ちょっといびつなパワーバランスこそ僕らの同級生感。Podcastも始動した注目のお笑いコンビ<例えば炎>の愛すべき関係性について。

2024年の『M-1グランプリ』では、芸歴5年目にして準決勝進出という快挙!……にも関わらず、決勝進出を懸けて挑んだ敗者復活戦では、異例のタイムオーバーで敗退と型破りの自由さを見せつけたお笑いコンビ・例えば炎。先輩芸人のニューヨークからは「ギリギリ素人」と呼ばれ、「令和のナメ漫才」とも称される彼らのスタイルは、昨年のM-1敗者復活戦以降たびたび注目を集めてきました。2人は中学の同級生同士で、ボケもツッコミも全部やりたいタキノルイと、特にこだわりのない田上という不思議なパワーバランスで成り立っているのも気になるところ。今回は、今年6月から12回限定でスタートした彼らのPodcast番組『例えば炎のあ、エレガンス』(ラジオ関西Podcast)の収録にお邪魔して、ラジオへの意気込みや2人の関係性、中学時代の思い出など、色々お話を聞いてきました。今となってはしょうもないけどすごく笑える、そんなあの頃の“面白い”をずっと続けられるのは、同級生だからこそなのかもしれません。Podcastが好評だった場合は継続もあり得るそうなので、この記事を読んで気になった方はぜひ聴いてみてください!

僕らのいびつなパワーバランスは、同級生だからこそ成り立っています。ラジオ関西さんでラジオができてめっちゃ嬉しい!

(左)タキノルイ、(中)作家のかもさん、(右)田上

お2人がパーソナリティーを務める12回限定のPodcast番組『例えば炎のあ、エレガンス』が今年6月にスタートしました。今日は2度目の収録日ですが、始まってみていかがですか?

タキノ:初回の収録はミスしちゃいけないって思って緊張してたんですが、いざ始まってみると、まぁ収録やしあかん発言とかしても最悪切ってもらえるっていう安心感はありました。僕らは常にポッと何を言い出すかわからない状況なので。ちょっと慣れてきたっていうのもあって、今日の収録は結構ラフに楽しめたかなと思います。
ラジオが始まって感じたのは、常に起きたことを覚えとかなあかんなと。初回の収録はそれを意識して過ごせてなかったぶん、何を喋ったらいいのかわからなくて。今回は事前にこの2週間の出来事を振り返って話題を準備してたんで、やりやすかったっていうのもあります。

2度目の収録にしてラジオを続けていく感覚がなんとなくつかめてきたと。

タキノ:僕はもともとラジオにあまり馴染みがなくて。YouTubeの切り抜きとかでは聴いたことあるけど、ラジオ関西さんのラジオも、もっと身近な芸人さんのラジオもきちんと聴いたことないので、ラジオってどんなんやろうと手探りしてる感じです。

田上:逆に僕はラジオ関西さんのラジオをめちゃくちゃ聴いてるので、番組が決まって嬉しかったですね。中学生くらいから爆笑問題さんやバナナマンさんのラジオが好きで聴いてて、ラジオってこんな話してるんや、こんな下ネタ言っていいんや楽しそうとか思ってました。あ、別にラジオで下ネタ喋りたいわけじゃないですよ!

タキノ:自分の私利私欲を発散しようとしてるやん。

田上:テレビのトークは決められた時間内で簡潔に話さないといけないけど、ラジオはリラックスした状態で喋らせてもらえるんやって思ってて。最近も色んな芸人さんのラジオを聴いてたんで、自分もその機会をもらえたのが単純に嬉しいです。

田上さんは、実際に収録してみていかがでしたか?

田上:前回の収録は全く緊張せずダラダラ来たんですけど、よく考えたら喋ることとか事前に準備しとかなあかんのかってなりましたね。自分がリスナーとして聴いてる楽しいイメージのまま来たんで喋ることとか全然考えてなくて、でもそれはタキノの仕事やろなとかも思いながら。でも前回の収録でタキノに「お前もなんか話ある?」って聞かれて「ない」って答えたんですけど、それはマジでやばすぎるなと思ってしまって。そこで僕が聴いてる人たちもみんな話題を考えてきてるんやって気付いてハッとしました。ただリラックスして喋れるから楽しそうって思ってただけなんで。

そのマインドでいけてしまうのがすごいですね(笑)

タキノ:なんもすごくないですよ。

田上:やばすぎます。素人が紛れ込んでるだけなんで。何話すかは決めてないですけど、僕も前回の収録日から今日まで2週間のスケジュールを電車の中で確認しながら来ましたよ。まぁ絶対決めたほうがいいし、僕が聴いてたラジオも絶対そうやって臨んでると思うんで。僕は普段の仕事も全く何も考えずに楽しいとかだけでやってるんで、直していかなあかんなと思います。あとは、番組内のコーナーでやってる「ラジ関トラマン炎(※)」の前回までのストーリーを全然覚えてなかったんで、その復習もしながら来ました。

(※)ラジオ関西のキャラクター・ラジカンガルーとその仲間たちが繰り広げる人形劇。毎回トークのラストに即興で行われ、前回の予告からタイトルが変わったり謎の新キャラが急に登場したりと、予測のできない展開が話題。

ラジ関トラマンたちも収録中の様子をじっと見守ります。

今後に期待ですね。ちなみに「ラジ関トラマン」はどういう経緯で始まったんですか?

