突っ走って足踏みして、いよいよ10周年。THE大阪なHIP HOPフェス『AIR CONTROLLER』のKEITAさんが仲間と築いてきたのは、純粋なHIP HOP愛と全部やっちゃうDIYスタイル。
9月3日(日)に服部緑地野外音楽堂で開催されるHIP HOPフェス、『AIR CONTROLLER』(通称:エアコン)。入場無料のフリーフェスなのに、大阪を中心に超実力派のアーティストが毎度揃い踏みとあって、多くのファンから高い支持を得てきました。コロナ禍の影響もあって3度の中止を乗り越え、いよいよ迎える10周年&10回目の記念すべき節目。アーティストのラインナップは今回もすごいんですが、このフェスへの想いや歩んできた道をじっくり聞きたくて、オーガナイザーの1人でもあるKEITAさんにインタビューしてきました!HIP HOPを思いきり楽しむお客さんの裏側で繰り広げられていること、ブレないスタイル、仲間を超えたファミリーのような結束などなど、エアコンがエアコンである理由が読むほどにみんなにも届くかな、って思います。さぁ、9月3日(日)はエアコンです!大阪が誇る純粋なHIP HOP愛に満ちたこのフェスで、ハジけるっきゃないでしょ!踊るっきゃないでしょ!!HIP HOPをもっともっと愛するっきゃないでしょ!!!
大阪のHIP HOPを魅せるというのが、僕らの根本のテーマ。でも、設営してステージにも出て、片付けまで全てを自分たちでしてるから、限界突破すぎてフェス最中の記憶がないんです。
コロナ禍で3度の中止を経て、いよいよ今年で節目となる10周年&10回目を迎える大阪のHIP HOPフェス『AIR CONTROLLER』(通称:エアコン)ですが、主催者サイドもファンの皆さんも「ようやく!」って感じだと思います。
そうですね。2011年にスタートして、10回目という節目がなかなか迎えられない状態だったので感慨深いものはあります。年数的には12年にはなるんですが、僕らとしては10周年の10回目っていう感覚ですね。
関西のヒップホップファンからはすごく支持されてるフェスだと思うんですが、エアコンのことをもっと知ってもらうためにルーツの部分からいろいろと聞かせてもらえればと。どんな経緯で立ち上げようと思ったフェスなんですか?
話はだいぶ遡るんですけど、高校生の時に大国町のDJスクールに半年ほど通ってたんです。そこで出会ったTobaccoってヤツがいて、流れで一緒に活動する機会が増えていくと、ずっとDJだと思ってたのにラップもしてるし、ダンスまでしてることがわかって。しかも地元の幼馴染としてるって言うから、イベントとかに遊びに行って僕も仲良くなっていったんです。その幼馴染が、HIP HOPクルーのWARAJIでした。
やっぱり必然的に繋がっていく感じですね。
まだ続きがあるんですが、そのTobaccoは、HOT CONNEXION CREWのメンバーでもあってね。Tobaccoとの出会いから、エアコンの軸となるメンバーと繋がっていったんです。
なるほど。KEITAさんも高校卒業してからはDJとしての活動を?
DJスクールに通ってからは、生活の中心がDJでしたね。大学も行ってましたがずっとDJしてましたし、就職して北陸に勤務することになりましたけど、DJで大阪に戻って来ることがめちゃ多くてね。結局退職したんですが、大阪での転職先もDJとしての活動に融通が利く仕事を選んでたんです。今は十三にある買取専門の『レコードシティ』で働きながら、音楽レーベル『アイタル』も運営してます。
働き始めると、好きだったものから離れてしまう人も多いですが、音楽からはずっと離れられなかったんですね。KEITAさん自身、『アイタル』ではどんな活動を?
自分の軸にあるのは音楽だし、ずっと続けるものだと思ってましたからね。『アイタル』ではミックスCDを出したりしながら、ゆるーく活動を続けてます。立ち上げたのは2013年なので、こっちも今年で10周年!たまたまレコードをプロデュースする機会があって、小売店に卸す時に品番とレーベル名が必要ってことで立ち上げた音楽レーベルです。当初はそのレコードのためだけでしたが、せっかく立ち上げたから続けていこうと思って、現在に至るって感じですね。
続けることって、やっぱり一番大変だし難しいから素敵やと思います。では、エアコンの話に戻しますが、WARAJIやHOT CONNEXION CREWとの出会いから生まれたのが、エアコンなんですよね?
