憧れの大舞台を経て劣等感が自信に変わった。松竹芸能に所属する注目の若手コンビ・オーパスツーの覚醒の始まり。

2025年3月の『第14回 ytv漫才新人賞』では、熾烈な予選を勝ち上がり松竹芸能から初めて決定戦に進出。4月に開催された『第60回上方漫才大賞』(カンテレ)新人賞にもノミネートされるなど、着実に実力をつけているお笑いコンビ・オーパスツー。『ytv漫才新人賞』決定戦の際は、審査員の霜降り明星・粗品から「技術はあるけど面白くない」と辛口の批評を受けたことでも話題に。それさえも自分たちの糧にして、「あの舞台を機に自信と度胸がついた」と前を向き次のステージを見据えます。今回はそんなオーパスツーに、芸人としてのルーツや松竹芸能に入所したきっかけ、今後の目標などを伺いました。「DAIHATSU 心斎橋角座」で毎月実施している単独ライブに加え、GW期間中に開催される松竹芸能所属の若手芸人3組による3夜連続ライブ『本気の松竹』にも出演予定。これまでのベストネタを引っ提げて先輩ゲストとバトルを行うそうで、その見どころについてもお話してもらいました。終始笑いながら2人で掛け合いをする様子が印象的だった今回のインタビュー。これを読んで気になった方は、ぜひライブに足を運んでみてください!
大阪・堺のインディーズお笑い事務所でコンビを結成。組みたての頃は、大ちゃんがすぐ「解散!」って言うから話し合いにならなくて……。

2人がコンビを結成したきっかけを教えてください。
しんじょう:僕は、大学を卒業した2年後くらいから芸人活動を始めました。松竹に入る前は、大阪・堺にあるデリートエンターテイメントという事務所に別々のコンビで所属していて。お互いコンビを解散した時、大ちゃんから声を掛けられて組むことになりました。
最初にデリートエンターテイメントさんに所属したのはどうしてですか?
大ちゃん:僕は大学を卒業後、フリーターしながらアマチュアで芸人活動をしていました。ZAZA POCKETSでやってた『ジョイパーク』っていうインディーズライブに、僕もしんじょうも別々のコンビで出ていたんです。『ジョイパーク』の主宰の方がデリートエンターテイメントの社長さんと知り合いで、どの事務所にも所属してない若手をヘッドハンティングした際に、僕らとしんじょうのコンビに声が掛かって数ヶ月差で所属することになりました。
そういう流れがあったんですね。芸人さんになろうと思ったきっかけとかってありますか?
大ちゃん:世の中に気持ちいいことっていっぱいあると思うんですけど、自分の挙動や発言で人が笑ってくれるのが1番気持ちいいことやなって。その気持ち良さを知ってるのにやらないのはもったいないと思って芸人を始めました。
笑わせることが気持ちいい、と感じた経験が過去にあったのでしょうか?
大ちゃん:“大ちゃん”っていう芸名にもつながるんですが、僕は小学校の中学年まで内気な性格で、あんまり前に出ない子どもだったんです。でも4年生の時、担任の先生に「お前は北川 大やから、今日から“大ちゃん”な」って言われて、そこからクラスのみんなが親しみを込めて”大ちゃん”って呼んでくれるようになりました。それを機にクラスで発言したりお楽しみ会で漫才をしたりするようになって、みんなが笑ってくれるのが嬉しくて、自然と人を笑わせるのが好きになりました。
やけど今考えると、小学1年生の時から「吉本新喜劇の座長になりたい」って言ってましたね。オカンにはなぜか「あんたは松竹や」って言われてましたけど。

