捨て身になったらひと筋の光が見えた。初の全国ツアー「ネタサボってんじゃねぇよ」を開催中のお笑いコンビ・黒帯のインディペンデントな戦い方。
ダークな部分をさらけ出すようになって、周りの芸人やお客さんに受け入れてもらえるようになりました。これからも自分に正直な生き方をしたい。
昨年から主要メンバーが次々東京に進出して、劇場も様変わりしていってると思うんです。黒帯さんの今後の立ち位置はどうなるんやろうと気になりました。
てらうち:これから中心になって劇場を盛り上げていくんじゃないかって言われる時もあるけど、そういうのは2人とも得意じゃないんで。ダブルヒガシやカベポスターにトップ張ってほしいです。
大西:このライブ怪しいなって時に駆り出されることが多いんで、そういう立ち位置でいいかなと思ってます。僕らとツートライブさん、祇園さんあたりを入れとけば、まぁどうにかなるやろっていう。ずっとそんなことばっかさせられてるし、もう少し単価上げてほしいですけど。
確かに黒帯さんのいるライブは安定感があるかもです。
てらうち:そういうのがんばっとけば仕事は無くならなんかもな。その中やと俺らだけ結婚してないんでまだ何とか人気あるけど、結婚したら落ち着いちゃうんかなぁ。
大西:「結婚したけど不倫します」「全然遊びます」とか言っとけばいいんすかね。
てらうち:俺はもともとそれ言ってるわ。まぁ今は結婚する気ないですけど。絶対いっぱい文句言われるし、どんなに好きな女性もいずれはお母さんみたいになって怒られるんやと思うとしんどいです。
(笑)。今は劇場でお兄さん的な立ち位置なんですか?
大西:兄さんとまではいかんけど後輩は増えて、意外と慕ってくれるヤツは多いです。
ちなみにどなたと仲良しなんですか?
大西:もも、三遊間、ぎょうぶとか仲良いっすね。ビスブラ、マユリカ、さや香とかを間近で見てきたんで、後輩ってもっと生意気なイメージがあったんです。あんま慕われへんままいくんやろうなって思ってたら、ここ数年で慕ってくれるヤツが増えてきたので意外でした。
てらうち:ちょっと芸歴に差があるもんね。ビスブラとかは一緒に戦ってきたからな。
後輩というよりライバルに近いんですかね。
大西:僕らより芸歴が上で生き残ってる先輩は仕事多いし、やっぱりめっちゃおもしろいです。ツートライブさん、ダブルアートさん、河野さんとか。他にもいっぱいおったけど、辞めちゃいました。
てらうち:やっぱりみんなめっちゃウケますから、全員マジで尊敬してます。とはいえナメてもいるんですけど(笑)。ただ、これが好きってことなんかなって思います。嫌いな時期もあったけど、みんなのことを好きになりました。
大西:ナメ始めたのも、嫌われてもいいやって思ったからなんです。この人俺のこと嫌いなんやったらもうええわって切り替えられるようになりました。あの人怖いよなとか、僕ら嫌な先輩の悪口をラジオとかでめっちゃ言うんです。そのスタンスになってだいぶ楽になりました。
素直に言っちゃうところが逆にかわいらしいんですかね。
大西:そうなんですかね。今思うと、僕らもとっ付きにくかったんでしょうね。てらうちって今は金髪にピアスやけど、昔はこんなチャラそうな感じじゃなくてもっと嫌なヤツそうやったし。
てらうち:自分に正直に生きたくて。「俺って嫌なヤツなんで」って開き直ったら、「それを自分で言うならええよ」ってみんな受け入れてくれました。ほんまいい世界ですよね。
大西:先輩とかもはっきり言ってくれる人の方が好きやしな。
てらうち:ほんとの人間性を隠す方が嫌われるんかも。芸人の世界じゃなくてもそんなもんなんかな。
確かに人付き合いってそんな感じなのかも。今お2人と喋ってますけど、YouTubeで観ていた姿と変わらないので安心感があります。
てらうち:嘘のない生き方をテーマにしていきたいっすね。
きれいなところだけじゃなく、嫌な部分もさらけ出してて人間らしい。それが愛される理由なのかもしれないですね。
大西:そうなったのはラジオがきっかけなんです。最初は僕らも嫌なことは言ってなかったけど、僕がてらうちのこと嫌いな時期があって。てらうちが嫌われてほしいって心底思って、シャレにならんてらうちの嫌なところをラジオで言ったんですよ。そっから人気が出たかもしれない。コイツらこんなの言うんやっていう。もちろんそれまでも本音で喋ってたけど、嫌われん程度にやってきてて。自分の本音や嫌われることを平気で言うようになってから、もともとやってたラジオのお客さんも増えて、ネタも受け入れてもらえるようになりました。
てらうち:ラジオは1ヶ月で消えるようにしてるんで、めちゃくちゃ言ってもいいやって思ってるんです。その時期からお客さんの反応が変わってきて、黒帯はそういうコンビって思ってもらえるようになりました。
今年、劇場からお2人に求められてることって何だと思いますか?
