表現の場づくりに徹する絶妙コンビ!関西最大級の無料ローカルフェス『GREENJAM』を仕掛ける大原智さん・大塚克司さんに、イベントにかける思いを聞いてみた。


自分がかっこいいと思う人に自信を持って向き合いたい。それが『GREENJAM』を続けるバイタリティなのかもしれません。

第1回の『GREENJAM』は2014年でしたよね。その時のことは覚えていますか?

大原:一番覚えてるかもなぁ。知り合いのアーティスト10組くらいに声をかけて、伊丹市民には馴染み深い昆陽池公園という場所でやりました。

その時から変わらず無料のイベントだったんですか?

大原:無料しか選択肢がなかったんです。フェスをやるなら昆陽池公園、というのが僕らの中では確定事項で、ここでできないならやらへんって感じでした。市外の方はあまり知らないかもしれないんですが、昆陽池公園は伊丹市民にとって幼稚園の遠足でも行くような場所で。地域に根ざした公園なんですよね。全員がやるならここでっていうイメージを持ってたから、それはブレずにみんなの中にありました。

なるほど。伊丹で暮らしている方なら、一度は行ったことのある場所なんですね。

大原:昆陽池公園は公共の場所やから、行政の決まりで有料のイベントができなくて、ぶっちゃけると無料という選択肢しかなかったんです。僕らがただのええ奴やから無料でフェスをやってるわけじゃないですよ(笑)

理解しました(笑)。ボランティアスタッフを募って毎年実施しているんですよね。来場者の数は年々増えていってるんですか?

大原:そうですね。初年度の来場者数が延べ6,000人で、前回の19年が25,000人かな。2年目、3年目で万人規模のイベントになりました。

大塚:そうそう。初年度は1,000人くらい来てくれたらいいなって言ってたんですが、予想をはるかに超える集客で。飲食店も午前中で完売しちゃって、初回やからみんな用意しなきゃいけない量もわかんなかったんです。飲食店が15店舗くらい、マーケットが20店舗くらいだったかな。

大原:お昼に食べるごはんがなかったもんね(笑)。本当にわけがわからんくらい大変だった。

当時はどうやって告知されたんですか?

大原:まだインスタも主流じゃなかったし、Facebookが中心でした。ポスターを頑張っていろいろ貼りに行ったくらいかな。

大塚:告知もそこまでやってなかったから1,000人くらいかなと予想してたけど……。

大原:多すぎて意味がわからんかったもんな。16年までは1日のみの開催で、16年に初めて荒天で中止を経験したんです。だから「去年のリベンジや!」と、17年から2日間の開催にしました。

『GREENJAM』は毎年ちょうど台風の時期にやりますもんね。

大原:時期は初年度から毎年変えてないですね。特にこだわりがあるわけじゃないけど、サイクル的にそうなってて。時期を変える話もずっとあるけど、そうなると準備する時期も変わってくるからなかなか難しいです。だから9月開催をほぼ10年続けています。

『GREENJAM』の実行委員は何人くらいいらっしゃるんですか?

大原:実行委員は企画・制作部隊が20人ほどいて、この間MARZELで取材をしていたナホちゃんも一員なんですよ。毎年4月か5月に第1回会議があって、その時点で行政との協議や資金の問題など開催の目処を立てとかないといけないんで、そこまでは僕一人で準備しています。そういう意味では一年中何かしらやっていますね。

どういう思いで実行委員会に入る方や関わり始める方が多いんでしょう?伊丹を盛り上げたい!みたいな感じなんでしょうか。

大原:その辺は『もぐらカフェ』の店長をしている大塚に任せてるんですよ。

大塚:わかんないけど、僕もそれは気になるところですね。やっぱりイベントが開催されるまでって気持ちの起伏が激しいんです。めちゃくちゃしんどいけど、やり終えた後の達成感が中毒になってる気がする。実行委員のみんなもイベント開催に必要なスキルが年々上がってると思います。

大原:やばいっすよ。上がりまくりです。

大塚:企画の土台は基本大原が考えていて、僕らはそれを実行する部隊なんです。やり終えた時の達成感と、あとは『GREENJAM』に関わっている自負がそれぞれあるんじゃないのかな。

大原:きっと関わり続ける理由はそうなんやろうな。きっと岸和田のだんじりとかも、やってみたらむっちゃ気持ちいいんやと思いますし。『GREENJAM』も一種のお祭り感覚で、僕は「文化祭」って呼んでます。

大原さん自身は、どんな気持ちで取り組んでいるんですか?伊丹を盛り上げたい!っていうところなんですかね?

大原:それはあんまりないっすね。基本自分たちの生活環境内のことしか考えてないです。だから「街」とか「伊丹」とか言われてもあんまりよくわからない。ただ、自分たちの周りはもちろん、優れたスキルを持っていたりおもしろい人がいたりすると、その人たちが表現できる場を作りたいと思うんです。そういう場所を提供する取り組みをすると、自分たちの生活環境内に色んな繋がりができる。もちろんそれによって街に活気が生まれてきたと言われると嬉しいけど、あくまでそれは結果ですね。なので、自分自身が魅力的やなぁと思う表現者が活躍する場を作ることが続ける理由かな。

僕はアーティストやダンサー、クリエイターに対して、少しコンプレックスがあって。僕自身が元バンドマンというステージを降りた人間だから、その人たちに対する憧れがあって、そこに対峙したいっていう思いもあるですよ。「あなたがやってる事めちゃくちゃ魅力的っすね!けど、僕もこんなことをやってるんすよ!乾杯!」っていうのを言いたい。ステージで輝いている人たちと対等に、恥ずかしくない自分でいたいんです。ある種、それが僕にとって最大の開催する理由かも。恐ろしく大変なイベントですけど、自分がかっこいいと思う人たちに対して、簡単にできないと言ったり諦めたりしたくないなと思っています。

大原さんって実はとっても熱くて、そういう思いが原動力になっているんですね。これまで『GREENJAM』を運営してきて、大変だったことや予想外の出来事ってありましたか?