タキノ:すみません、「ラジ関トラマン」の話はNGでお願いします。

(笑)

タキノ:近くにウルトラマンのソフビーショップがあるので、せっかく神戸に来たなら神戸ならではのことをやりたいなと。ラジオ関西のキャラクター・ラジカンガルーもかわいらしいですし。企画の段階でこれだけは絶対やろうって決まっていました。

田上:僕はそこまでこだわってなかったんですけど、ディレクターの狩森さんが2つくらいプッシュしたいコーナーを持ってきてくれて、それが「ラジ関トラマン炎」と「火照る炎〜私の体がなんとかなら〜」(正しくは、「火照る炎〜私の体が火照ったなら〜」)とかっていうエロそうなやつやったんです。

ディレクターの狩森さんの後ろ姿。以前『はちくちダブルヒガシ』の取材でも登場してくれました!

タキノ:コーナー名くらい覚えといてくれよ。

田上:覚えたくもないねん。片方をいいって言っとけば「火照る炎」はなくなると思って「ラジ関トラマン炎」を推したんですけど、2つともしっかり採用されてて。俺は親とかにも聴いてほしいから嫌な顔してたのに……。だって今日収録した♯3の「火照る炎」のコーナーで、21歳女性から「肛門日光浴」のエピソードが届いたんですよ。すでにおかしい方向性になってきてんねん。

タキノ:田上が自分で全くボケへんから、代わりにリスナーさんがボケてくれてるんかもな。

田上:僕のためにか。喋りたい話がないとかダメなワードを平気で言ったりするんで、必要なことなんかもしれませんね。

一見するとタキノさんの方がやばそうですが、田上さんの方がサラッとやばい発言をするのが例えば炎さんですよね。

田上:全ての現場を飲み会や楽屋と同じテンションでこなしてしまってて。男同士で喋る会話をそのまましちゃっているだけだと思います。タキノとは中学からの友達なんで、その感覚で喋ってたら世の中的に言ったらあかん言葉とかが自然と出ちゃうんですよね。自分ではあんまり気付けてないことも多いです。

タキノ:田上は大学の時とかも地元で浮いてて。田上がなんか喋ったらみんなで黙って目を合わせて無視したりとかしてました。

田上:そういえば今日も何回かありましたね。僕の発言に対して、ブースにいる作家のかもさんとタキノが目を合わせて「こいつなんか言っとるで」みたいな顔をしてました。

タキノ:まぁそれが田上らしさでもあるんで懐かしい感覚もありますね。普段大人数でいるとあんまり気付けないし、1対1でラジオをしているからこそ、そんな感じやったなって思い出せるというか。僕らも同級生とはいえ芸人になったんで、普段は相方として接してるけど、ラジオの時は間に入る人が誰もいないぶん同級生感が増しますね。今日かもさんと黙って目合わせたのもデジャブみたいでした。もうええねんこいつっていう感覚を久々に思い出したりとか昔の話ができたりとか、色んなことが蘇ってくるから、2人でラジオをするのは楽しいです。

YouTubeチャンネル「例えば炎研究所」もありますが、ラジオとはどんな風に差別化してますか?

タキノ:YouTubeは少しでも僕らに興味を持ってもらえるよう広い層に向けて、ラジオは僕らのことを好きな人がより深く知ってほしいという思いでやっています。ラジオは俺らのことを知ってる体で喋ってるから、あんまり丁寧に説明できてない部分も多くて、リスナーさんを置いてけぼりにしないよう気を付けたいなと。YouTubeで興味を持ってくれる層を増やして、ラジオを聴いてくれるファンを増やすのが理想です。

2人の会話ってずっと聴いててもしんどくないんですよね。内容はほんとに覚えてないんですけど、私も以前溜まっている作業がある時にYouTubeをずっと流して笑ってました。

タキノ:情報がなさすぎで流れていくんでしょうね。ラジオって何かをしながら聴くもんなのかなって思ってるので、聴いてる人が疲れないようずっと変わらないトーンで続けていけたらいいなと考えています。

田上:今のところ12回で終わっちゃう予定なんですけどね。

タキノ:そこはプロデューサーの神吉さんと僕ら次第です。

神吉さんは、今回どうして例えば炎さんにオファーしたんですか?

