リュックにやぐらを詰め込んで、どこへでも!稀代の盆踊りラバー中西祐紀子さんを突き動かすのは、「盆踊りが好き!」というまっすぐな想い。


体育の時間めっちゃ嫌いだったんですけど、盆踊りを踊って初めて、体を動かすのが楽しいって思って。

お話を聞いていると、実は世の中には、かなりの盆踊りラバーがいるんだなと思いました。そういう人たち同士のつながりとか、集まりみたいなものはあるんですか?

いろいろあって、会みたいな団体もあるんですよ。自治体の婦人会とか女性会とかじゃなくて、好きな人同士がつながって、同じTシャツを着て練習してる人とか。あとは、私みたいに個人で行ってる人とか。そういう人も多いから、行くとだいたい見たことのある人に会うので、喋って仲良くなったりとかしますね。

お互いに「あ、また会いましたね」みたいな感じで。盆踊りは、会場によってかかる曲が違ったりするんですか?

違うんですよ。曲ごとに振りが違うので、いろいろ踊りたい人はいろんな会場をハシゴしたり。私も最近わかったんですけど、2種類いるんです、音頭が好きな人と、民謡系のいろんな曲を踊りたい人と。音頭が好きな人は、河内音頭とか江州音頭とかばっかりが流れる会場に行くんですよ。そういうところは音頭取りさんが来て生で歌ってくれので、好きな音頭取りさんを追いかけてる人もいます。

音頭取りさんにもファンが付いてるんですね!いろんな曲を踊りたい人は、どうするんですか?

いろいろ踊りたい人は、1日3ヵ所とかハシゴするんです。区とか会場によって選曲が違うので。

ここは音頭ばっかりかかるとか、そういう情報はどこで得るんですか?

私は行ってから、ここは音頭やなとか。友達に教えてもらうこともありますけど、いろいろ行ってるうちにわかってくる感じですね。音頭取りさんが情報を出してることもあるので、音頭取りさんが好きな人は音頭取りさんをフォローして情報を集めたりとかだと思います。

盆踊りの会場によってそんなに違いがあるとは…

わからないですよね(笑)。外から見たら、盆踊りやってるなー、ぐらいで。私も好きになってみてわかった世界でした。

しかも、曲ごとに踊りが違うんですよね?どうやって覚えるんですか?

私は会場で、見様見真似で(笑)。私は踊れる曲がまだそこまでないので、町内会の女性会や民謡会の人たちが踊っているのをお手本にして、それで覚えていきます。自分に合う上手な人を見つけて、その人の後ろについて踊ったりして。

覚えていかなくても、上手な人の振りを真似れば大丈夫なんですね。なぜみんな踊れるのかなって思ってたんですけど。

踊れてないんですよ、中に入ったらわかります。みんなテキトーやなってなります(笑)

取材場所のβ本町橋でも3月に盆踊りを開催。やぐらを建てれば、グランピング施設やタグボート大正、重要文化財の邸宅など、どこでも盆踊り会場に。

家で練習したりします?

練習は、やぐらを持ってイベントに行くときですね。その時は女性会とかの人たちがいないので、私が見本にならないといけないから、イベントでかける曲は自宅で練習します。でもあんまりレパートリーは増やさず、できる曲をゆるゆるとやってます。

イベントで出張盆踊りをするときの選曲は、中西さんが考えるんですか?

イベントの長さや会場の雰囲気によって多少は。でも「今日はこれ!」っていうほど曲数がないので、河内音頭とか江州音頭、炭坑節とか伝統的なやつと、ダンシング・ヒーローとか恋するフォーチュンクッキーとかポップス、あとはバハマ ママって洋楽で踊ったりとか、それくらいなんですけど。伝統的な曲もあるけど、こんなのもあるんやでっていうのを楽しんでもらえたらなと思って。知ってる曲だと、みんなテンション上がるんです。

ダレてきたなと思ったらアガる曲をかけるみたいな?

そこまでじゃないですよ、短い時間だったら、これとこれがいいかなとかくらいで。

盆踊りの曲に、それほどレパートリーがあるのも知らなかったです。そういえば、うちの近所の盆踊りでは「東成音頭」っていうのがかかるんですよ。東成区の音頭があるのかってびっくりしたんですけど。

ありますね。多分、大阪市内はだいたいどこの区にもあると思います。「北区いきいき音頭」とか「中央区民音頭」とか。阿倍野区も鶴見区もあるし、寝屋川市には寝屋川音頭っていうのがあります。

大阪市内各区に、それぞれ音頭があるなんて…

新曲も、毎年3曲くらい出るんですよ。私も詳しくはわからないんですけど、新曲の練習会も、町内会とか個人向けにあったりするみたいです。

まさか毎年新曲が発表されているとは知りませんでした。聞けば聞くほど奥が深い盆踊りの世界ですが、中西さんをそこまでハマらせる盆踊りの魅力って、どんなところですか?

自分が踊りに行くのと、やぐらを担いでイベントをするのとで観点がまた違うんですけど。純粋には、それきっかけで喋ることが面白いみたいな。めっちゃ仲良くなるわけではないけど、教えてくれるおっちゃんがいたりとか、上手なお姉さんと目が合ってふふっと照れながら笑い合ったりとか。そういうちょっとしたことですけど、人と関わることができるのは面白いです。
それと、私運動が苦手なんですよ。体育の時間めっちゃ嫌いだったんですけど、盆踊りを踊って初めて、体を動かすのが楽しいって思って。ハイになるくらい体を動かすのが楽しいと思えたのが盆踊りだったので、そこも大きいのかなと思います。

気持ちよく体を動かせたのが、盆踊り。そういうフィジカルな面でも喜びがあったんですね。

盆踊りって自由なんです。型はあるので、炭坑節のときに違う動きをしていたらそれは盆踊りではなくなってしまうんですけど、でも間違ってたり、ちょっと違ってもいいんです。型の中で自由に遊べたりとか。みんなで踊るんですけど、集団演舞じゃなくて、それぞれのゆるさと自由さがあるというか。やってるうちに体の動かし方がわかってきて、あの人みたいにもっと滑らかにしてみたいなとか。下手でも上手でも、踊りに自由さがあるなってことを最近めっちゃ感じてます。

たしかに、同じ振りでもアレンジしてる人もいますね。すごいこなれてる人がいたり、クセが違うというか。

そう、クセなんですよ!クセが強い人めっちゃいます(笑)。輪で進むので、一人だけ止まっちゃうと危ないからそれはダメなんですけど、でも流れの中ではすごく自由で。きっちりお手本どおりに踊る人もいるし、滑らかな人もいるし、すごい個性を出して踊ってる人もいるけど、でもそれでいいっていうところが面白いなって思います。

今年は奈良の十津川の盆踊りに行こうと思っていて。十津川は、扇を持ちながら踊るんです。扇を2つ手に持って踊るのが、めっちゃきらびやかなんですよ。
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Profile

中西 祐紀子(なかにし ゆきこ)

大阪府寝屋川市出身。2012年に盆踊りにハマり、各地の盆踊りを行脚。盆踊りの楽しさを伝えるべく2018年より『毎日どこかがダンスホール』の活動をスタート、ポータブルやぐらを担いで、さまざまなイベントで出張盆踊りを開催。「ひと夏最高25夜」を踊った盆踊りマニアとしてテレビの密着取材を受けたことも。今夏もさまざまな盆踊り会場に足を運ぶほか、イベント出展も多数予定。詳細はInstagramから。

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