大塚:めちゃくちゃあるけど、台風で1日目が中止になって2日目だけ開催した17年かな。

大原:開催日の1日目に台風が直撃したんです。台風が来るとわかっていながら、会場設営はできませんと業者さんに言われて。まぁ危ないから当たり前なんですけど。

会場設営は通常どれくらい時間をかけるものなんでうか?

大原:通常は3日間です。だけど、どうにか開催できる方法がないかとシュミレーションを重ねに重ねて、2日目の午前0時頃に台風が過ぎることがわかって。そこから設営をして、イベントスタートの朝10時までに完了できれば、2日目だけでも開催できるんちゃうかと。3日間かけて行う設営を、夜中の0時から朝10時までの10時間でやりました。

それはできちゃうものなんですか?

大塚:直前にSNSや口コミでボランティアスタッフを募集したら、100人以上の人が手伝いに来てくれました。感謝しかなかったです。

大原:あれはもうすごかった。みんなで鬼のように頑張ったな。もちろん予定通りではない部分もあったけど、10時までになんとかできる状態まで持っていきました。

で、そのまま寝ずにイベント運営と。

大原:そうですね。16年は台風で中止になってしまってたので、17年の10時間で用意した2日目が、僕らにとって15年以来2年ぶりの『GREENJAM』だったんです。気合も入っていて、そこで一気に規模が大きくなるんですけど、寝てへんわ、人はめちゃくちゃ来るわで、わけがわからなかったです(笑)

それだけ助けてくれる人や応援してくれる人が周りにいたんですね。逆に嬉しかったこと、喜びを感じることを教えてください。

大原:『GREENJAM』を評価してもらって、それがいろんな事に繋がるとやってて良かったと思います。だけど、個人的にはやっぱりかっこいい人から評価してもらうことかな。やっぱり音楽畑の人間なんで、それこそMARZELでも取材していたSundayカミデさんに、「日本で一番いいパークフェスティバルやと思ってる」と言ってもらえたのは嬉しかったし、『ソウルフラワーユニオン』のボーカルの中川さんにも、「毎年呼んでよ」と言ってもらえて。アーティストからの言葉は、僕のパワーになっていますね。あとは当日の風景かな。毎年改めて、ほんまにいい風景やなぁと思うんですよ。色んな人が混じり合って音楽を聴いていたり、家族で仲良くごはんを食べていたり……。イベント当日は忙しくてバタバタしていますが、ふと我に返ってその光景を眺めながら、気持ちいいなぁと思います。

私は今年初めて『GREENJAM』に伺いましたが、スタートと同時にたくさんの人が来られていたのが印象的でした。開催場所に猪名川河川敷運動公園を選んだのはどうしてだったんですか?

大原:今年は伊丹の昆陽池公園でやるのが難しくて、今まで関わってくれた方が来やすいようなるべく近くでやりたかったんです。あと、猪名川河川敷運動公園はコロナ中でも音楽イベントを開催していた実績があったり、『GREENJAM』に関わって下さる方の中に池田の方がいたり、池田の市民文化を盛り上げるイメージできたというところから選びました。昆陽池公園だともっとギュッとした感じになっちゃうので、あのゆったり感は新鮮でしたね。レジャーシートを敷いて、ピクニック気分でゆっくりご飯が食べられるのも良かったですし。伊丹からは離れてしまいましたが、池田に住む方々との新たな繋がりもできて、あの場所で開催できたことを嬉しく思います。

19年〜22年までの『GREENJAM』。さまざまな人が混じり合う素敵な空間、楽しい雰囲気が伝わってきます。
来年は『GREENJAM』10周年!僕らの活動が、結果として誰かの一歩や街の元気に繋がれば嬉しいです。
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Profile

大原 智

伊丹市出身、『一般社団法人GREENJAM』代表。バンド活動を経て、11年より音楽教室を主宰。14年より地元の同世代の仲間たちと無料の音楽フェス『GREENJAM』をスタートし17年に社団法人化。最近は伊丹の空き物件を改装して物件貸しを行う「sukima不動産」を始め、新たなチャレンジを応援する。

Profile

大塚 克司

伊丹市出身、『GREENJAM』共同代表。通称“かっちゃん”。伊丹中央サンロード商店街にたたずむ『もぐらカフェ』の店主を務めており、その気さくな人柄でみんなの相談役に。ダンスのインストラクターなども行っている。

Event Data

GREENJAM

音楽、アート、ファッション、デザインなどが融合した関西最大級の無料ローカル野外フェス。2014年のスタート以来、市民と一体となり開催されている。

HP:https://itamigreenjam.com/
YouTube:ITAMI GREENJAM公式チャンネル

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