エアコンはWARAJIやHOT CONNEXION CREWが軸になってて、その両クルーが出会って生まれました。みんなHIP HOPが大好きで、中でも王道的なHIP HOPを愛してるから意気投合したんです。僕も含めてほぼ同年代だから、「なんかやろうや!」「おもろいことしたいな!」って。
HIP HOP愛と同年代のノリ、それって揺るがないものですよね。
2011年当時、僕らのやってたHIP HOPシーンでは野外フェスがなかったと思うんです。もちろんフジロックとかはありましたけど、そっち系のフェスは限られた人しか出演できてなかった。だからこそ、必要やなと。
自分たちのシーンを盛り上げるためにも、そのシーンをより多くの人へ表現するためにも。
ですね。だから、とにかくHIP HOPをしようっていう想いが強かったですね。当時のテーマとしては、大阪のHIP HOPを魅せるというのが僕らの根本にはあったと思います。
大阪のHIP HOPシーンは昔からアツかったですが、確かにクラブイベントのイメージが強かった。野外だと、その想いもより解放されそうですもんね。服部緑地野外音楽堂を選んだ理由はあるんですか?
WARAJIの地元なんですよ。デカイことしたかったし、地元やし、緑地の野音しかないなと。場所選びはすぐに決まりましたね。
主催者メンバーの地元だと、地の利もありそう。
今日の取材場所でもあるWARAJIクルーのペインター・LANPの実家に、フェス前日から泊まり込みで準備してましたね。もう完全に合宿所状態でした(笑)
うわー、それはだいぶ濃そう(笑)。ちなみに『AIR CONTROLLER』というフェスタイトルには、どんな意味があるんですか?
空気を清浄する的な意味だったかなと。WARAJIのJambo Lacquerが名付け親です。他にもRebel musicとか、ちょっと反抗の気持ちを押し出したような案もありましたが、いろんな案の中から多数決で決まりました。
そういうタイトルを決める時とかって、めちゃワクワクする時間ですよね。準備とか大変なこともあったと思いますが、記念すべき1回目の思い出って何かありますか?
楽しかった記憶は断片的にあるんですが、マジでちゃんと覚えてないんです…。野音の予約からアーティストのキャスティング、準備、設営、ステージの進行、ドリンクや物販、ゴミの片付け、撤収作業まで、全て自分らでやってましたからね。協力してくれるスタッフもいましたけど、全然少なかったですし。
ってことは、出演者も総動員して?
はい(笑)。とりあえず朝はスピーカーをみんなで運ぶところから始まって、ステージの出番前後でドリンクを販売したり、合間にゴミを片付けたり…。しかも真夏で汗だくになりながらお酒も飲んでるから、ほんまに細かい記憶がないんです。みんながみんな掛け持ちで動き続けて、限界突破するくらい走り切ったって感じ(笑)
完全燃焼ですね、それは。
正直ちゃんと覚えてるのは、テーマソングを作ってた時に最後まで埋まらなかったフックをJambo Lacquerが捻り出したことくらい。思わず口ずさみたくなるフックが決まり、みんなで「ええやん!」って言うたのは覚えてます。
それも、フェスが始まる前の話ですもんね(笑)。集客的にはどうだったんですか?
1回目は200人前後だったかなと。何人を目標にするとか決めてたかどうかも覚えてなくて、とにかく初期衝動で始めたフェスだったので。ただ、漠然と1000人くらいは集めたいとは思いましたし、マックス2000人くらいは収容できるキャパがあるので、まだまだ埋まりきれてない状態ではありましたね。
ってことは…?
当然、赤字でした(笑)。フェス予算として主催者メンバーそれぞれから3万円徴収して元金を作り、後はチケット収入と当日のドリンクや物販が収益に。まぁ赤字でしたが、お客さんからは「ありがとう!」ってめちゃ言われたので、来年も開催することは満場一致で決まりましたね。誰も異論なかったですし、悩むことすらなかったなと。
KEITA
DJ・選曲家、ライター、和レゲエ愛好家。大阪のHIP HOPフェス『AIR CONTROLLER』のオーガナイザーの1人であり、音楽レーベル『アイタル』を運営。HIP HOPと和レゲエと風呂をこよなく愛しながら、音楽にまみれた日々を過ごす。和レゲエへの深い愛と造詣がほとばしるnote『和レゲエ数珠繋ぎ』は必読。