神吉:やっぱり同級生コンビがずっと好きなんですよね。僕はおぎやはぎさんきっかけでラジオにハマったクチでして、同級生が喋っているものこそがラジオやとなんとなく思ってきたんです。僕が入社して担当してきたのが、からし蓮根さん、マユリカさん、ダブルヒガシさん、黒帯さん、みんな同級生コンビなんです。紅しょうがさんだけちょっと違いますけど、仲良しなこと前提で面白くしてくれるのが好きで。しかも例えば炎さんは2人とも兵庫県出身なので、神戸に本社があるラジオ関西との親和性も高いなと。

タキノ:そう言われると、僕ら同級生コンビではあるんですけど、同級生コンビの中で1番同級生っぽくないというか。同級生ってなんとなくパワーバランスが同等なイメージがあるんです。僕も意図的にパワーを持とうとしてる訳ではないんですが、田上がほんとに何もしないので、作業量や行動量で確実に僕のパワーバランスが強くなっていて。でもなんでそれが成り立ってるかっていうと、やっぱり同級生やからなんですよね。いびつなパワーバランスに1番同級生を感じます。普通は「なんで俺は頑張ってるのにお前は何もせえへんねん」とかって揉めたりすると思うんですけど、僕らは揉めないし解散も全く考えたことなくて。僕は田上が意味わからんこと言ってみんなに無視されてたのを知ってるぶん、こいつやったらしゃあないなって思えるから、逆にめっちゃ同級生なんです。

田上:僕もタキノに全部やってもらってるのに普通に言い返してる時、なんで俺言い返してんねやろって思ったりはしますね。それは同級生で友達の部分があるから言い返せるだけで、養成所で出会ったコンビやったらありえへん行動やろなとは思います。

タキノ:あんまり同級生に見えないけど、ちゃんと同級生なんですよ。だって同級生コンビとしてラジオにも選んでももらえたし。

田上:僕は正直ラジオ関西さん狙ってました。同級生コンビのPodcastが続いてるから、よっしゃ俺ら同級生や、呼んでもらわれへんかなとずっと思ってて。自分も好きで聴いてたんで、ラジオをやらせてもらえるならラジオ関西さんがいいなぁと。マンゲキのHPの所属芸人一覧で同級生コンビの数も数えてましたもん。

タキノ:兵庫県出身の同級生コンビやとフースーヤさんもいるんで、さすがに僕らはないかと思ってたんですけど、フースーヤさんは別のラジオ局で番組を持ってるからチャンスやぞと。同級生コンビって案外少ないんで、もしかしたらとは思ってました。

田上:先輩の三遊間・さくらいさんがラジオ大好きでむっちゃ聴いてるみたいなんですけど、「俺は二度と同級生コンビにはなられへんから、お前らがうらやましすぎる。二度と追い付かれへん存在や」って言われたことあります。それくらい同級生って貴重なんですね。

タキノ:ラジオが面白いって言われてる人たちって同級生コンビが多いもんな。昔の話ができるっていいですよね。

収録後、SNS用の写真撮影。田上さんは前回の収録と同じTシャツを着てきたそうで、「素人感が……」と悔やんでいました。
「ラジ関トラマン」の人形劇の様子もチラ見せ。写真左の田上さんの手は、“とんでもない一物(いちもつ)”だそうです。
この日の収録では、「臭すぎて耐えられへん」とタキノさんがおもむろに口臭ケアグッズを取り出して使用する場面も。ポムポムプリンのポーチがかわいかったです。
(左)収録中の様子を動画で撮影する狩森さんの手元。(右)ラジカンガルーのパネルがかわいい。
中学の頃の先生に「タキノについていくと人生棒に振る」と言われたことも。「エレガンス」は地元・宝塚にあるラブホテルから取っています。
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Profile

例えば炎

大阪NSC43期生のタキノルイ(前)、田上(後ろ)からなるお笑いコンビ。共に宝塚出身で、中学校の同級生同士で2020年4月にコンビを結成。最初はNSC41期生として入学したが出席日数が足りず、1万字の反省文を期日から遅れて提出するも受け取ってもらえなかったため、43期生として入り直すことに。2024年には『M-1グランプリ』の準決勝に進出し、敗者復活戦をきっかけにじわじわと人気に火がつく。2025年3月に開催した初単独ライブ『~エレガンス×傀儡兄弟×例えば炎 スリーマンライブ~「ワレワレハタトエバホノオダ」』は即完売、ファンから贈られたフラワースタンドの異例の数も注目を集めた。雑誌『anan』(マガジンハウス)のビューティー企画「美ジュ-1グランプリ」への出演も話題に。

タキノルイ: Instagram / X
田上: Instagram / X

YouTube: @例えば炎研究所

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