すてきなお話ですね。お母さんが予知したみたいになってるのもすごいです。
大ちゃん:オカンの真意はわからないけど、結果的に今は松竹にいるので不思議な感じです。
新喜劇をよく見られていたんですね。
大ちゃん:やっぱり大阪の文化ですから。オカンと昼飯を食べながらよく見てました。その頃から楽しいことが大好きで、人が笑っている環境って心地いいなと思っていました。
しんじょうさんはいかがですか?
しんじょう:僕も小学生の頃にお楽しみ会のレクリエーションで友達とコントをして、それがむちゃくちゃウケて気持ちよくて、そこから芸人になりたいと思い始めました。小学校の卒業文集に「M-1優勝」って書いてるんですよ。それくらい芸人になる意思は堅かったですね。
一応もう1つ「教師になりたい」っていう夢もあって。大学で教員免許を取ってから芸人になろうと思ってたんですけど、大学受験に失敗して浪人する時に「芸人やろうや」って友達に誘われて、そのまま芸人活動を始めました。
好きな芸人さんはいらっしゃったんですか?
しんじょう:僕は、おぎやはぎさんがめちゃくちゃ好きで。エンタの神様でおぎやはぎさんを見て「なんやこの人」って衝撃を受けたんです。2人でイチャイチャしながら立ち話してるだけやのに、めっちゃ楽しそうって思ってました。
大ちゃん:好きな人がおりすぎます。夢路いとし・こいしさんとか。
しんじょう:え、ちっちゃい頃から?
大ちゃん:オカンと一緒に見てたから、その世代も好きやねん。トミーズさん、シャンプーハットさん、松竹の先輩のなすなかにしさん。チュートリアルさんやブラックマヨネーズさんも通ってきて今って感じですね。あとは辻本さん、内場さん、石田さん、吉田ヒロさんが座長をやってた時に新喜劇が好きでめっちゃ見てました。
もともと同じ事務所におられて、組む前から仲が良かったんですか?
大ちゃん:僕はよく話しかけてましたね。しんじょうはショコラティエっていうかわいい名前のコンビを組んでて、相方の見た目どんなんやったっけ?
しんじょう:スキンヘッドで眉なし。
(笑)
大ちゃん:今よりもっとしんじょうの半グレ感も強くて。2人とも『ヒットマン』みたいな真っ黒のスーツを着ていて、とにかくめっちゃイカつかったです。
しんじょう:確かにあの頃はちょっと怖かったかもな。

大ちゃん:怖かったけどどんな奴か知りたくて。僕らのほうが半年くらい事務所に入るのが早かったんで、「わからんこととかあったら聞いてね」みたいな感じで、とりあえず話しかけてました。
しんじょうさんは実際にトガってたりしたんですか?
しんじょう:周りにはトガってたって言われるけど全然そんなんじゃなく、物事を知らないだけって感じでした。
大ちゃん:でもトガってるって誤解されてしまう理由もあって。僕らがデリートエンターテイメントに所属したのは、『クロスウォーバー』っていう事務所対抗ライブに出るためでもあったんです。吉本興業さん、松竹芸能、デリートエンターテイメント、スパンキープロダクションさん、ケーエープロダクションさん、フールズさん、関西にある6つの芸能事務所が参加するバトル形式のライブで、それに出させてもらえるということで所属を決めました。アインシュタインさんや祇園さんがMCを務める、よしもと漫才劇場を舞台にした結構デカいライブでした。
しんじょう:そのライブに別々のコンビで出た時、後輩芸人は座ったらダメっていう暗黙のルールがある舞台袖のソファに僕が座ってしまって。「あいつめっちゃヤバいやん」って言われるようになってしまいました。何の説明もなかったし、ほんまに知らんかっただけなんですよ。

