捨て身になったらひと筋の光が見えた。初の全国ツアー「ネタサボってんじゃねぇよ」を開催中のお笑いコンビ・黒帯のインディペンデントな戦い方。
昨年、なんばグランド花月とルミネtheよしもとで実施した単独ライブ「黒帯って何がおもろいの?」のチケットは即完売。今年は、全国を回る単独ツアー「ネタサボってんじゃねぇよ」を開催するなど、今波に乗っているお笑いコンビ・黒帯。彼らは高校時代の同級生で、もともと所属していた松竹芸能を退所し、オーディションを経て吉本興業に入所した異例の経歴を持つ芸人です。思い通りにいかない苦しい時期を過ごしながらも、諦めずにネタを磨いてYouTubeに力を入れ、素直な人間性をさらけ出すことで、今では多くのファンに支持される存在に。ポップな芸人のイメージとは一線を画す、アウトローな雰囲気も魅力です。今回は、2月末に行われた大阪公演の数日後に時間を作ってもらい、その感想や今後の全国ツアーへの意気込み、YouTube「黒帯会議」などについてインタビューしました。己の道は己で切り拓くインディペンデントな彼らのスタイル、ぜひチェックしてください!
さらなるステップアップで初の全国ツアーに挑戦。よしもと漫才劇場での1発目は、大西さんがぶっ壊れるという珍事もありました(笑)
2月25日(日)に行われた大阪・よしもと漫才劇場での単独ライブ、本当にお疲れ様でした!私も行かせていただいたんですが、めちゃくちゃおもしろかったです。途中、大西さんが荒れてる時間もありましたね。
てらうち:確かに、大西さんぶっ壊れてたなぁ(笑)
大西:思った以上に時間が余りすぎてね。もうすぐ終演やと思ったら半分くらいの時間しか経ってなくて、どうにかネタ尺を伸ばさなあかんと思ったんです。
てらうち:1時間の公演やったんですけど、全部でネタを7本やる想定で、5本目の時にまだ35分くらいしか経ってなかったです。
大西:あと2本で25分やらなあかんってなって、これは僕が暴れるしかないと。
てらうち:一応予備のネタを1本用意してたんですけど、たぶん大西さんがやりたくなくて。
大西:もともとあったネタやったんで、それをやるくらいなら俺がぶっ壊れた方がええやろって思いました。
てらうち:とりあえず俺は疲れました。普通の単独ってネタの合間にVとかコーナーとか入れるけど、それを考えるのがすげぇ面倒くさくて、ネタだけなら準備も楽かなって思ったんです。けど実際にそれをやると本番がめっちゃしんどくて、ダルいわってなりました(笑)
大西:Vを作るのって結構パワーいるんすよ。企画と撮影して、誰かに編集お願いして……とか。そんな時間があるなら、ネタもう1本やる方がいいかなって思ったんです。僕がお客さんやったら、もっと生の漫才が観たいって思うやろうし。
てらうち:まぁ動画はYouTubeでやってますしね。
今回選んだ7本ネタは、お2人にとってどんなネタやったんですか?
てらうち:今年の1月、2月に『ZAZA POCKET’S』の新ネタライブをやったんですが、そこで作ったネタ4本と、昔からあったネタをアレンジしたネタ2本。途中で大西さんが壊れたネタは以前M-1でやっていて、お客さんに盛り上がってほしいなとサービス的なニュアンスで加えました。
大西:この前久しぶりにやったらめっちゃウケたんで、ちょっとした保険のつもりで入れました。
てらうち:最近のネタばっかりやったらウケへん可能性もあるからね。
公演中に印象的だったことはありますか?
てらうち:舞台に出て1発目に思ったのは「男多いな」でしたね。普段のライブは圧倒的に女性が多くて、男は全体の2割おるかおらんかくらいなんです。今回は男の子がいっぱい来てくれたおかげで、下ネタも笑ってもらえて嬉しかったです。やっぱ男の子の方が下ネタ好きやからね。女性ももちろんきてくれたら嬉しいですけど。
大西:劇場にはなかなか男の子が来ないんでね。やっぱり腰が重いというか。
黒帯さんはもともと男性のファンが多いんですか?
てらうち:女性ファンが多いはずやけど、声掛けられるのは男の子ばっかりよな。俺女の子むっちゃ好きやのに。
大西:もともと男の子は全然いなかったすね。女の子もいなかったけど。
てらうち:ここ数年、YouTubeを始めてから好きって言ってくれる人が増えました。YouTubeのラジオでも言ったけど、堺の銭湯に行った時に大学生の男の子4人に囲まれて、キンタマ丸出しで握手しましたよ。ありがたいっすね。
大西:俺は鏡の前で全裸になって髪乾かしてたら顔さしました。
てらうち:ほんとは女の子に声掛けてほしいっすけどね。
今回の全国ツアー開催の経緯を教えてもらえますか?
