ちょっといびつなパワーバランスこそ僕らの同級生感。Podcastも始動した注目のお笑いコンビ<例えば炎>の愛すべき関係性について。
忙しくてもネタをやり続けている人ってカッコいい。今後も劇場で面白いライブをいっぱいやっていきたいです。

例えば炎さんといえば、昨年のM-1敗者復活戦での異例となるタイムオーバーから火が付いて、急激にお仕事が増えたコンビでもあると思います。最近めっちゃ忙しいとラジオでも仰っていましたが、忙しさへの耐性はつきましたか?
タキノ:去年の今頃はゴルフ場で夜勤のバイトしていて。芸人の先輩と一緒に働いていたので、そこで新ネタを考えたり漫才の設定やボケの相談をしたりできてたんですけど、忙しくなってバイトを辞めたことで、その時間がなくなってしまったのがしんどいなと思います。バイト中のおもんないノリとかも楽しかったから、そこでストレス発散ができなくなってしまいました。体力的なしんどさより精神的なしんどさの方が大きいです。
芸歴5年目以内の賞レース『UNDER5 AWARD 2025』(2025年6月22日に開催済)を目前に控えていますね。
タキノ:僕らは賞レースの優勝を狙って獲れる緻密なコンビではないんで、大会を盛り上げるパフォーマンスができたら1番いいなと思っています。
個人的には、例えば炎さんの適当感のあるツカミとネタに必要なさそうな無駄な発言がめちゃくちゃ好きで。毎回言ってることの中身が違うから、今日はどんな感じなんやろうって楽しみにしています。
タキノ:それは毎回意識していますね。新ネタがあまり作れていないぶん、外れた展開を楽しんでほしいなって。
逆に作り込むことはないんですか?
タキノ:緻密さに関しては諦めていますね。僕らは基本コント漫才をするんですけど、伏線を張るのが好きじゃないんです。あんまり作り込みすぎるとクサくなっていくというか。緻密に作り込もうと思ったこともあるんですが、人間的にその要素が皆無なので、僕らとテンションが合わなくなるんですよね。

コント漫才をしてるのに、2人が2人のまま喋っているのが面白いです。
田上:タキノは知らないけど、僕は田上しかできないんでそれをやってるだけです。
タキノ:僕がボケとツッコミで、田上がボケナスですね。ボケナスの田上も重要なキャラクターというか。正確に言うと、トリオでいうところの僕が大ボケとツッコミで、小ボケが田上って感じです。それが1番見やすい形なんかなと思ってます。
田上:僕は小ボケと、“降りる”っていうのをやってます。あんまりいいことじゃないんですけど、客席で異常事態が発生したらすぐ漫才から降りてそれを指摘するとか。ラジオでも言ったんですが、この前はドーナツ・ピーナツさんの漫才中におっさんが喋りかけてきてワクワクしました。事件とか異常なことが大好きで、携帯が鳴ると喜んだりもします。
タキノ:まだ数回ラジオ残ってんねん。変なこと言うな。

今後は、『例えば炎のあ、エレガンス』をどんな番組にしていきたいですか?
タキノ:芸人にとってラジオが面白いのはすごいステータスやし、今はラジオの注目度も上がっていて、そこでの能力も問われている時代だと思うので、全12回のラジオを通して「例えば炎って面白いんや」って思ってもらうことが目標です。ラジオって全国どこでも聴けるから、面白いって思ってもらえる人をどんどん増やしたいです。
例えば炎さんは東京でも人気がありますよね。
タキノ:同じネタをやって東京の方がウケたりすることもあります。もちろん関西を盛り上げるのが理想ですけど、東京の先輩にも聴いてもらってまずは面白いという印象を持ってもらいたいです。
田上:マユリカさんとか、あんなに不細工な2人を全国に羽ばたかせたのもラジオがきっかけで。ラジオってすごい媒体だと思うので、2人の関係性とか面白さを落とし込んでいけたらなと思います。で、あわよくば昔の田上少年みたいな人に聴いてもらいたいなと。こんなに好きなように下ネタ言って、ダラダラやってる大人がいるんやとか思ってほしい。中学時代の僕に、こんなんやれてるでって僕らのラジオを聴かせてあげたいです。

