困難を乗り越えて深まった2人の絆。まばゆいほどに輝いて命を燃やす、浪花の女性漫才師・爛々が歩んできた10年。


萌々ちゃんが私を信じて待っていてくれたから、舞台に戻りたいと思い続けることができた。負けん気だけは今も変わらず持っています。(大国)

2021年頃からコンビとしてはかなり上り調子だったと。その後、2023年に大国さんの体調不良で活動を休止されるまでの話も聞かせてください。

萌々:2023年の5月に『NHK上方漫才コンテスト』で準優勝して、8月に翔グランプリで初めて優勝できたんですよ。これからめっちゃライブを入れてもらえる、頑張るぞって思っていた3、4日後くらいに大国さんが倒れてしまったんです。

テレビ出演も増えて忙しくなって、不調を感じていた時期ではあったんですか?

萌々:最初は忙しいから体調壊したんかなくらいでした。確かに当時のGoogleカレンダーを見返すと、毎日タスクが4つくらい詰まっているみたいな状態で。大国さんがしばらく本調子じゃなくて、前日の仕事を体調不良で休んで、次の日が『せやねん』のロケやったんですけど、その休んだ日に1日連絡が取れなくて。『せやねん』のロケバスが朝7時に迎えに来るって連絡しようとしてたら、全然それどころじゃなくて、倒れて急遽搬送されたっていうのを大国さんのお母さんから聞いたんです。

大国さんは、その頃の記憶が曖昧だったりするんですよね。大国さんの話を聞いた時、萌々さんはどんな気持ちでしたか?

萌々:最初に倒れて運ばれたって聞いた時は、知らん間に無理させてたんかなと思って。てかそんなに大国さんって頑張れるねや、しんどかったんなら言えよ、みたいな感じで軽く考えていましたね。1ヶ月くらいですぐ戻ってくるやろうと思っていました。ちょうどオーサカクレオパトラのりえさんにご飯に連れて行ってもらってた時、大国さんのお母さんから「ガンが見つかった」と電話がかかってきたんです。相方がガンだったというショックと、すぐに帰ってくると思っていた甘さとのギャップで、何が起きているのかほんまに訳がわからなくて。周りに迷惑をかけないためにはまず何からしないといけないんやろっていうのを、半分パニックになりながらりえさんに喋っていました。そしたらりえさんが、「そんなんええから、まずはあんたの心やろ。大丈夫か?」って言ってくれて、そこでようやく相方がガンになったというのを実感して、涙が溢れてきました。りえさんがその場におってくれてほんまに良かったです。ずっとりえさんと一緒にいられるよう、ステッカーをスマホケースに貼っています。

どれくらいお休みになるのか、これからどんな風になるのかもわからない中で、爛々を続けてこれたのは、やっぱり2人で舞台に立ちたいという強い思いがあったからでしょうか?

萌々:いつまで休止になるか聞くのも野暮やと思っていて。それに辛い時期はめっちゃあったけど、大国さんが1度も病まなかったんですよ。悪性リンパ腫と呼ばれる血液のガンと脳炎を併発したんですが、鎮静剤を打って眠っている状態で治療したので、本人は抗がん剤治療を受けてる時の痛みを感じていなくて。副作用の辛さもあまり記憶にないみたいなんです。意識がはっきりしてくる頃には、抗がん剤治療もある程度終盤に向かっていて。体も慣れている状態だったので、本人はこっちが拍子抜けするくらい前向きでした。前向きすぎで、愚かに思えてしまうくらい。私はちょっと待ってくれ、あんた今の状況ほんまにわかってる?って思っていて。器官を切開して喉からチューブが繋がっている、声も満足に出せないような状態で、それでも舞台に立ちたいって言ってることが、純粋すぎて逆に残酷というか。ほんまに舞台に戻って来られるのか、お客さんに受け入れてもらえるのかわからん状態やのに、本人は明日にでも戻るからみたいなテンションで。でもそんな大国さんの強さが、私を動かすエネルギーになっていましたね。私が大国さんのために、大国さんが私のために頑張りたいっていう感覚は、いっぱい喧嘩もしてきたけどずっとブレずにありました。

大国さんがそこまで前向きでいられたのはどうしてですか?どうして舞台に立ちたいとずっと言い続けることができたんでしょうか?