大西:やっぱM-1ですかね。準決勝以上行ってくれよっていう。
てらうち:ダルいなぁ。去年は疲弊してたからな。
大西:行け行け感がすごくて、プレッシャーも感じてました。
てらうち:でも今年の方が気持ち的にも良さそうやんな。俺は行けたら行くってくらいの感じっすね。今まで思い詰めるほどあかんことが多かったんで、今年はもっと気楽なスタンスでおろうと思います。
大西:ほんま追いかけたら追いかけるほど離れていく感じでした。やけど残り2年ならがんばれそうです。あと10年って言われたらさすがにがんばれないけど。
てらうち:去年は忙しくて余裕がなかったんですよ。NGKの単独とかライブのMCとか、自分の実力に対して荷が重い仕事が多くて。今年は肩の力を抜いて楽しみたいです。
2年後、M-1が終わった後はどんな風にしていく予定ですか?
大西:終わり方にもよるけど、M-1終了後にやっとお笑いが職業になるんかもしれないっすね。今は競技漫才というか、アスリートがオリンピック目指してるような感じで、それこそ人気を落としたくないから結婚できひんなとも思うし。M-1が終わったら、きちんと地に足付けてお笑いで生きていけるのかもしれません。
てらうち:俺はとりあえず月100万円稼げるようになりたいです。たぶんM-1で勝ったら稼げるけど、そのバブルも4〜5年くらいかなと思うんすよ。ほんまにM-1の終わり方次第やけど、楽してお笑いで月100万円稼げる方法を考えます。
5年後、どうなってるかとか想像できますか?
大西:5年後やと42歳かぁ。僕は50歳くらいまでにむっちゃ稼いで、一生働かんでいいくらい貯めときたいです。なるべく社員さんに「また営業入れてくれへん?」とか言わんでいい人になりたい。
てらうち:俺はタトゥー入れたいっすね。今はライブのコーナーでTシャツを着る時があるんで、タトゥーは入れられないんです。
大西:お金があったら「タトゥー入ってるんでTシャツ着るとか無理です」って言えるんで、断れる状態にはなっとけばいいんすよね。
てらうち:「嫁の名前が入ってるんで無理です」とか言いたいけど(笑)。首の後ろにタトゥー入れて漫才するとかカッコよくないっすか。タトゥー入れてNGKに出るとかむっちゃいいよな。それ目指そうかな。
大西:やっぱり漫才の“漫”入れる?“M”でもいいけど。
てらうち:首筋に“漫”入ってるやつやばいやろ(笑)。俺はタトゥー漫才師を目指します。あの人めちゃくちゃやけどおもろいって言われたい。
ということは、漫才はずっと続けていくんですか?
てらうち:寂しいかもなぁ、漫才せんようになるの。
大西:好きなんでね。楽屋とかもめっちゃ楽しいし、漫才はやりたいっすね。
ちょっと話が飛びますが、「これは大西さんっぽいな」「てらうちさんっぽいな」っていう最近のエピソードはありますか?
てらうち:大西さんは今穿いてるジーパンやな。実はこれ25万円するんすよ。
わ、それはすごいっすね。よっぽど好きじゃないと買えないやつですね。
てらうち:大西さんが古着にむっちゃハマってて、お笑いもそうやけど、大西さんは何かを突き詰めるのが好きなタイプなんです。これを見た時は、あ~やりおったって思いました。
相当古着がお好きなんですね。
てらうち:俺も服は大好きやけど、浮気症やからすぐ他のもほしいってなるんです。やけど大西さんはブレずに古着1本って感じで。やとしても25万円ぱっと使えるのはすごいです。大西さんってこういうことやるよなぁって思って笑いました。
大西:現ナマ握りしめて、古着屋の入荷日に並んで買ってきました。これから育てていきたいです。
てらうち:大西さんの給料は大体知ってるんで、正直ジーパンに25万円ぱっと払えるほど稼いでないですよ。スウェットとかもむっちゃ持ってるもんなぁ。
大西:30枚くらいは持ってます。めっちゃかさばるんで邪魔にはなりますけどね。まぁでもいい趣味やと思いますよ、モテるじゃないですか。
てらうち:でも嫁とかいたらふざけんなってなるんちゃう?
大西:フィギュアじゃなくてよかったです。フィギュアとかだとモテんやろうから、デニムに金使ってて良かったですよ。
大西さんは、てらうちさんに対してどうでしょうか?
大西:てらうちって正義感が強いというか、正しいと思ったことをその場でズバっと言うんすよ。それが間違ってるか正解かは置いといて。それが原因で、マイスイートメモリーズのトランスフォーム福田さんっていう先輩と大ゲンカしてました。
それは最近のことですか?
