呪物は最新のサブカルチャー?! オカルトコレクター/怪談師として活動する田中俊行さんの、怖いけど気になる呪物の話。


世界中には色んな呪物が存在していて、その背景と共に知っていくのがおもしろい。表立って話せないこともかなり多いです。

田中さんは世界中の呪物を集めてますよね。日本以外の国の呪物との違いってあるんですか?

田中:ありますよ。国ごとにカルチャーが違うので、日本の常識では考えられないような呪物もたくさん存在します。もちろんよく似たモノもありますが。

タイは呪術大国だという記事を読みました。

田中:タイって信心深い人が多くて、1万人以上の呪術師がいるとされる国なんですよ。人口の9割が仏教を信仰している国なんですが、アニミズム(=精霊信仰)の文化が色濃く残っていて。朝・昼・晩きっちり祈りを捧げる風習が残っているんです。寺院も多いですし、念が込められたものが手に入りやすい国だと思います。

信心深い国民性もあるんですね。海外で呪物を引き取る時、大変な目に遭ったことはありますか?

田中:もちろんあるけど、表立っては言えないことばかりです(笑)。国外に持ち出すだけで法に触れる呪物もたくさんありますし。例えば、タイには胎児をミイラ化して作るルーククロークと呼ばれる呪物があるんですが、日本はもちろんタイでも所持しているだけで罪に問われます。

胎児信仰と呼ばれるものですね。

田中:ルーククロークとよく似たモノで、亡くなった胎児の遺灰に土やハーブを混ぜて作るクマントーンという呪物があって。最近カンボジアの男性から「クマントーンを引き取ってほしい」と連絡をいただいたんです。クマントーンは作る呪術師によって様々な姿形をしているんですが、その方から送られてきた写真を見て、あまりにも禍々しいビジュアルに衝撃を受けました。どういうわけか話を聞くと、その方にはもともと奥さんと子どもがいたんですが、子どもが3歳くらいで亡くなってしまって。そこから奥さんが精神的に参ってしまい、少しでも心が安らかになればとマレーシアの呪術師にクマントーンを作ってもらったと。亡くなった子どもの衣類や唾、爪、髪の毛を入れて、子どもの魂が宿るようクマントーンを作ったとのことでした。最初は奥さんも大切にしていたんですが、2人の間にもう1人子どもができて、奥さんがクマントーンに対する興味を失ってしまって。一応手は合わせるけど放ったらかしのような状態だったらしく、赤ちゃんを産んですぐ亡くなってしまったんです。しかも、生まれてきた子どもがすごく病気がちで、大切にしてもらえなかったクマントーンが怒っているんだろうと思うようになったそうです。寺院に持ち込んで供養しようにも、別の国の知らない呪術師が作ったモノは扱えないと言われてしましまって。どうしようもないからもらってほしいという話でした。

クマントーンってタイではポピュラーな呪物ですよね。その中でも特に目を引いたわけですか?

田中:過去イチでした。これもらったら死ぬんちゃう?って写真から感じるくらい。とはいえ僕も呪い関連のモノは好きなので、知り合いの呪術師に取りに行ってもらいました。今その人が代わりに持ってくれてるけど、めちゃくちゃ気持ち悪いから早く取りに来てくれと言われています。ずっと魚の腐った匂いがするらしいんですよ。それは物理的に発しているのではなく、恐らく霊的に漂っているんですよね。そんなの僕が持ってて大丈夫かなっていう危惧もあります。

もうすぐ田中さんの元に。めっちゃタイムリーですね。

田中:そうですね。今月くらいには取りに行きます。クマントーンのような胎児信仰の呪物って色ん地域にあるんですが、それぞれ違った名前で呼ばれていて。カンボジアではルクロ、マレーシアはトヨルって具合に。それはマレーシアの呪術師が作ったモノなので、地域的にはトヨルになるんやと思います。って、こんな細かいことどうでもいいですけどね(笑)

世界各国に行かれる中で、格段にやばい呪物が多い地域はありますか?

田中:呪物にパワーがあるところは、そこまで発展していない国が多い気がしますね。より原始的な生活をしている地域の方が、呪物に込められている念が強いのかもしれません。それはキューバへ行った時に感じました。霊感のない僕でさえ、これはやばいのがキテるぞと。技術が発展すれば、呪物に頼らずとも生活が安定して些細な悩みも解決しますし、その違いかもしれません。

なるほど。ちなみに呪術師と魔女の違いってあるんでしょうか?

田中:信仰している対象が違うだけで、大きく分ければ一緒なんじゃないのかな。相談者の悩みを解決するという点では同じですから。行ったことがないからヨーロッパの呪物は詳しくないけど、魔女に関する逸話も残っているので、僕の知らない別のストーリーもあると思います。

呪物を集めていると、色んな宗教や信仰がごちゃ混ぜになってしまって大変ですね。

田中:がんじがらめになってわけがわからないです。だけどもうやめられないところまで来ちゃいました。自分が生きているうちに、集められる呪物は全部集めたいなと思っています。

最近、呪物を受け入れてくれる人が少しずつ増えてきて嬉しい。チャーミーに上手く操られているような感覚もあります。
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Profile

田中 俊行

1978年生まれ、神戸市出身。怪談師、オカルトコレクター、イラストレーター。オカルト好きの母の影響で幼少期から怪談の収集を行っており、近年は世界各国の呪物を150点以上集めている。「稲川淳二の怪談グランプリ2013(関西テレビ)」で優勝するなど、怪談師としての腕前も折り紙付き。

Youtube:田中俊行チャンネル『トシが行く』

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