自分の会社をやりなさい」と言ってくださって。この方は僕の仕事をずっと見てくれていたので、信用してくれていたのだと思います。そこまで言ってくださるのならと、起業を決意しました。