大ちゃん:コンビを組む時は僕から声を掛けたんですけど、「あいつはやめとけ。絶対ヤバい奴や」って周りの芸人に止められて。でも僕はしんじょうの人間性を知ってたので、みんな誤解してるなって思ってました。
しんじょう:ソファのこと最初に教えてくれたら良かったのに……。
大ちゃん:大丈夫。俺はお前の味方やからな。
しんじょうさん的には大ちゃんさんの印象ってどんな感じだったんですか?
しんじょう:ちょっとおもろい大学生(笑)。お喋りが上手な大学生っていう感じで、めっちゃおもろい印象ではなかったです。でも声を掛けてくれて、真面目やし熱意もあるからいいなと思って組むことにしました。
組みたての頃はどんな感じやったか覚えてらっしゃいますか?
しんじょう:事務所の先輩やったから最初は敬語で喋ってて、仲良くなるためにめっちゃ飲みに誘ってくれました。
大ちゃん:ほんまに最初の頃、お互いのネタ帳を見せ合おうってなって大阪城公園に集まったんです。そしたら途中でしんじょうがトイレに行きたいって言い出して。「もう我慢できないです」ってぐわ〜っとトイレに走っていって、出てきた時に間に合ったかどうか聞いたらちょっとだけ漏らしてました。

途中で止められるものなんですか?ちょっとだけ漏らすとかって。
しんじょう:どこ掘り下げてんねん(笑)
大ちゃん:その時しんじょうはジーニーのパンツを穿いてたんですけど、ちょっと茶色くなってました。
それはまだ捨てずに使ってらっしゃる?
しんじょう:一応洗濯してまだ家にあると思います。いや、この話もうええでしょ。
大ちゃん:とにかくよく飲みに行ったし、ケンカもしましたね。
どんな風にケンカをするんですか?
大ちゃん:僕が意見の言い合いをできなくて、しんじょうがバーって言ってきたら「ほなもう解散で」って言ってしまいます。
しんじょう:その時の感情だけで相方を切ろうとするのヤバいですよね。「解散や解散。こんなに揉めてんねんからもう無理やん」とかすぐ言ってくるんですよ。マジで話し合いにならないです。
大ちゃん:そのせいか恋愛とかも全然上手くいかなくて、まともに続いてるのしんじょうだけです。すぐ「もうええよ」ってなっちゃうので。
解散って言われたら、しんじょうさんはどうしてるんですか?
しんじょう:めっちゃ腹立つけど、そこに食らいついてやってきました。
大ちゃん:僕が最初に「解散!」って言うた瞬間、「こいつヤバいやん。なんでそんなん言えんの」ってしんじょうがブワーっと泣き出して、それを見て俺もむっちゃ泣いてもうて。2人で目パンパンに腫らして、上本町のネカフェに8時間くらい延長して泊まりました。死ぬほど延長代払ったよな。
しんじょう:そやなぁ。
ほんとに夫婦みたいな感じですね。
大ちゃん:今まで付き合ってきた女の子とはできひんかったような揉め方をしています。

どんなことがケンカのきっかけになるんですか?
大ちゃん:ネタでもたまに揉めますが、最初の頃は僕の言い方ですね。今はしんじょうに任せてるけど当時は2人でネタを作ってて、「●●ってこういうもんやろ」っていう決めつけの言い方じゃなく「●●やと思う」に変えてほしいって言われてました。
しんじょう:大ちゃんの方が数ヶ月先輩ではあるから、そういう言い方をされると何も言えなくなるんです。だから決めつけんといてって。
大ちゃん:そこから普段話す時も言い方を意識するようになって、人間関係がすごく上手くいくようになりました。「大ちゃんその言い方めっちゃいいやん」って褒めてもらえるようになって、しんじょうにはほんとに感謝しています。
しんじょう:その相手絶対女の子やろ。女性関係にも生かしてるやん(笑)


オーパスツー
共に大阪府出身の大ちゃん(左)、しんじょう(右)によるお笑いコンビ。大阪・堺のインディーズお笑いプロダクション・デリートエンターテイメントで2018年に結成。その後はフリーとして活動し、2020年12月に入竹。2025年3月の『第14回 ytv漫才新人賞』では、松竹芸能から初めて決定戦に進出。4月に開催された『第60回上方漫才大賞』(カンテレ)新人賞にもノミネートされるなど話題を集める。大ちゃんの好物は韓国風の冷麺で、しんじょうは27歳の頃から痛風を発症している。