日本舞踊家とファッションブランド<Jungle & son’s>のディレクター。二役をこなす重岡大智さんが発信する、新しいカルチャーのかたち。

姫路・播州地方を中心に活動する日本舞踊の家元<鵬扇流>の3代目であり、ファッションブランド<Jungle & son’s>のディレクターである重岡大智さんの面白さは、彼が生み出すプロダクトの世界観を見れば一目瞭然。挑発的なジョークを仕掛けるかのようなエッジの効いたデザインは、彼のもう一つのルーツ、そして生業である日本舞踊のもつ“古典”という固定概念が、良い意味で覆されるはずです。今回のインタビューでは、古典と現代ファッションという相反する2つのカルチャーを併せ持つ彼が絶大な影響を受けたバイカーズカルチャー、そして日本舞踊界の伝統を担う次世代としての未来についてなど、たくさんお話をしてくれました。先代たちが創り上げてきた歴史に対するリスペクトと、決してその枠の中には収まらない独自の世界観を創造するべく“遊び心”を発信できる重岡さんのスタイルは、まさに唯一無二。このインタビューを読み終える頃には、多くの人が敷居高くイメージしていた古典芸能という分野に対する意識が少し変わるかも知れません。そして“自分のスタイルを見つけていくこと”や“自分自身を表現すること”の手がかりが、彼の言葉の中にいくつも存在していたように感じます。

自分のスタイルを持っているカッコいい大人たちを見ていたので、ファッションへの興味が深くなっていった。

Jungle君はオリジナルブランド<Jungle & son’s>のディレクターであると同時に、姫路・播州エリアを拠点に活動している日本舞踊の流派<鵬扇流>の3代目家元を継承する立場としても活動されていますが、この2つは対極的で面白い肩書きですよね。

そうですね。日本舞踊に関しては、自分が望む・望まない以前に、物心ついた頃からの環境なので。僕が3歳の頃に日本舞踊の世界に入りましたけど、当時はうちの祖母が家元だったんです。その当時のことは、あまりちゃんと覚えてないですけど…(笑)

バイクもご自身を語るうえでの重要なカルチャーの一つですが、どういうきっかけでバイカーになられたんですか?

中学2年の頃、親父に神戸のアパレルショップ『Road runner』に連れていってもらったんですけど、そこに集まってくる大人たちがやたらカッコよかったんですよ。みんなそれぞれのセンスでビルドアップしたバイクに乗っていて、身に着けているものも自分のスタイルを持っていて。親父世代のお洒落な大人たちの影響は大きかったですね。そこからはもう、とにかく自分も早くバイクに乗りたかったから、高校に入ってからはバイクの免許を取るためのバイトに明け暮れていました。当時は同世代で同じ趣味を分かち合えるような友達もいなかったですし、自分の中で「俺はこんなカッコいい大人たちとつるんでいるんだぞ!」という嬉しさと謎の優越感もありましたね(笑)

謎の優越感、わかります(笑)。そうして10代で苦労して手に入れたファーストバイクとの出合い?

初めてのバイクはヤマハのSR400だったんですけど、当時はまだ「どのハイクに乗ろうかな」と、ぼんやり想像していたくらいだったんです。とはいえ、バイトで貯めたお金にも限界があるから選択の余地はあまりなくて。そんな時、『Road runner』の常連さんがたまたまSR400からバイクを乗り換えるというタイミングがあって。そのバイクがめちゃめちゃカッコよかったんですよ。カスタムショーとかにもエントリーされてたくらいの。だから最初は恐くて値段なんか聞けなかったし、聞くまでもなく高いだろうということはわかっていたから「たぶん払えないです…」って言っていたら、「今いくら持ってるの?」と聞かれて「22万しかないです」、「それでいいよ」と。店頭での売値が50万くらいで、そこからさらにカスタムされてる状態なのに、もうびっくりして「マジですか?!」みたいな(笑)

いきなりものすごいラッキーに遭遇しましたね(笑)。ファッションに興味が出てきたのも、バイカーズカルチャーに触れた同じタイミングだったんですか?

自分のスタイルを持っているカッコいい大人たちを見ていたので、当然ファッションにも興味が深くなっていったんですけど、その時点ではまだ漠然と「服屋さんになりたいな」程度の、本当に子どもの夢みたいな感じで想像していました。子どもがよく言う「パイロットになりたい」くらいのノリ(笑)

それが現実味を帯びて来たのは、どういうきっかけで?

当時はガキなりの漠然とした憧れだったんですけど、それでも頭の片隅にはずっとあったんでしょうね。そこからの自分なりのプランとしては、高校卒業後にクリエイティブなジャンルに特化した芸術系の学校に進学することにしました。

モノ作りの基本を学んでみたいと。

そうですね。当時の僕の“ショップ”という存在の概念が「服屋はみんな自分の服を作って売っているんだろう」みたいな、めちゃくちゃ勝手なイメージしかなかったから(笑)。ファッションデザインとビジネスの専門性の高い学校に入ったら何かしら学べるだろうという安易な考えで…(笑)

親父からはずっと「踊り(日本舞踊)以外でも何か自分で表現できることを見つけろ」と言われていた。
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Profile

重岡大智 / 鵬扇小玄治

兵庫県加古川市出身。姫路を中心に活動する日本舞踊の家元<鵬扇流>の3代目であり、ファッションブランド<Jungle &son's>のディレクター。10代の頃に出会ったバイクをきっかけに、バイカーズカルチャーやファッションプロダクトで様々な発信を続けている。来年には、加古川でオリジナルアイテムを中心としたコミュニティショップがオープン予定。

Profile

鵬扇流

主に姫路、播州地方を拠点に活動する日本舞踊。古典舞踊の「日本舞踊鵬扇流」と新舞踊民舞踊の「鵬扇流 新舞踊 なないろの会」を主催し、毎年 4月には「鵬扇 流新舞踊 なないろの会」を開催。入場無料で、古典に親しみがある人も初心者にも楽しめる公演内容が魅力。

https://housenryu.com/

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