てらうち:最初に俺が「やりたい」って言いました。去年、NGKとルミネtheよしもとで単独ライブ「黒帯って何がおもろいの?」をやらせてもらって、次のステップとして今年は全国ツアーをしてみたいなと。
大西:去年NGKで単独をやってなかったら、全国ツアーはできてないと思います。
昨年のNGKでの単独ライブも満員やったんですよね。
てらうち:ほんとにありがたい。今回のツアーファイナルもNGKでやる予定なので楽しみです。
大阪公演を迎えるまでの裏話ってありますか?
てらうち:単独の前日に名古屋の大須演芸場で3ステあって、その後祇園花月で「RGが90分あるあるを歌い続け、デルマパンゲとツートライブと黒帯があるあるを考え続けてくれる会」っていうRGさん主宰のライブがあったんです。めっちゃおもろかったけどカロリー高めのライブやって、終わった後は2人ともヘトヘトでした。ほんまはそこからネタを考えたかったけど無理やって、明日に懸けるかという感じで解散しました。
大西:でも単独ライブの1週間前くらいまでは何もやらなかったかもしれないです。休みもあったけど集まるとかもなかったし。
てらうち:休日はしっかり休みたいじゃないですか。
大西:1週間前にやってもしゃあないっていうので自分を無理やり肯定しました。2ヶ月くらい前から新ネタライブやって準備してたから、もうええやろってなって。芸人って夜中までやるヤツとか多いんすけど、気持ちが凹んでくるんでマジで嫌なんです。ヘトヘトになって夜帰る時、真っ暗で悲しい気持ちになるんですよね。
てらうち:俺らは合間に集まってネタ考えたりも多いんで。この取材前も集まって2時間くらいネタ考えてました。その貯蓄があるから何とかなったっすね。これから毎月単独を続けていくわけやから、最初の方はおもろくなくても許してほしいです。
そこも併せて楽しんでくださいということですね。
てらうち:こっち側の勝手なワガママですけど。
大西:どのネタをやるかは3日前くらいに決めました。コントと違ってそれができるのが漫才のええとこですよね。やる直前で変えるとかも全然できるから。
そういえば黒帯さんのコントって見たことないです。
大西:めんどくさいっすねぇ。演技とかもできないですし。
てらうち:色々準備せんとダメでしょ。コント師は寄席の前にリハがあるんで早く行かなあかんのですよ。漫才やるヤツは出番の30分前に来たらええんで、そっちの方が渋いじゃないですか。
ちょっと関係ないけどいいですか?大西さんって去年は茶色のスーツを着てたけど、最近黒を着てることが多いですよね。2人とも黒のスーツで揃えているのは何か意図があるんですか?
てらうち:確かになぁ。それは俺も聞いてないな。
大西:やっぱネクタイするの大変じゃないですか。してもしなくてもどっちでもいいって言われたんで、それならTシャツの方がええかなって。
てらうち:そういうことなんや。まぁ似合ってりゃ何でもいいしな。
大西:どっちでもええんやったらネクタイ結ばん方が良くないっすか?
確かに手間もかかりますもんね。
大西:それだけですね。大した理由なくてすみません。
黒帯
共に大阪・東大阪市出身、高校の柔道部で出会い結成した同級生コンビ。松竹芸能の養成所を経て活動するも2014年に退所し、翌2015年にオーディションライブに合格して吉本興業に所属。大阪NSC 32期と同期扱い。昨年、なんばグランド花月とルミネtheよしもとで開催した単独ライブ「黒帯って何がおもろいの?」のチケットは即完売。2020年にスタートしたYouTube「黒帯会議」も好評。今年は初となる全国ツアーを実施するなど、ますます勢いに乗っている。
YouTube:@kuroobikaigi
大西 進
1988年生まれ、ボケ担当。さらさらの黒髪ヘアが特徴。これと決めたらとことん突き詰める性格で、現在は古着にハマっており、ビンテージのスウェットを30枚ほど所有する。36歳になった今でも、母親と一緒に実家暮らしを続けているそう。
てらうち
1987年生まれ、ツッコミ担当。スーツにピアスとシルバーアクセを身に付けて舞台に立っている。無類の女性好きだが、年始にYouTube内で「女性断ち」を公言していた。爬虫類が好きでトカゲの多田さんを飼っている。