夜遊びでしか生まれない何かがある。東京、ニューヨーク、大阪を駆け巡ったOrangさんのシネマティックな半生から見えてくるもの。


好きなことを商売として成り立たせながらおじいちゃんになっていく。そういう世界を見てみたいです。

Orangさんが手がける店舗は、それぞれスタッフさんもかっこよくて、のびのび働かれているイメージがあります。何か社内で意識されている雰囲気作りがあれば教えてください。

基本的にスタッフには「夜遊びしなさい」って言ってます。しかも同じ場所に行き続けるんじゃなく、新しい場所に行けって言ってます。もちろんそれには意味があって。新しいコミュニティの子と仲良くなって、その子たちがお店に来てくれるようになるループを作りたいし、自分たちが何かイベントをやるときにも、そういう子たちが集まってくれるんです。もちろん会社の運営も大事なんですけど、マインドセットとしては、夜遊びできない会社にしたくないというか、夜遊びが許される会社でありたいと思っています。たまに遅刻するスタッフもいて、それって普通の会社的には通らない話なんですけど、僕が「ガンガン行って良いよ」って言ってるので、それによって生じるある程度の不具合は、許容範囲かなと。

それよりも夜に遊ぶことで生まれる繋がりやインスピレーションのようなものが重要なわけですね。

あとおしゃれして行くところって、僕の中ではやっぱりクラブなんですよ。スタッフにも、クラブの中で「この人おしゃれだな」って思われる格好をしててほしいですね。そういう場所に遊びに来てる子ってファッションにアンテナを張ってる子だから、そういう部分の偏差値が高い子たちが自然にお店にも来てくれるのかもしれません。

『CopyArt』で開催されるパーティは20代のお客さんが多くて、若いエネルギーが渦巻いている印象があります。とても健全だなと。

確かにそれは意識してるかもしれないです。僕自身がもう50歳目前なんですけど、やっぱりファッションとか、—あんまり好きな言葉じゃないけど—ストリートカルチャーって絶対に若い子たちのものだし、その場所には本物の若さが介在してないと駄目だと思います。服屋として教えるべきことは教えるし「夜遊びはした方が良い」って伝えはするけど、そういう子たちのエネルギー自体は邪魔したくない。「それはかっこいい、それはダサい」みたいな価値観を植え付けることは、おじさんの悪いとこなんですよ。つい最近、Xで見て刺さったポストがあって。「知りたいことより伝えたいことの方が多くなったらおじさん」っていう。今、俺伝えたいことだらけだなって(笑)

なるほど!でもこうやってOrangさんの貴重な経験を伝えていくことも大切なことです。

僕も若い子たちが持ってる何かを持ち得ないんで、知りたいって思って接しています。…のはずなのに、気づいたら「いや、これはこうじゃないから」って言っちゃってたりしてね。そういう時は帰りのタクシーの中でめっちゃ凹んでます(笑)

最後に、会社として、そしてOrangさん個人として目指している将来的なビジョンを教えてください。

会社としては、ちゃんと給料が高くてスタッフが働き続けられる環境を作りたいですね。古着屋って給料が安いからみんな辞めちゃうんです。うちも今大して高くないんですけど、きちんとやってくれてる子たちにはちゃんと給料を渡して、できる限り一緒に働ける環境を作りたいと思います。いかに自分たちのスタンスを崩さず、続けていくことができるかですね。目標はやっぱり『FIVE STAR』なんです。今、僕の同級生の奴と一個下の奴が働いてて子どもも2人ずついるんですけど。その世代がアメリカに買い付けに行ってて、店頭では若い子たちが働いてて、社長は自由に動けているという。僕の同世代くらいが家族を養いながら働けてるのって、いわゆるストリートの業界の会社ではあんまりないんじゃないかなって。

確かに大阪でストリートウェアの最大手と言えば『FIVE STAR』ですね。

そうなりたいですね。もっと言えば、僕らみたいなクラブカルチャーに携わってた世代が食っていけるようになったのって、割と最近なんです。つまり、この世代がおじいさんになっていくのってこれから初めてのことだと思うんですよ。例えばサーファーって、かっこいいおじさんがいっぱいいるじゃないですか。あれってカルチャーとしての歴史がクラブカルチャーとかよりも余裕で長いんですよ。だからおじいちゃんになっても、それなりにどうなっていくかが見えてきてる。それに対して、クラブ界隈ってそこにぶち当たるのがこれからなんです。

「生涯現役」的なモデルケースが、まだないわけですね。

そうそう。だから楽しいことはちゃんと続けれてて、それが商売として成り立っていきながら、おじいちゃんになっていく世界を見てみたいですね。僕らの世代って、退化していくものと進化していくものをちょうど良いタイミングで見れてるんです。黒電話からiPhoneまで全部見てきて、次はARとかが広まってるのも見れる。さらにこの先のイノベイティブをいろいろ見れると思うと楽しみです。あと僕個人としては、何歳までクラブに行き続けられるかの挑戦をしたいですね。ローライダーみたいに改造した車椅子でクラブに遊びに行って、お茶とか飲みながら、杖でお姉ちゃんにちょっかいかけるみたいなおじいちゃんになりたいっす(笑)


<Orangさんのお気に入りのスポット>

三角公園(大阪市中央区西心斎橋1)
昔から集まったりチルしたりしてたので、アメ村で言えば、なんだかんだここっすかね。仕事終わりにスタッフとワン缶したりもしてます。

FARPLANE(大阪市中央区西心斎橋2)
最近はなかなか行けてないけど、アメ村の中では一番よく通っているバーですね。

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Profile

髙倍 優介 a.k.a Orang

東京都出身、大阪市在住。古着やインポートものを扱う『DAILY DOSE quality stuff』と『SIGHTO』、家具や雑貨、古着を扱う『CopyArt Collective』のオーナー。USカルチャーへの深い知見や、ファッションやダンス、クラブシーンに傾倒した経験を活かし、堀江〜アメ村エリア随一の人気を誇る3店舗をプロデュース。「Orang」は、RALPH LAURENの蛍光オレンジのニットを好んで着ていたことから先輩ダンサーに命名されたストリートネーム

https://ebcjp.com/

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