ジャパンヴィンテージの魅力を伝える大阪・枚方の古道具とコーヒーのお店『ダーマトグラフ』で聞いた、知るほどに奥深い木彫り熊のロマン。


僕らが目指しているのは、日本の近代カルチャーの再評価。メイドインジャパンの魅力をもっと深く知ってほしい。

こうやって話を聞いていると、自分の国のことながら知らないことや勘違いしていることがすごく多いんだなと感じました。

東真:木彫りの熊は、生まれてたった100年という比較的新しい工芸品なのに、日本人のほとんどが間違った認識を持っていて。自分の国の歴史を正しく知ることってすごく大切なことだから、僕らは木彫りの熊をはじめとしたお店の商品を通して、その重要性を伝えていきたい。うちで扱っているプロダクトは、先ほども言った1960年〜90年代の、なるべく100年を超えない優れた量産商品が主で、木彫りの熊が作られた年代と大体同じなんです。その親和性もありますし。

食器類がどれもめちゃくちゃきれいなのも印象的でした。

東真:食器類はできるだけデッドストックにこだわっています。そこが一般的なヴィンテージショップとの違いですね。使い込まれた風合いを楽しんでほしいというより、その時代に作られた日本のプロダクトの素晴らしさを未使用で感じて欲しい。それによって、ちょっぴりタイムスリップした感覚を楽しんでほしいんです。これまでフランスやイギリスのアンティークもたくさん見てきたけど、そのうえで日本製が最も優れていると気付きました。木彫りの熊をきっかけに僕らの店を知ってもらえるのは嬉しいですが、そこも含めて日本の近代カルチャーやプロダクトの魅力をもっと知ってほしいという思いがあります。

デッドストックだからとてもきれいですし。古物に慣れていない方も取り入れやすそうです。

東真:ここ100年以内に作られた日本製のプロダクトって、世間ではそこまで評価されていないけど、僕らは世界一やと思っています。写真のガラス雑貨なんて、どこかのガラス作家さんの作品みたいでしょ。これがボロボロのフランスアンティークだとすれば、きっとみんな何万円も出して買うじゃないですか。これらはそのほとんどが、50〜60年前に海外からデザインを渡されて、日本で大量生産されたものばかりです。きっとパートのおばちゃんが、「早よ仕事終わらんかなぁ」とか思いながら作ってたんですよ。そう考えると日本の技術ってすごくないですか?そこからまたフランスなんかに輸出されて、向こうのレストランで何年も使われるんです。そうして使われた食器類がフランスの蚤の市に出てきて、何も知らない日本人が買っていく。蚤の市で運よく優しい店主さんに出会えれば、「それメイドインジャパンだよ」と教えてくれるけど、普通の人はまず教えてくれないですね。日本にはこんなにいいものがあるのに、それを知らないのはもったいないと思います。

昔は世界中のお家の食卓に日本製の食器も並んでいたのですね!知らなかったです。

東真:あんまり知られてないけど事実です。日本人って自分の国のことをほとんど知らなくて、僕らもまだまだ知らないことだらけですが……。海外の人は自分の国に誇りを持って生活しているから、そのぶん歴史的なことにも詳しいんです。彼らが『ダーマトグラフ』に来ると、すごくたくさん質問されるんですよ。これはどういう歴史があって、どんな価値があるものなのか。そこで説明できなければ実店舗を持ってる意味がないので、うちは自信を持って答えられるものしか置かないようにしています。熊も同じで、僕らも単純に“かわいい”っていうところから入ったけど、やはりその先の付加価値として、物語れないと意味がないのかなあと思ったり。だから勉強するし、半年に1回八雲町に足を運ぶんです。

正岡さんのお気に入りの木彫り熊や店内のコーナーを教えていただきたいです。

東真:どれも気に入ってるから選び難いけど……、熊のマンション=“熊ンション”的なこの感じはディスプレイとしても気に入っています。大中小の3種類があって、かわいいですよね。

店内に設置された熊ンションは、写真上が大、左下が中、右下が小。これらの熊はほとんどが販売されています。

これは手元に置いておこう、という熊と店頭に商品として並べる熊との違いはあるんですか?

東真:このタイプはもう持ってるから手放そうかな、とかですかね。気に入った熊は自分の元に全部置いておきたいけど、そんなこと言ってたら熊活にならないので、手放す努力はしています。うちの奥さんは貯め込んじゃって、なかなか出したがらないですけど(笑)

有加里:1つ1つハンドメイドだから表情が違うし、それぞれの魅力がありますから。私も手放す努力はしてるんですけどなかなか……(苦笑)。手放さないと増え続けてしまうので、自分たちのコレクションの大体の上限は決めています。……たぶん(笑)

熊の巨大マスクは、『Casa BRUTUS(マガジンハウス)』内で紹介したもの。
目の色がとってもかわいい熊。おそらく同じ作家さんのものだそう。
「この背中の曲線や竹喜さん特有の細かい彫りがすごくきれいで」と東真さん。こちらはアイヌの藤戸竹喜さんの貴重な作品。ちなみに非売品です。
「売りものじゃないけど……」と見せてくれたコレクション。左は、熊の抽象性を追求すること生まれた「熊山」と「熊」。右は「山」。どちらも現代作家の高野夕輝さんの作品。ダイナミックで荘厳なムードが漂います。
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Profile

(左)正岡東真、(右)正岡有加里

東真さんはムービーの撮影・編集をしつつ、古道具のバイヤーや空間スタイリングを担当。有加里さんはスチールカメラマン、グラフィックデザイナーとして活動。1960〜90年代のジャパンヴィンテージを主にデッドストックにこだわってセレクトするショップ『ダーマトグラフ』を運営。関西きっての木彫りの熊ラバー。

SHOP DATA

DERMATOGRAPH (ダーマトグラフ)

大阪府枚方市星丘4-16-29-1
11:00〜18:00 (日祝13:00〜)
不定休

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