大国:萌々ちゃんが私を信じて、ゆっくり待っていてくれたからですね。待つことって大変だと思うんですよ。ピンで漫談をやったりコーナーライブに出たり、本来は2人で立つ舞台に急に1人で立つって、覚悟も勇気もいることだと思うんです。それを1人でやってくれていたから、私も同じように頑張りたいと思うことができていました。

萌々:「ゆっくりでいい。焦らんでいい。ちゃんと待っとくから大丈夫」って私はずっと言っていて。それが心の支えになったって言ってくれるんです。私からすると相方が大変なことになっているのに、こんな言葉しかかけられへんのかっていうもどかしさもあったんですけど。

大国:でも普通はきっと待ってられないですよね。早く舞台に出たいし、早く売れたいって思うじゃないですか。面白い後輩がどんどん出てきて焦りや葛藤もある中で、萌々ちゃんが根気よく待っていてくれたおかげで舞台に復帰することができました。その根底には、後輩に負けたくない、勝ったんぞっていう負けん気があるようにも思います。

萌々:昔から負けん気強いもんな。

そんな中、2025年12月に開催された萌々さんの単独ライブ『麗々』に大国さんがサプライズで出演されて、舞台に復帰を果たしました。この時のことも教えてください。

萌々:復帰したのは、大国さんがリハビリ施設を退院して半年後のことでした。本人は退院したらすぐに復帰できると思っていたみたいですが、出たらまた芸人としての生活がスタートしてしまう。本人は早く出たいと言っていても、ほんまに準備は万全なのか、心配事もたくさんあって。大国さんが傷つく形になってほしくないし、お客さんにもきちんと事情を知っておいてほしいし。爛々を応援してくれる人たちにとってもベストな時期っていつなんだろうと、慎重に時期を選びました。

その舞台もかなり準備して挑まれたんですよね。

萌々:爛々の活動を休止して私がピンで活動するようになって、初めての単独ライブでした。もともと単独をやるなら大国さんが復活する時にと考えていて、もしピンで漫才劇場を埋めることができたなら、私が1人でも戦っていける自信になるし、そこに大国さんがいるなら相乗効果しかないなって。だから、大国さんが出演することは内緒でライブの準備を進めました。きっと出るって言うてて出えへんのが、お客さんにとって1番辛いことやから。当日までどっちでもいい状態で準備をして、無事に2人で舞台に立つことができました。
どちらかというと体調を崩して出られなくなるより、てんかんになって舞台上で倒れちゃうことの方が心配で。大国さんが出る時は、照明がなるべく強くならないようにしたり、音のボリュームも若干抑えめにしたりっていうのを徹底して。いつもはやらない直前リハの時間を取って、漫才も1度通しでやらせてもらったんです。全員が同じゴールに向かって、ある意味でのスタートに向かって協力してくれて、一緒にライブを作ってくれたスタッフさんたちにも感謝しかないです。

『麗々』でのワンシーン。 ©︎FANYマガジン
大国さんがサプライズで登場。 ©︎FANYマガジン

とっても素敵な劇場ですね。

萌々:みんなが同じ熱量で動いてベストを尽くしてくれたから、私も挫けへんかったんやろうなと思います。

活動休止中、萌々さんはピンで漫談をしていましたね。

萌々:そうなんです。私も生活していかなあかんから、1人でも舞台に立たせてもらえるよう必死でした。でもちょっと迷いはありましたね。私がピンで舞台に立つって言うたら、萌々が1人でもやっていけるって大国さんが思ってしまわないのかなって。もちろん2人でやる漫才の方が面白いと思ってるけど、漫談もある程度形になってきて、1人でやれている自分が少し怖くもなりました。そんな状態で活動していると、心がちょっとずつカラカラになってしまって、モチベーションを保つのが難しくなってきたんですね。そんな時、大国さんが復帰したら漫才にできるようなネタを考えようと思ってやってみたら、断然漫談をするのが楽しくなって。周りのみんなも「良くなってきてるやん」って褒めてもらえるようになって、すごく嬉しかったです。そんな葛藤を乗り越えて、私の“大国さんのために”という意識がさらに強くなりました。

私たちは小娘とクソババアの関係性(笑)。今の大国さんを、今の爛々を受け入れて、好きになってもらえたら嬉しいです。(萌々)
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Profile

爛々

共にNSC大阪校38期。1997年生まれ、大阪府出身の萌々(左)と、1990年生まれ、京都府出身の大国麗(右)によるコンビ。NSC時代にコンビ解散のタイミングが重なり、2017年に結成。デビュー後、同期の中でも最速で劇場入りを果たし、2022年『女芸人No.1決定戦 THE W』で決勝進出。2023年『第53回 NHK上方漫才コンテスト』準優勝。同年8月、芸歴7年目以下のよしもと漫才劇場の翔メンバーが総出演する『Kakeru翔GP』にて初優勝するが、同月、大国の体調不良による活動休止を発表。その後、萌々は漫談などをしながらピンで活動し、大国は治療に専念。2025年12月に開催された萌々の単独ライブ『麗々』に大国がサプライズで登場し、約2年4か月ぶりに舞台復帰を果たす。現在は、主催ライブを中心に少しずつ2人で舞台に立っている。

萌々: Instagram / X
大国麗: Instagram / X

YouTube: 爛々のお耳にセニョリータ 茶の間で爛々

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