芸人としてはどんな風になっていきたいですか?
タキノ:どんなに忙しくても、ネタをし続けている人はカッコいいなと思います。ジャルジャルさん、ニューヨークさん、さらば青春の光さん……。テレビを主戦場にしつつも単独ライブを続けてる人はカッコいいですね。僕らはまだ5年目なんでまだいっぱい賞レースもありますけど、ネタを評価してもらったうえで人間的な部分に興味を持ってもらえたら嬉しいなと。ネタもラジオも面白くできたら1番いいなと思っています。今の段階ではテレビの人気者になるより、劇場で面白いライブをいっぱいやっていきたいという思いの方が強いです。
田上さんの目指す芸人像はありますか?
田上:特になくて。でもバッテリィズの寺家さんと家が近くて、たまに「最近どうなん」とか話しながら歩いてるんです。最近その道にあるバス停に、寺家さんがでっかく映ったオールフリーのポスターが貼られてて、なんかめっちゃすごいやん夢あるぞって思いました。いつかそんなことを誰かに思わせてあげれる存在になりたいなって思います。
タキノ:有名になって喜んでくれる人が多かったらいいよな。みんなが応援したいと思える芸人になっていきたいです。
田上:バッテリィズさんは一昨年初めてM-1の準決勝に行ったんですが、その前日に寺家さんとご飯食べに行かせてもらったんです。去年はたまたまバッテリィズさんと僕ら2組とも準決勝まで行けて、前年の準決勝の話を聞いてたから、まさか一緒に行けると思わなくて感慨深いなと感じていました。僕は後輩に背中を見せられるような人間じゃないけど、大きな舞台で実際に見たことや感じたことは伝えていきたいなって思います。

すてきですね。例えば炎さんのネタって1回目ももちろんいいんですが、2、3回見てたらもっと面白くなってくるというか。
タキノ:意味わからんことが多いんでね。ちょっとずつ咀嚼していかんと。
田上:でもそれやと絶対賞レース獲れないですよね。M-1の審査が2ヶ月後とかやったらいいのに。12月に決勝をやって、2月に審査して優勝発表するんやったら僕ら結構いけるかもしれないですね。実際劇場に観に来てるファンの方とかも、その場ではあんまり笑ってなくて、帰りに思い返した時が1番笑ってるらしいです。「あれ何やってん」って言うて。
タキノ:去年のM-1敗者復活戦以降、土日の寄席に出してもらう機会も増えて、ちょっとずつ一般的なお客さんの感覚がわかってきたんです。ここはウケるんや、ここはウケんのやっていう。お笑い好きを唸らせながら、お笑いを初めて見る人も笑かすっていう、絶妙なバランスを追求していきたいです。ありがたいことに今はそれを試す機会をたくさんもらえてるので、しっかり生かしていきたいなと。1回見ただけで意味がわかるような漫才をしたいです。


<例えば炎のお気に入りスポット>
宝来橋の高架下(宝塚市)
NSC時代に2人でよくネタ合わせをしていました。宝塚って上品な街やし、家族や友達に見られたら恥ずかしいんで目立たない場所で。(タキノ)
ネタ合わせの合間に武庫川で水切りとかしながら。僕、得意なんですよ。(田上)
<INFORMATION>
『例えば炎のあ、エレガンス』

2025年6月にスタートした、例えば炎がパーソナリティーを務めるラジオ関西の12回限定Podcast番組(毎週金曜23時頃〜配信)。先輩に「ギリギリ素人」「ガチ舐め」などと言わしめた同級生コンビが、時間に捉われないトークで“脱素人”を目指す。好評なら番組の継続も?!
X: @a__elegance
YouTube: @aelegance

例えば炎
大阪NSC43期生のタキノルイ(前)、田上(後ろ)からなるお笑いコンビ。共に宝塚出身で、中学校の同級生同士で2020年4月にコンビを結成。最初はNSC41期生として入学したが出席日数が足りず、1万字の反省文を期日から遅れて提出するも受け取ってもらえなかったため、43期生として入り直すことに。2024年には『M-1グランプリ』の準決勝に進出し、敗者復活戦をきっかけにじわじわと人気に火がつく。2025年3月に開催した初単独ライブ『~エレガンス×傀儡兄弟×例えば炎 スリーマンライブ~「ワレワレハタトエバホノオダ」』は即完売、ファンから贈られたフラワースタンドの異例の数も注目を集めた。雑誌『anan』(マガジンハウス)のビューティー企画「美ジュ-1グランプリ」への出演も話題に。