すべての芸人にリスペクトを込めて笑いに向き合う。アマチュア史上初のR-1ファイナリスト・どくさいスイッチ企画の知られざる素性に迫る。
僕は自分のことを、“芸人”ではなく“お笑いが趣味の人”って言いたい。今後どうやって生きていくのか、今が人生のターニングポイントなのかもしれません。
社会人をしながらお笑いをやっていて、良かったことはありますか?
知り合いがめちゃくちゃ増えたことですね。たぶん一般企業に勤めていると、同じ会社の人としか話す機会がないと思うんですよ。お笑いを始めてから、芸人さんはもちろんライブに呼んでくれるバンドの人やライブハウスの人と知り合いになったりして。その繋がりで演劇のイベントに出たこととかもあって、色んな人と話して繋がることができたのは本当に良かったです。
確かに人の繋がりがたくさんできそうですね。もともと会社の方は、どくさいスイッチ企画さんがお笑いをやってることをご存知だったんですか?
特に言ってなかったけど、いつの間にかバレたみたいです。昨年の春くらいに「どくさいスイッチ企画っていう名前でお笑いをやってるらしいね」と上司に言われた時は、もう終わったなと思いましたけど、何か言われるワケでもないしと開き直ってやってます。ただ、さすがに今回の件は見逃せなかったみたいで、決勝前に上司に呼ばれて「会社名だけは本当に出さないでくれ」と釘を刺されました。僕自身、自分の言動で会社の人に迷惑かけるのが嫌だったので、もちろんそれに賛成しました。
週明けに出勤した時はどんな感じだったんですか?
別の部署の先輩と偶然駅で会って、「おい、完全にバレたんちゃうか」と言われました。上層部から何か言われるかなって思ったけど、まだ何も言われてないです。公然の事実みたいになってしまったので、これから先どんな風になるやらという感じです。
先日「働き方に悩んでいます」っていうツイートを拝見しました。
今の会社は基本的に兼業禁止で、副業を認めてないんです。今まではお笑いが趣味ってことでやってたんですが、それは本当に趣味の範囲に収まっているのかと。本業より気合い入ってるんじゃないのかと言われてしまって。じゃあ自分はどうやって働くべきなのか、少し考え始めました。「今からお笑い芸人1本でやっていきます」と宣言するのは背負っているものがありすぎて。どういう形がベストなのか模索している状態です。
難しい問題ですね。
何に力を入れて、何でお金を稼ぐのかというのをもう1度見つめ直さないとですね。かといってお笑いを辞める選択肢はありえないですし。なんせおもしろすぎますから。運よくR-1グランプリの決勝に出られたので、満足は満足なんですけど、今後どうやっていくかは未知数ですね。テレビの裏側とか大舞台の高揚感とか、やっぱりあれを知ってしまうと、もう1度行きたいと思ってしまいます。
他のインタビューで、「自分は兼業芸人ではない、お笑いが趣味の会社員です」とお話しているのを見かけました。
僕は自分のことを芸人っていうのが嫌で。あくまで個人の意見なんですが、僕の思い描く芸人さんは完全に笑いに舵を切っていて、100%でお笑いをやってる人やと思うんです。「なんか面白いことやってよ」って言われても、それに応えることができる人。そう考えると、僕が自分を表現する時に“兼業芸人”って言葉は使えないなと。“お笑いが趣味の会社員”って言ってる理由はそれですね。今のスタンスやと、僕は変なロケが来たら断るし、ドッキリとかにかけられたらマジで怒ると思います。それをやってしまう僕は、芸人とは言えないんじゃないかなと。これは大事なことなので、知っておいてほしいです。僕は芸人さんをすごくリスペクトしたうえで、自分のことを芸人と言わないようにしています。
今は色々悩んでいる時期かもしれませんが、どくさいスイッチ企画さんとして目指すステージはありますか?
これから先もずっとお笑いを続けて、年に1度は単独ライブをやっていきたいです。今の話の後であれですが、もし僕が事務所に入ってプロの芸人になったとしても、このままアマチュアで行くにしても、それは続けていきたいなと思っています。
近々単独ライブの予定はありますか?
大阪と東京でやろうと思ってるので、日程が決まればまたお知らせさせてください。単独で新ネタ8本下ろすと決めてるんで、今回もそんな感じでいくつもりです。
ぶっちゃけどこかの事務所からお誘いが来たりしましたか?
ありそうみたいな噂だけあるんですが、そういうお声掛けはないですね。もしそういったことがあれば、様子を伺いつつベストなやり方を選べたらと思います。
ここ数年で、関西のインディーズのライブシーンが一気に盛り上がっていますよね。
そうですね。学生さんもですが社会人も増えていて、色んな形でコンビを組んでる人がいますね。やっぱり『楽屋A』さんができたのが本当に大きいと思います。にぼしいわしさんが「THE W」に出たり、ヤングさんが「THE SECOND」でベスト32に残ったりして。ありがたいことに僕もその流れの中にいて、ネタを披露する場所があるって大きいんだなと心底思います。今後は、社会人になってもお笑いを続ける選択をする人が増えてきて、インディーズライブがどんどんアツくなっていくのかなって思います。ここから新しいムーブができて、どんどん新しい人が活躍できたらいいですね。
ちなみに、もう漫才がやりたいとは思わないですか?
僕、本当に協調性がないんで。ネタに対して色々言われたらめっちゃ腹が立つと思うんですよ。人に優しくなれるまでは漫才とかできないです。だけど、知り合いと組んでキングオブコントには出たことがありますよ。コントは台本があるから大丈夫なんですが、漫才は人が出るというか、自分が言いやすいように言葉尻をちょっと変えたりするじゃないですか。それが耐えられないです。
誰かと上手くやっていくのは大変ですもんね。最後に、どくさいスイッチ企画さんにとってお笑いとは?
生きがいですかね。たまに冷静になって考えるんですけど、この顔でおもしろいのって変なんですよ。おもしろくなりたい、おもしろく思われたいという欲があるのも変だと思います。この先どういう形になるかわからないですが、お笑いに関しては人生でずっと追っかけていきたいです。
<どくさいスイッチ企画さんのお気に入りスポット>
楽屋A(大阪市西区新町)
関西に小劇場はいっぱいあるけど、お笑い専用の劇場は『楽屋A』だけでしょうね。四ツ橋なので周りの治安が良いのもポイントです。僕も舞台に出演しているので、ぜひ『楽屋A』をお願いいたします!
どくさいスイッチ企画
1987年、神奈川県生まれ。11歳の時に父親の仕事の関係で神戸に住み始める。大学時代に落語家や1人コントをスタートし、就職後も仕事をしながら社会人落語やお笑いの活動を続ける。現在は、大阪・四ツ橋の『楽屋A』を中心に月3、4本の舞台をこなす。R-1グランプリ2024ではアマチュア史上初の決勝に進出し、同率4位の成績を収めた。
YouTube:@walleityoutei