てらうち:最近すね。ケンカって同じレベルの人間同士じゃないと成立せえへんから、ケンカちゃうんすよ。
大西:福田さんという人間を知りながら、てらうちは本気で向かっていってしまったと。やっぱライバルやからな。
てらうち:いやライバルじゃない、俺が悪いです。
大西:僕はそこまでいかんけど、てらうちは結構ケンカが多くて、それでトラブったこともありますね。ケンカするのが悪いとは思わんけど、全部言っちゃうのはてらうちらしいなと思います。
てらうち:キーってなったら止まらなくて、あかんかったらあかんって言ってしまいます。
大西:逆に僕は特に何も言わず、もうあかんと思ったらスッと離れちゃうタイプです。後日、そういう話題が出たらさらっと伝えることもあるけど、てらうちに比べると冷たい人間なのかもしれません。
てらうち:2人してズバズバ言うタイプやと仕事になれへんと思うから、俺の我慢しないスタンスと大西さんでバランスが取れてるんかも。お互い無意識的に逆の部分を担当してるんかな。
大西:それはあるかもしらん。
てらうち:正直に生きていけたらええなと思います。
ある意味、てらうちさんはすごく優しいのかもしれないですね。大人になるとぶつかることが億劫になるというか、嫌なことがあっても相手に伝えず何となく流しちゃうことが多いと思うんです。それをわざわざ伝えられるてらうちさんはすごいです。
大西:確かに。そこまで言っちゃうんやみたいなこともあるけどな。
てらうち:大体言っても良くならないのはわかってるんすけどね。お笑いやってるヤツなんて、多少の痛さがあってナンボやから良いんやと思います。
最後に、全国ツアーを回るにあたっての意気込みを教えてください。
大西:それだけやってりゃなんかいいことあるやろって思います。さすがに7ヶ月続けてたら、ちょっとレベルアップしておもしろくなってんちゃうかな。次回からはゲストも呼ぶんで、ちょっと気が楽にはなりますし。
てらうち:せっかくなんで毎回楽しみたいです。毎月単独するんはしんどいけど、これを最後まで楽しめたら、芸人として器がデカくなれるんじゃないかって思います。
<黒帯のお気に入りスポット>
mecca(大阪市中央区西心斎橋)
結構前から通っているお店で、ここで古着のことも色々教えてもらいました。ちなみにビンテージのデニムを買ったのもこの店です。北堀江に店主の奥さんがやってるレディース専門の古着屋『mecca plus+』もあるので、ぜひそっちにも行ってみてください。(大西)
ハンバーガーのオクノ(大阪市浪速区元町)
おっくんっていう元芸人の後輩がやってるハンバーガーショップ。ハンバーガーが好きでよく食べに行くんですけど、ここのはほんまにウマいです。僕も月に1、2回は行ってますね。(てらうち)
<INFORMATION>
黒帯全国ツアー2024 『ネタサボってんじゃねえよ』
静岡/3月31日(日)
会場: 沼津ラクーンよしもと劇場
住所: 静岡県沼津市大手町3-4-14F
時間: 17:45開場/18:00開演/19:00終演
料金: 前売 3,000円 当日 3,500円
愛知/4月20日(土)
会場: 大須演芸場
住所: 愛知県名古屋市中区大須2-19-39
時間: 18:45開場/19:00開演/20:00終演
料金: 前売 3,000円 当日 3,500円
福岡/5月18日(土)
会場: よしもと福岡 ダイワファンドラップ劇場
住所: 福岡県福岡市中央区地行浜2-2-6 BOSS E・ZO FUKUOKA 7F
時間: 19:45開場/20:00開演/21:00終演
料金: 前売 3,000円 当日 3,500円
黒帯
共に大阪・東大阪市出身、高校の柔道部で出会い結成した同級生コンビ。松竹芸能の養成所を経て活動するも2014年に退所し、翌2015年にオーディションライブに合格して吉本興業に所属。大阪NSC 32期と同期扱い。昨年、なんばグランド花月とルミネtheよしもとで開催した単独ライブ「黒帯って何がおもろいの?」のチケットは即完売。2020年にスタートしたYouTube「黒帯会議」も好評。今年は初となる全国ツアーを実施するなど、ますます勢いに乗っている。
YouTube:@kuroobikaigi
大西 進
1988年生まれ、ボケ担当。さらさらの黒髪ヘアが特徴。これと決めたらとことん突き詰める性格で、現在は古着にハマっており、ビンテージのスウェットを30枚ほど所有する。36歳になった今でも、母親と一緒に実家暮らしを続けているそう。
てらうち
1987年生まれ、ツッコミ担当。スーツにピアスとシルバーアクセを身に付けて舞台に立っている。無類の女性好きだが、年始にYouTube内で「女性断ち」を公言していた。爬虫類が好きでトカゲの多田さんを飼っている。