夜遊びでしか生まれない何かがある。東京、ニューヨーク、大阪を駆け巡ったOrangさんのシネマティックな半生から見えてくるもの。
「こうやって置いてみるとなんかかっこよく見えるっしょ」っていうのを提案したい。

大阪に移られてからは、クラブ界隈でも活躍されたと伺いました。
引っ越して半年くらいの頃にUNDER LOUNGEという箱でやってた1,000人規模くらいのパーティに行くようになるんですが、そこでKEISUKE君という元ダンサーの先輩と出会います。あらゆるクラブイベントを仕切っていて、どこのクラブも全部顔パスで入れるような方でね。僕も東京時代はHARLEMでパーティをやってたことを話すと、「今度、新しくクラブを開けるから、毎週土曜のヒップホップパーティの顔になってくれ」って言われて。だから大阪に引っ越してきて1年目でヒップホップのメインパーティのプロモーターになりました。要はフライヤーを撒いたり、集客したり、お客さんと乾杯したりという役割ですね。
おそらく週末平日問わずパーティがあった時代ですね。
そうそう。だから引っ越して程なく、ほぼ家に帰らない生活になってしまいまして。当たり前ですけど、3年くらいで奥さんがギブアップして東京に帰ることになって。僕はそのまま大阪でクラブに携わって。…で、気づけば24年が経っていました。

一気に駆け抜けましたね(笑)。古着店を開業したきっかけはなんだったんですか?
35歳くらいで一旦プロモーターも全部辞めて、デザイン事務所で働くことになるんですけど、その社長が、朝までとことん飲んでくれる人だったんです。入社して3年くらいの時に夜中のアメ村を飲み歩いてたら、たまたま内装工事やってる小さいテナントがあって。社長に「タカベ君やったら、このくらいの規模のテナントで何する?」って聞かれて、僕が「古着っすかね。洋服好きだし」って言ったらしくて。僕は全く覚えてないんですけどね(笑)
確かに、飲みの中でよくあるやりとりかもしれません。
そのデザイン会社は大手のクライアントを相手にしていたのもあって、それなりの額のボーナスもあったんですけど、そのボーナスをもらわずに蓄えておいて、代わりに会社のカードで好きなものを買っても良いし、好きなことやっても良いという自由な会社だったんです。しばらくしてまた飲みに行った時に「前に古着屋やりたいって言ってたん覚えてる?今がタイミングやから、やってみ!」って言われて。僕もどれくらい会社にお金が貯まってるかはうっすら分かってたから、自分の部署として古着屋を開けることにしました。それが『DAILY DOSE quality stuff』です。


https://dailydosequalitystuff.com/
Instagram:@dailydose_qualitystuff
初めから起業という形ではなく、デザイン事務所が母体だったんですね。
2店舗目の『SIGHTO』まではそうなんですよ。でも2つも店をやってたら、当然、本業のデザイン事務所の方が疎かになるじゃないですか。


https://sighto.net/
Instagram:@sighto_osk
確かに並行して稼働するのは相当大変ですね。
ちょうどそのタイミングで、シズルっていう家具に詳しい男の子が「一緒にお店をやりたい」って言ってくれて。僕も家具が好きだけど置く場所もないし、「良い場所があったらなあ」なんて言ってたらちょうど良いスペースのテナントに空きが出たんです。でも店舗も大きくてお金もかかるから、いよいよ銀行に借り入れをしたりしないといけない。それを社長に相談したら「これはもう独立やろ!」って言ってくれて。それで自分で会社を起こして、3店舗目の『CopyArt Collective』(以下:『CopyArt』)を開けたという流れです。

https://bringgoodhome.com
Instagram:@copyart_collective
それが2021年ですね。『CopyArt』の家具のセレクトの基準はどういったものですか?
今は女性のお客さんが多いんですが、オープン当初は「若い男子が金をかけずにかっこいい部屋を作れるようにしてあげたい」っていうコンセプトでした。気の利いた家具が欲しいって思っても、ブランドものだと手が届かない。でも若い子だったら、そのブランドじゃない何かでも十分だったりするじゃないですか。その「じゃない何か」を意識しました。名品はどうしても高くついてしまうので、そうじゃなく家にあったらなんかかっこつくものっていうのが揃うお店を作りたいなと考えて。例えば椅子を買うのに200万円とか言われたら僕らでも買えないけど、それっぽいのが2万円で買えるならそっちでも良くない?っていう提案ですね。年代とかブランドじゃない価値観でうちのフィルターを通して、「こうやって置いてみるとなんかかっこよく見えるっしょ」っていうのを提案したいなと。

髙倍 優介 a.k.a Orang
東京都出身、大阪市在住。古着やインポートものを扱う『DAILY DOSE quality stuff』と『SIGHTO』、家具や雑貨、古着を扱う『CopyArt Collective』のオーナー。USカルチャーへの深い知見や、ファッションやダンス、クラブシーンに傾倒した経験を活かし、堀江〜アメ村エリア随一の人気を誇る3店舗をプロデュース。「Orang」は、RALPH LAURENの蛍光オレンジのニットを好んで着ていたことから先輩ダンサーに命名されたストリートネーム