リュックにやぐらを詰め込んで、どこへでも!稀代の盆踊りラバー中西祐紀子さんを突き動かすのは、「盆踊りが好き!」というまっすぐな想い。
盆踊りをこよなく愛し、最高でひと夏に25夜もの盆踊りを踊ったという中西祐紀子さん。その愛はとどまるところを知らず、『毎日どこかがダンスホール』という屋号で盆踊りの魅力を広めるプロジェクトもスタート。ポータブルやぐらを担いで盆踊りをあちこちのイベントにお届けする「ウーバー盆踊り」の活動も行っています。やわらかく穏やかな雰囲気とは裏腹に、盆踊りにかける情熱は誰よりも熱い中西さん。本格的な盆踊りシーズンを前に、なぜそれほどまでに盆踊りに惹かれるのか、お話を伺ってきました。読めばきっと、この夏は盆踊りに行きたくなること請け合いです。知っているようで知らない、奥深い盆踊りの世界を堪能してください!
盆踊りの好きさを伝えたいと思ってたとき、寝る前に布団の中で「毎日どこかがダンスホール」って言葉が思い浮かんで、これや!ってなって
そもそもですが、中西さんが盆踊りを好きになったきっかけから、教えてもらっていいですか?
明確にハマったのは2012年です。その年に地元の寝屋川と、大阪市中央区の盆踊りに行ったんですよ。地元は父親と、中央区は近所に住んでる友達と行ったんですけど、どっちもめっちゃ楽しくて。それぞれちょっと違う楽しさなんですけど、とにかく楽しくて、もっと行きたい!と思ったんです。
寝屋川と中央区で楽しみ方が違うっていうのは、例えばどんなところが?
寝屋川は、その頃はほんとにおじいちゃんとかおばあちゃんしか踊ってなくて。そこにふわっと私が入っていったから目立ったんでしょうね、「よ!ねえちゃんいいよ!」みたいな(笑)。おばちゃんが踊り方を教えてくれたり、顔見知り程度やった近所の人と喋れたり、「また来てねー」みたいに言ってくれはったりして、それがなんか嬉しくて。
中央区のほうは、その当時からわりと若い人も来てたんですよ。踊り好きの若い人が独自のリズムというか、踊りこなしてる感じがめっちゃかっこよくて。地元とはまた違った雰囲気がありました。私もずっと踊ってたらハイになってきて、踊ること自体が面白い!みたいになって。トランスまではいかないけど、ハイになっていくみたいな。
それまでは、そんなに盆踊りには行ってなかったんですか?
行ってなかったです。小中学生の頃は行ってましたけど、お祭りを楽しみに行く感じで、踊りを楽しむっていう感覚はなかったですね。ちょっと恥ずかしいみたいなのもあるじゃないですか。
たしかに、思春期くらいは恥ずかしくて踊らないですね。じゃあ、盆踊りにハマったのは大人になってから?
社会人一年目のときですね。
2012年に盆踊りにハマって、そこから『毎日どこかがダンスホール』を始めるまでは、どんな経緯があったんですか?
盆踊りが好きになって、他もいろいろ行ってみたいなと思って、2013年から寝屋川と中央区以外のところにも行くようになって。大阪市内もけっこう回りました。
盆踊りって、そんなにいろんなところでやってるんですか?
夏になったら本当に毎日どこかでやってるんですよ。中央区でも一か所じゃなくて、小学校区ごととか、神社とかお寺でもやってるので、探せば出てくるんです。今はもう無いんですけど、当時は盆踊りの予定をまとめた個人のブログがあって、いつどこでやってるかがわかるんですよ。それがあったから、ハマれたのもあるかもしれない。仕事が早く終わったら「今日行ける!」って、その日にやってる盆踊りに電車で行く、みたいなことをしてました。
会社帰りに盆踊り!めっちゃ楽しそうですね。
大阪だけじゃなくて、岐阜県の郡上八幡に「郡上おどり」って徹夜で踊る祭りがあるんですけど、それに行ったり。盆踊りありきで旅行に行く、みたいなこともしてました。
その盆踊り愛が高じて、『毎日どこかがダンスホール』につながったわけですか?
好きっていうのを、どうにか表したくて。でも、いろんな盆踊りに行くようになってわかったんですけど、どうやら、もっといっぱい行ってる人がいるなって気付いたんですよ。蓋を開けたら、ひと夏に100ヵ所ぐらい行くみたいな人がいるんです。
え、盆踊り界隈には、そんなにすごい人がいるんですか!?
います。私ぺーぺーなんですよ。数をこなす人もいれば、100曲以上踊れる人とか、河内音頭だけを突き詰めてる人とか、すごい人がいっぱい。そんな中で、私はそんなに上手でもないしいっぱい行けるわけじゃないけど、でも好きって言いたい、誰かにこの好きさを伝えたいってなったときに、あるとき寝る前に布団の中で「毎日どこかがダンスホール」って言葉が思い浮かんで、これや!ってなって(笑)
言葉が降ってきたと。
私はカタチから入るところがあるので、Tシャツ作りたいなと思って。そのためにはロゴがいるから、友達のデザイナーに作ってもらったんです。キャッチフレーズ、ロゴ、Tシャツで私の好きを表そうと思って、『毎日どこかがダンスホール』ができあがりました。
盆踊りを広めるためというより、中西さん自身の盆踊り愛を表現するものだったんですね。ロゴやTシャツを作ったことで、何か変化はありました?
これは自分の活動なんだっていう感じで、友達に言いやすくなりました。ただ好きなだけじゃなくて、好きなことにこうしてアプローチすること自体が、自分の表現なんだと思えるようになってきて。踊りが好きなのは変わらないんですけど、どうやったら人に伝わるかを考えるようになった感じがします。
中西 祐紀子(なかにし ゆきこ)
大阪府寝屋川市出身。2012年に盆踊りにハマり、各地の盆踊りを行脚。盆踊りの楽しさを伝えるべく2018年より『毎日どこかがダンスホール』の活動をスタート、ポータブルやぐらを担いで、さまざまなイベントで出張盆踊りを開催。「ひと夏最高25夜」を踊った盆踊りマニアとしてテレビの密着取材を受けたことも。今夏もさまざまな盆踊り会場に足を運ぶほか、イベント出展も多数予定。詳細はInstagramから。